番外の章 『ド派手なプレゼント』
「そういえば樅木さん、アレは?」
「あっそうだった、すっかり忘れてたわーーほれっセンス」
宴が盛り上がっている最中、カコの耳打ちによって何かを思い出した樅木は机の下から袋を取り出すとそれをセンスへと手渡す。
「これは?」
「開けてみてよ!」
「わしら三人からの入社祝いじゃ! 感謝するのじゃよ」
「えぇ!? 本当っすか!? ありがとうっす! 一体何すかね? ……これは」
パーティに続いて予想外のサプライズプレゼントに少々面食らったが、やはり嬉しくセンスはウキウキと袋から物を取り出す。
中から出てきたものは真新しいセンスのつなぎ同様派手な赤色の携帯電話だった。
「えぇ! マジっすか! めちゃくちゃ嬉しいっす! ありがとうっす!」
「感謝しろよな」
「なに其方が、偉そーにしとるんじゃ、金出したのはほとんどわしとカコじゃろーが」
「あーん? そのかわり長々とめんどくさい書類書いたり手続きしたのは全部俺だろうが、その手間賃として考えりゃお釣りもらえるレベルだっつーの」
「貴様は本当にカスじゃの!」
「ハハッ、別に俺はカスでいいぜ上等じゃねぇか、でも俺がカスって言うなら俺の下で働いているお前はカス以下のクソカスって事になるぜ?」
「ぐぬぬ、どこまでも口の減らんやつじゃの!」
「まぁまぁ、喧嘩はそこまでにするっす、本当にありがとっす! 大事に使わせてもらうっすね!」
ハクトは自分とカコがほとんど金を出したと言ったが、実際はカコが五割お金を出していて残りの五割の内ハクトが三割、樅木がニ割を出していたのだ。
それだと言うのにカコは特に不満そうな顔を見せるなんてことはなく、喜ぶセンスをみてニコニコとしている。
「初期設定とかめんどくさいのは全部済ましてあるからすぐにでも使えるよ、僕ら三人分の電話番号も登録してあるからさ何かあったらいつでも連絡してきてよ」
カコのその台詞を聞いて樅木は何かを思い出したようでハクトとの睨み合いを終わらせたかと思いきや、打って変わった満面の笑みを向けた。
「あっそうだ、カコ、センスの携帯にちゃんと番号が登録されているか確認するためにもちょっと鳴らしてやれよ」
「……一体何考えてるんです?」
どう見ても善意以外の何かを含んだ笑みを浮かべている樅木にカコは疑いの目を向ける。
「なっ、失礼な!? 俺はただ所長として親切心を出してやっただけなのにーーあ〜傷ついたなぁ!! 傷ついたぁ! 泣いちゃおっかな!?」
「あーもう! わかりましたよ、ごめんなさい、僕が悪かったですって」
「……本当に悪かったと思ってる?」
「はいはい、思ってます、思ってますよ、すいませんでした」
面倒くさそうにため息混じりの謝罪をしたカコヘ樅木は大袈裟に指を刺しまたも喚き始める。
「あー! 無視しやがったなテメェ! マジで泣くからな!! うえーん、うえーん!! カコくんがいじめるよぉ!」
「るせーのじゃ! ゆけ! ケルベロス!」
「ガウル」
最初は一緒になって面白がって笑っていたハクトも流石に樅木の言動を鬱陶しく感じ始め、ケルベロスに命令し樅木に噛み付かせた。
「んぎゃっ!? いっつぇ!!」
悶絶し足をブンブンと振るが、ケルベロスは一向に口を離そうとしない。
「それじゃあかけるね」
「よろしくっす」
ギャグアニメの様に愉快なワンシーンは完全にスルーしてカコは通話の表示をタップした。
途端、センスが手にしていた携帯から奇妙な音が鳴り始めた。
「な、なんじゃこの魔王の死に際の呻きみてーな、気味悪は……?」
なんとかケルベロスを離した樅木と掴み合っていたハクトは思わず目を丸めて音の出どころを見つめ、カコもぽかんと口を開けた。
「……え?」
センスだけはその音が何か気づいていた様だがハクトの言葉に何故か顔を赤める。
その様子を見て笑っている樅木にカコは口を尖らせた。
「もう! やっぱり意地悪してたじゃないですか! 変な嫌がらせはやめてあげて下さいよ!」
「なぁカコちゃんよぉ、この着メロ一体何だと思う?」
「知りませんよそんなこと! どうせどこか外国の珍しいカエルの鳴き声かなんかなんじゃないですか」
「ぶふっ!!」
「……え?」
カコの答えに樅木が吹き出すのと同時にセンスは赤い顔を伏せた。
着信音の正体はいつの日か樅木が隠れて録音していたセンスが風呂場で歌っていた鼻歌だった……。




