第一章そのニ 『クロモミ探偵事務所①』
「ふふふ」
そんな言う笑い声でセンスは夢から覚めた。と言ってもまだ眠り足りないので、目は瞑ったままである。
「ふっふふふふあっはは」
――うるせぇ……あともう少しだけ静かにして欲しいっす……
「って! ここどこっすか!?」
「あっ起きた? ぐっモーニーン!」
飛び跳ねるように目を覚ますと見知らぬベッドの上で寝てたらしく、そばでは樅木が笑いながら座って本を読んでいた。
「……樅木さん? ここは一体」
「俺ん家だよ、そんなことより調子はどうだ?」
「……あれ? そういえば」
樅木からの問いに、身体になんの痛みもない事を疑問に思い、かけられていた布団をめくるとつなぎのファスナーを下ろして確認するが、やはり腹部のどこにもナイフで刺された痕は無い。
実際にはナイフで刺されてなどいないのであるから当たり前の事であるのだが、そんな事などつゆ知らず
「ナイフで刺された傷が消えてる?」
――もしかすると俺は感覚操作の他に新たに傷を癒す能力ももっていたんすか?
センスは体のどこにも傷が無いと確認を終えると全く違う仮説を立てた。
「いや、お前刺されてないから」
勘違いによる行動を観察するかのように見守っていた樅木はとうとう笑いを堪える事が出来なくなったためネタバラシを始める。
「へ?」
「だから、くくっ、お前刺さ、ブフッ刺される前に気絶してたんだよ、アッハハ」
樅木は遠慮など一切せずに、思い出し笑いにより、所々つっかえながら言う。
「マジスカ」
――恥っっっず!!
まるで玩具を与えられた赤ん坊のような笑みを前に羞恥によって赤ん坊よりも顔を赤らめる。
「……すごい量の本っすね」
センスは何か話題を変えようと部屋の中を見回した。ここは壁一面に本棚が設置されていて沢山の本で溢れていたがよく見ると全部漫画である。
「ん? あぁ、すごいだろ? あっ、そうだセンス、お前この中で知っている漫画というか読んだことのある漫画あるか?」
「え? えーと、うーん、名前だけは知っている漫画はちらほらありますけど読んだ記憶はないですね」
「そうか、記憶を取り戻すきっかけになると思ったんだが」
樅木は考え事をしているような仕草をしていたが、すぐにやめて
「ま、いいや、お前の記憶のことはおいおい、考えていくか、それより俺の仲間にお前のこと紹介してやるよ、ついてこい」
樅木はそういうと漫画を棚に戻し部屋から出て行こうとする。センスもベッドから降りると樅木に続いて部屋を後にする。




