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ハイセンスワールド  作者: 桐生 ライア
五感探偵編
23/84

第一章その五 『ある日森のなか①』

「着いたっすね」


 “微笑みの里”、カコが幼少期を過ごしたと言うその場所にたどり着いた二人は楽しげな声を耳にした。

 園内を覗いてみると二十人弱の子供達が園名通り溢れんばかりの微笑みをみせて遊んでいた。

 思わず微笑みが移ったセンスは園内の様子に少しの間見入ってしまう。ブランコで遊ぶ子達、何も無いところで鬼ごっこをしている子達、まだ歩けない赤ちゃんを代わりばんこにおぶっている子達、

 初めはただ何も考えずただ楽しんでいるだけかと思いきや、ブランコの順番をちゃんと守り、鬼ごっこで転んでしまった子の元へ心配げに駆け寄る、赤ちゃんが泣いたらみんなで力を合わせてオムツを変える。

 と、こんな小さく、無邪気なだけに見える子供達の中にも彼らなりの秩序やルール曳いては世界が存在する事に気づきセンスは妙に感心してしまった。

 

 「ーーいい所っすね」


 「でしょ」


 しばしほのぼのとした気持ちになりながら眺めていると


 「あっ、カコ兄ちゃんだ!!」


 一人の児童がそう声を上げて走りだした。するとそれが伝染したのか直ぐに、本当だー! わーい! と一人一人走る児童は増えていき、最終的にほぼ全ての児童が二人の元へ寄ってきた。


 「カコ兄ちゃん、久しぶり!」

 

 「うん、久しぶり!」


 「遊ぼ! 遊ぼ!」


 「ごめんね、今日はお仕事だから遊べないんだ」


 「僕ね、自転車乗れる様になったんだよー!」


 「へぇ! すごいじゃん」


 さながら久しぶりに大好きな飼い主に会った犬かの様に子供達は皆興奮してカコに思い思い言葉を飛ばし、カコもそれに答えていく。


 「すごい人気っすね」


 「ははっ、可愛いでしょ」


 「ねーねー、この人だーれ?」


 児童のうち一人の少女がカコ裾をくいっと引っ張りながらセンスを指差し聞いた。


 「このお兄ちゃんはね、センスくんだよーー僕の……友達なんだ」


 「よろしくっす」


 「センス? 変な名前ー!」


 大声で笑う少女、笑いはすぐに伝染して行きその周辺にいた児童達はみんな笑い出した。


 「……ははっ」


 ーー同感っす……


 力なく笑いながらそんな子供達にひらひらと手を振っていると


 「なんの騒ぎです?」


 園の中から老眼鏡をかけた初老の女性が外の騒ぎを聞きつけて、様子を見に出てきた。

 穏やかそうで、優しそうな女性だった。その上どこか上品さも兼ね備えている様に見える。その女性の事をセンスは全く知らないがそれでも、この人に育てられたからカコは優しく育ったんだな、なんて思う。


 「園長先生、お久しぶりです」


 「あら、カコくん来てくれてたのね、ほんと久しぶりねぇ、お仕事は順調なの?ーーそちらは?」


 やはりと言うか、思い通りの優しく柔らかい雰囲気の話し方だった。


 「はじめまして、カコの同僚で友達のセンスです」


 この女性もセンスという名に少し首を傾げたものの


 「珍しい名前ねぇ」


 と口元に手を当て、小さく笑う。その一連の所作はやはり上品である。


 「カコくんがお友達連れて来てくれるなんて嬉しいわ、ささっ、こんな所で立ち話もなんですから中に入ってちょうだい、最近のお話を聞かせていただきたいわ」


 「すいません先生、今日は仕事できたんです」


 「どういうことかしら?」


 「本目さんからお子さんの荷物を取ってくるように依頼されたんです」


 「あぁ、清太くんの荷物ね、わざわざありがとうねーーそれにしても本目さんが依頼に?」


 「偶然ですよ、たまたま」


 「……面白い事もあるものね」


 園長先生は少し何か考えていた様だったが、特に何も言わずに笑顔に戻る。


 「本目さんの事覚えてる?」


 「そりゃもちろん」


 「そうよね、カコくん本目さんの事好きだったんだからね?」


 「えぇっ、ちょっと! な、なんで!?」


 「ふふふっ、やっぱり分かりわすいわね貴方は、昔と変わらないわ」


 昔を思い返し始めそうだった園長先生は、カコ達が依頼で来ている事を思い出すと


 「あっ、ごめんなさいね、お仕事中だったわねぇ、ちょっと待っていてね、今清太くんの荷物取ってくるから」


 園の中へ入り、二、三分ほどして、段ボールに入った服などを持ってきた。


 「じゃあ、これよろしくね」


 「あ、これ全部洗濯してくれてんすか?」


 くんっ、と段ボールの中のものを一嗅ぎしたセンスはそんな事を聞いた。


 「そうだけど、何か不味かったかしら?」


 「あ、いえ、なんでもないっす」


 とりあえずそう返して見るが、なんでもない事は無い。匂いが洗剤や柔軟剤によりほぼ消えかかっている。


 「それじゃあ、よろしくね」

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