第二章そのニ 『幸福の音楽会③』
その後演奏開始から約一時間ほどで
――音楽ってここまで素晴らしいと感じるれるんっすね、多分初めてな事っす。
とセンスはこう言う演奏会に来るのは初めてだと思うがとても感動していた。
「それでは今日の“幸福の音楽会”はこれでお終いになります。皆さんお気をつけてお帰りください」
最後にまた大きな拍手が起こるとセンスも他のみんなと一緒になって手を叩いた。
そして少年がステージから裏へ入って行くと、観客はゾロゾロと帰り始めた。その中に秋風家の夫婦がいることを確認するとセンスは二人の帰路も尾行し、途中で二人が別の所へ寄らず真っ直ぐ家に帰ったのを確認すると、来た道を走り体育館へと戻った。
少年の笛の音を聞いて受けた感動というか感想を直接本人に伝えたかったのだ。
体育館に戻ると先ほどの盛り上がりとは裏腹に暗く静まり返っていたが、ステージの横から光が漏れていたのでセンスがそこへ向かうと休憩室があり少年が休んでいた。
穏やかな表情で休んでいた少年だったがセンスが部屋に入ってきた事に気づくと驚き、身体を話させて言う。
「あ、あれ、ど、どうかされましたか?」
ステージ上の凛とした感じとは打って変わり弱気そうな感じだ。どこか初めて会った時のカコの雰囲気に似ている気がする。
「あ、いや、特に用事と言った用はないんすけど、今日の演奏最高だったっす!ただそれを伝えたかったっすよ」
「そ、そうですか、わざわざ、ありがとうございますね。僕は三雲琴音って言います。きみは?」
「俺っすか、センスって呼んでほしいっす」
「……センス? め、珍しい名前ですね」
「ま、あだ名みたいなもんっすよ」
「そ、そうなんだ、また次は三日後に開くから。よ、よかったらきてくださいね」
「もちろんっす」
「や、約束ですよ」
三雲は遠慮がちにそういって笑う。
そしてその後少しだけ三雲と話すととりあえず“幸福の音楽会”は怪しいものじゃないと判断して、
これで依頼と入社試験は合格だろう。給料いくらだろう、期待してもいいのだろうか?
なんてこと考えつつセンスは事務所へ向けて帰路を歩んだ。
センスが事務所へ帰る途中、そして事務所に帰宅してソファーの上に寝っ転がり始めた時にも三雲は一人誰もいない体育館に残って笛の練習をしていた。
「――ふぅっ、あぁ、もうこんな時間か、好きな事をしてると時間が経つのが早いなぁ」
演奏の練習や、新曲を考えている内に時計の日付は新しい一日が始まった事を教えてくれていた。少し前までならこんな時間まで家の外にいるなんて絶対にありえない事だったなと苦笑しながら帰り支度を始めた。
「おつかれさぁ〜ん」
笛を綺麗に拭いてケースに仕舞おうとすると背後からそんな風に声をかけられ、琴音は笑いながら振り返りつつ言葉を返す。
「やぁ、いつからそこへいたんです?」




