第二章その二 『歓迎会②』
「ただいまっす」
調査の報告を終えたセンスが事務所に帰り事務所の扉を開けると
「入社試験合格おめでとー!」
「めでとーなのじゃ!」
「ガウル!」
待機してたであろうカコとハクトがそう言って手に持っていたクラッカーを鳴らす。
思っても見なかったことに驚いていると奥の机に座る樅木は静かに笑って
「おめっと」
手を叩きながらそう言った。
その言葉を聞いてセンスはやっと驚きのあまり失っていた声を取り戻せた。
「あ、あぁ、ありがとうっす」
部屋に入ると[祝 センス入社試験合格おめでとう]と書かれたホワイトボードや、折り紙などで飾り付けられていて、中央に置いてある机にはケーキやら寿司やら豪華な料理が並んでいる。
「す、すげぇっすね」
センスがまさかのサプライズに感動していると
「ほれ、さっさとこれつけんか」
「今日はセンスくんが主役だからさここ座って」
ハクトは『本日の主役』と書かれたタスキを、カコは黄金に輝く紙の冠をそれぞれ俺のセンスの身につけ席に座らせるとジュースの入ったコップを手渡した。
「それではもう一度センスの入社を祝ってかんぱーい」
樅木の音頭に続いて二つのかんぱーいと言う声とかんぱーと言う声が事務所内に響く。
それからは盛大にパーティを行った。飲んだり食べたり、お腹が一杯になったらゲームをしたり
そんなこんなで盛り上がってきたパーティの最中
「――あっ、そういえば」
「ん、なんだセンス?」
「これで俺給料貰えるんすよね」
「あぁ、そのことか、ちゃんと用意してるって」
思い出して聞いたセンスに樅木は机の引き出しから茶色い封筒を取り出すと手渡す。
「ほれ」
「ありがとうっす」
センスは期待などせずに渡された封筒を開ける。
「って、ええっ!? こんなにっすか!?」
どうせ封筒の中身はクーポン券とか肩たたき券とかだろうと思っていたが、中から出てきたのは十八枚の一万円札だった。
「え、これなんかの間違えじゃないんすか? こんなにもらっていいんすか?」
「頑張ってもらったし、いいってことよーーそうだそうだ忘れないうちにこれも渡しとくぞ」
樅木はもう一つの封筒を渡してくる。
センスは何か嫌な事を感じつつもそれを開ける
「せ、請求書!? なんすかこれ、って十六万円!?」
もう一つの封筒に入ってあったものは請求書でそこには
部屋代三万円、飯代三万円、水道代三万円、光熱費二万円、調査依頼費五万円と書かれている。
「――いや、これいくらなんでもぼったくりっすよね!?部屋代三万円って俺寝てんのこのソファーすよ、飯代、水道、光熱費絶対全部三万も行って無いっすよ!」
「まぁ、これがうちの基本金額なんで」
「じゃっじゃあ、この調査依頼料っていうのは一体なんなんすか!?」
「ん、あぁ、それはお前の記憶を取り戻す依頼のことだ、まぁ〜そのくらいはかかる」
「それにしたって五万もかかるなんて……一体、どんなことしてこんなにかけたんっすか!?」
「とりあえずは記憶喪失物の漫画や、同人誌などを買い漁って読みまくった。結構名作が多かったし今度貸してやるよ」
「……漫画って……同人誌って……」
センスは目の前がクラッとなるような感覚に襲われ、実際に体がふらつく。
「そーゆーことなんで悪いね」
樅木はセンスの持っていた一万円札のうち十六枚を抜いて
「毎度」
と言うとそれをそそくさと財布へと戻す。
「あ、ちょっと、話はまだ」
そこまで言いかけて、ハクトとカコに肩をぽんっと叩かれる
「諦めるのじゃ」
「僕たちもおんなじ様なことされたんだ」
――ブラックどころじゃねぇっす!!!
「ま、やなことは忘れて楽しくするのじゃ」
「そうだぜ、さっ食え食え」
正直納得しきれてはいないが、センスは言われた通り嫌なことを忘れて今日は楽しむことにした。そしてその後深夜までパーティは続いた。




