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ハイセンスワールド  作者: 桐生 ライア
五感探偵編
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第一章その六 『クロモミアフターサービス②』

 「この度は本当にありがとうございました」


 翌朝、行方不明の子供が見つかったと言う旨のメールを送るなり駆けつけてきた瑠衣子は清太を引き取ると一目散に病院へ連れて行き、昼を少しすぎた頃戻ってきて深々と頭を下げた。


 「いえ、お力になれて良かったです」


 「清太くん体調は大丈夫でした?」


 「えぇ、お医者さんに異常はないって診断してもらったわ」


 「そりゃよかったの」

 

 「ほら、清太くんもちゃんとお礼を言って」


 「あ、ありがとう」


 照れているのか瑠衣子の背後に隠れている清太は、促されるままお礼を言う。


 その愛らしい姿に微笑みながらどういたしましてと返す一同。

 和やかな空気に依頼が完璧に遂行された事、そして何よりも小さいながらも尊い命を救うことができた事を実感する。


 「しかしなぜ出てったりしたのじゃ?」


 そんな幸せいっぱいと言った雰囲気ををぶち壊すように毎度お馴染みハクトは空気を読まない発言を放つ。


 「今言う事っすか!?」


 「なんでじゃ!? 理由(りゆー)きかんとまた似たよーな事やるかもしれんじゃろ!」


 たしかにハクトの言い分も一理ある。

 いや、一理あるどころか、捜索が成功したとはいえ、家出した理由を判明させなければ根本的解決にはならないのではないのか。


 「清太くん、君はなぜ家出したのかな?」


 「清太くんどうしていなくなっちゃったりしたの?」


 ハクトの言葉に気付かされた樅木と瑠衣子が清太に聞くも、清太は俯いてしまって何も答えようとしない。


 「ーー樅木さん、瑠衣子さん、ぼくにまかしてくれませんか?」


 そばで様子を伺っていたカコが小さく手を挙げて提案した。


 「任せていいのか?」


 「今更何言ってんですか」


 いつものことじゃないですか、と樅木の言葉に笑って冗談で返し、清太の近くによると目線を合わせるように屈む。


 「清太くん、お兄ちゃん楽しい公園知っているんだけど一緒に遊びに行かない?」


 にこりと微笑みながら、優しく頭を撫でてカコはそう提案する。

 俯いてしまっていた清太もカコの表情を見るなり、遠慮がちに小さくこくりと頷いた。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 「とうちゃーく!」


 いつもならデパートの特売バーゲンを彷彿とさせるが如く幼き闘士達が我こそはと遊具を奪い合っている公園も時刻が昼過ぎなためか人一人おらず、いつもの雰囲気とは打って変わって、どこか寂れたような違和感を感じる。


 「わぁ、ブランコ乗り放題だ!」


 子供にはそんなもの感じることないのか、清太は誰も順番待ちをしていないブランコに目を輝かせ、急かすように握っているカコの手を引っ張る。


 「早く、早く」


 「ちょっとそんなに走ると転んじゃうよ」


 よほど嬉しいのだろう、そんなカコの注意など聞こえていないようで、一気にブランコの元へと駆け寄ると、嬉々として乗って漕ぎ出した。

 カコも隣のブランコに腰掛ける。


 「ブランコ好きなんだね」


 「うん、大好き!」


 ここへ歩きながら向かう道中はいくらカコが話しかけても俯いたまま素っ気ない返事しか返してこなかった清太だが、今は笑いながら答えた。


 「見て見て、こんなことも出来るよ!」


 しばらく座った状態で勢いをつけると立ちあがってブランコを漕ぐ。

 

 「上手い上手い! すごいよ清太くん!」


 カコに褒められてよほど嬉しくなったらしく、これも見て、と一本立ちになった。


 「あ、清太くん、それは危ない……」


 清太がカコの言葉に視線を向けたその時、ずるりと片足を滑らせその身を宙に放り出された。


 「清太くん!」

 

 瞬時にブランコから立ち上がり、清太が地面に衝突する前に滑り込むような形で抱き止める。

 

 「痛てて、大丈夫? 怪我はない? 危ないから、もうあんな乗り方しちゃダメだよ」


 「……うん、ごめんなさい」


 ブランコに乗っていた時とは一転してまたもしょんぼりしてしまった清太の頭をカコは優しく撫でる。


 「ちゃんと謝れて偉いよ!」


 恥ずかしそうに俯いていると、カコが手の甲を擦りむいてしまっているのに気がついた。


 「お手手痛い?」


 「ん? あぁ、こんな傷なんともないよ、こう見えてお兄ちゃん強いんだから!」


 「……ちょっと待って」


 傷付けまいと気丈に振る舞い笑うカコの声は耳に届いておらず、持って来ていたリュックサックを必死に漁って、中から見つけた絆創膏を怪我しているところにペタリと貼りつける。

 子供らしくヒーローがプリントしているものだった。


 「痛いの痛いのとんでいけ」


 あまりに可愛いその行動にカコはさっきよりも強くくしゃくしゃと頭を撫でた。


 「ありがとう! 絆創膏と清太くんのお陰で本当に痛いの消えちゃったよ! お礼にこれあげる!」


 カコは頭から撫でていた手を離すと、ポケットからお菓子を取り出して手渡す。


 「わぁ! フレアマンだ!」


 “ファイアーヒーロー・フレアマン”「悪いもんは全て燃やして大解決」がモットーのカコが幼い時から放送されている子供達に大人気のテレビ番組であり、清太を発見した時に近くに落ちていたおもちゃもそれで、貼ってくれた絆創膏にも派手にプリントされている。


 「フレアマン好きなんでしょ? 僕も一緒! 僕はバーニング男爵が好きなんだけど清太くんは誰が好……清太くん?」


 カコが話していると清太はお菓子をぎゅっと抱きしめボロボロと大粒の涙を目から溢れさせた。

 

 「どうしたの? もしかしてさっきどこかぶつけちゃった?」

 

 カコの質問にゆっくり首を横に振る。


 「これね……パパとママも買ってくれてたの……」


 それだけ聞いて清太が父と母の死を思い出してしまった事に気づき、カコは何も言わずに静かに泣く清太の背中を優しくさする事しか出来なかった。

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