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ハイセンスワールド  作者: 桐生 ライア
五感探偵編
33/84

第一章その七 『メラッとゴーストリベンジャー①』

 「クソガキが、めんどくせえことしやがって」


 深夜とある墓を荒らしている不届き者の姿があった。

 そう、この男こそ清太の新しい父親であり、清太から聞き出してから昼は目立つだろうと誰も来ない、近づこうともしないであろう深夜に墓場へ訪れ指輪を奪いに来ていたのだ。


 「ねぇな、どこだ? どこに隠しやがった? んな気味悪いとこさっさと帰りてえのによ」


 ならさっさと帰れ、と思わずつっこんでしまいそうになるセリフを男は吐く。

 

 「……にしても、カラスが五月蝿えな……うおっ!?」


 あまりの喧しさに男は我慢できずその鳴き声がする方を向いて驚きの声を漏らした。

 夜の闇をより強いものにするべくか空を幾多ものカラスが覆っていたのだ。

 その上遠くからは犬の遠吠えすら聞こえ、まさにホラー映画にありがちな場面であった。


 「な、なんじゃこりゃ……?」


 非現実的な現実に唖然としていると


 「……あなた佐賀さんですね」


 「あ!? ……え?」


 突然声が聴こえて男は瞬時に振り返るもそこには誰もいない。


 「こんな時間に墓参りですか?」


 またも背後から声が聞こえるが、やはり振り返っても誰もいない。

 

 「な、なんだてめぇは!?」


 本当にホラー映画のようなこの状況に若干声を震わせつつも叫ぶ。


 「……僕は幽霊です」


 「はぁ!? ふざけてねぇで姿見せやがれ!」


 「信じてないようですね、まぁ、別に信じなくて結構ですよ、どうせ信じようが信じまいが関係ありませんし」


 男は声を録音したスピーカーか何かを設置しそこから声を流しているのかと考えたが、声質の感じや、首筋に届く吐息にそれは違うとすぐに気づく。


 「なんなんだよマジで気持ち悪りぃな!」


 振り向く……やはり何もいない。


 「どんなに姿を見ようとしても無駄ですよ、幽霊(ぼく)にそんなものありませんから」


 「幽霊なんぞいるわけねーだろ」


 振り向くだけで無くぐるぐると回るように墓地内全体を見回すも、闇夜に包まれているということもあってか、どこにも影は無い。

 だが回転を止めれば


 「僕が幽霊だって理解できました?」


 再び背後からの声が聞こえ、とうとう男は小刻みに震え出したが、それを悟られまいと隠すように、卒塔婆を手に取り、あたかも刀のように前方、後方、左右、果ては空中まで全方位に向けて振り回し出した。


 「うがぁぁぁぁ!!」


 数分ほど半狂乱に叫び続けていた男は声が聞こえなくなったので一安心と卒塔婆を投げ捨てるように地面に落とす。


 「はっ、はは、参ったか幽霊擬きが」


 「……終わりましたか?」


 「ひっ!?」


 卒塔婆を振り続けていた時は聞こえなかった声に男はついに驚きを隠し得れず、恐る恐る振り向こうとするもそれはできなかった。

 首を背後から両手で押さえられたのだ。


 「動かないでくださいね?」


 恐怖に息も荒くなりながらも小さく頷くと、両手は首から肩、そして両方の二の腕にまで移動する。

 今なら振り解けるかもと男が身体を動かす素振りを見せると


 「熱っつぅ!?」


 「動かないでくださいって言いましたよね?」


 突然掴まれている箇所に熱を感じ、見れば着ているコートのそこが溶けて中の綿が見えている。


 「な、なんなんだよ……ほんとテメェはよぉ?」


 「だから幽霊だって何度も言っているでしょ、それに背後だけで無く、前もちゃんと見といたほうがいいですよ」


 「あ? ーーあぁ!? な、なんだよあれ!?」


 声に従い前方に視線を戻すと、闇一色の世界を照らすように幾多の火の玉がふよふよと不定期に浮かんでいた。

 一つ一つならばあたかも海月に似ているように見えて、可愛いやおしゃれと言った感想を持つ者も少なくないと思われるが、その数と、草木眠る深夜で墓地、カラスの声は五月蠅く、おまけに背後には幽霊を自称するものに腕を掴まれているこのシチュエーションに男の震えは強まる。


 「ほ、ほ、本当にお前ゆ、幽霊」


 「やっと信じましたか、まぁ僕の事はどうでもいいんですよ、貴方はただこれからの質問に答えればいいんです」


 「……質問ってなんだよ?」


 怯えているのか男は反抗する事なく素直に聞き返す。


 「貴方最近孤児院から子供を引き取りましたね?」


 「ああ、べつに俺は引き取るつもりなかったんだけどよ、兄貴の子供が孤児院にいるって知った妻がどうしても家族にしてあげたいっていうから、仕方なくもらってやったんだよ」


 もらってやった。

 まるで猫や犬に向けられて言うようなその台詞に腹立ちを覚えながらも続ける。


 「ここからが本題です。その子供を貴方は虐待をしていますよね?」


 「なんだよそれ、しらねーな……ーーぎゃっ!?」

 

 「あっ、言い忘れていましたが、質問に嘘で答えると当然罰がありますからね。今のは初回なので優しくしましたが……」


 背後から伸びる両手が二の腕から首に戻り、そこを窒息するまでとはいかないもののそこそこの力で握られる。

 両手が離れた二の腕を見るとまるで熱したアイロンを押し付けられたみたくそこは赤く変色していた。


 「今度嘘ついたらこのクソでゴミカスな喉、一瞬で焼き潰すからな?」


 背後から聞こえる声のトーンが変化し、それに伴い声の印象もガラリと変わった。

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