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ハイセンスワールド  作者: 桐生 ライア
幸福の音楽会編
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第二章その一 『入社試験④』


 「ふぁっ〜ーーよぉセンス首尾はどうだ?」


 「……樅木さんもしかして今まで寝てました?」


 聞こえてきた気の抜けたサイダーのようなやる気も覇気も感じられない樅木の声にセンスは思うままに突っ込むも


 「あったりめぇだろうが!」


 全く悪びれる事が無いどころか、逆になぜだが少しキレているような叫びだった。


 「何でちょっと怒ってるんすか……」


 「誰だって気持ちよく、それも良い夢を見ていたのに昼寝を起こされたら腹が立つだろうが!」


 「所長なら仕事中に昼寝なんてしないでくださいっすよ!」


 「昼寝は所長の特権だ!」


 「……はぁ」


 秋風を待たせているというのにこれ以上無駄な口論に時間を割くのは不当だと小さくため息をつき


 「俺今依頼中だから用件を言うっすよ」


 無理矢理話を逸らす。


 「あぁ、なんだよ?」


 若干言葉に不機嫌さを残しつつ樅木は聞き返す。


 「今日帰るの多分遅くなるっすから晩飯作れないっす」


 「あん? 依頼っつっても今日は依頼人と会って話を聞くだけじゃなかったのか?」


 「それが話を聞いていると今日も例の音楽会があるみたいなんで、ついてって確認する事になったんっすよ」


 「ほ〜ん、そりゃご苦労さん」


 「んじゃ、用件はそれだけっすから」


 「まぁ頑張れよ、俺は俺で良い夢(美少女ハーレム)に戻るとするからな」


 「いや、樅木さんも働いて下さいっすよ!」

 

 しれっとサボりに戻ろうとするも当然センスがスルーする事なくまたも突っ込んだのだが、樅木のレスポンスはまさかの


 「うんこ!!」


 という意味のわからないものであり、言い切ってから間髪入れる間も無くガチャリッと電話は一方的に切られた。


 「……小学生っすか」


 ツーツーとどこか寂しくなるような切断音を鳴らし既に黒くなった携帯の画面を見ながら呆れたように呟く。

 

 こんな男が所長を務めている事務所に入社してしまっても良いのだろうか? なんて後ろ向きな考えが頭をよぎったが、今更かとすぐに気を取り戻して秋風が待つ所へと向かう。


 「すいませんっす、携帯ありがとうございましたっす」


 「大丈夫でした? ちゃんと連絡つきました?」


 「えぇ、無事話がついたので予定通り今日ご両親の尾行を行なうっす」


 「良かった、じゃっよろしくお願いしますね」


 センスから携帯を受け取った秋風は嬉しそうな足取りで玄関前まで歩いて行くと振り返り


 「ではすいませんが十八時位まで待っていて下さいね」


 「……あっ」


 「待っていて」との言葉にそう言えば今が何時か携帯で確認し忘れていた事を思い出したが、時すでに遅し秋風はもう家の中へ入ってしまっていた。

 

 近くには時計などなく、今が何時か分からない以上この場から離れる事もできないし、秋風家のチャイムを鳴らし何時なのか教えてもらおうかとも考えたが、もしも両親が出てきて顔を覚えられたら尾行中になんらかのアクシデントが起こってしまうという恐れからそれはできず、結局センスは何もせずただポケ〜っと流れる時に身を任せた。

 そう、またも虚無の時間が訪れてしまったのだ。

 結局待つこと数十分ようやく秋風家の夫婦が出てきた。

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