第一章その六 『クロモミアフターサービス④』
「ありがとうねカコくん」
夕暮れ時、瑠衣子からの何処にいるのかと言うメールに公園の住所を返信すると迎えに来て
「いえ、僕は別に何も」
「ううん、そんな事ない、だって清太があんなに楽しそうにしているの久しぶりに見たもの」
「そうですかそれなら良かった! ーーじゃあね清太くんバイバイ」
清太は別れが辛いのか暗い顔をしていたが、カコが明るく笑って手を振ると小さく振り返す。
「じゃあ、また改めてお礼に行かせてもらうね」
それだけ言い残して二人は背を向けて帰ってゆく。
「よし!」
その背中をみてカコは気合を入れるように両頬を叩くと目つきを変えて家路を急いだ。
その反対方向へ向かう道では清太と瑠衣子が手を繋いだ影を夕日で伸ばす。
「清太くん、今日は楽しかった?」
「……うん」
「そう、良かったね」
それ以上は聞かない。折角清太が楽しそうにしていたのに嫌な話を始める事は酷に思えたのだ。
なので少しずつ仲良くなっていき、またいずれ今回の事を聞こうと考えていた。
「さっ、お家着いたよーーただいま」
瑠衣子が玄関の扉を開けると、部屋から男が飛び出して来て
「おかえり清太、心配したんだぞ!!」
苦しくなってしまうほど力強く清太を抱きしめた。
「もう、あなた清太くん苦しそうでしょ」
「おぉ、ごめん、ごめん」
苦笑して瑠衣子が言えば、男はパッと離れた。
「じゃあ私は晩御飯の用意してくるね」
と瑠衣子が台所へ向かい部屋から居なくなった途端男は微笑みを和かな物から下衆なものへと変え
「おい、清太お前家出した後どこ行ってたんだ? 瑠衣子のやつ一晩中探してたんだぜ、まっどうでもいいけどよ、よく死なずに帰って来てくれたなぁ?」
そう言いながら清太の首根っこを力強く掴むと、ぐいっと無理矢理そばへ寄せ
「毎度毎度同じこと聞かせんなよ? 指輪はどこあんだよ?」
耳元で問う。
いつも通り答え無いと考えているためか、首根っこを掴んでいるのと反対の手は強く拳を握り、殴る体制であるが
「……お墓……お墓に隠したの」
泣きそうに俯いて潰れた虫のような微弱な声で呟いた清太の頭を男は歪な笑みを浮かべ、拳をほどくと髪が抜けてしまうんではないかと思うほど強く頭を撫で回し、台所へ向けて
「瑠衣子、俺今日の晩用事ができたから少し留守にするから」
台所から返事が聞こえるなり
「ありがとよ、清太くん」
それだけ言い残して上機嫌に鼻歌を歌いつつ部屋から出て行った。
「……お兄ちゃん」
ーー大丈夫だよね……?
清太は男の背中を不安げな顔で見つめながら近くに置いてあったフレアマンの人形を優しく抱きしめた。




