第一章その四 『カコナビゲータ⑥』
所長のくせしてろくに働きもせず、仕事中にアニメや漫画を見ては惰眠を貪る樅木と、思った事をすぐ口に出そうとし母音を使わないという意味不明な事をしているハクト……
後者はお使いを手伝ってくれたり(鍋の時のように鳥に任せてだが)コロッケを奢ってくれたし、それに思った事をすぐ口に出すのも悪いことだけではなく人を褒める時(例えば作った料理が美味しかったり、依頼などで活躍した時)などにはちゃんと褒めてくれるなど優しい一面を時折見せる。なのでまだ許容範囲なのだが、前者は完全に有罪である。
まず先も言ったが、ろくに働かない。客が依頼を持って訪ねてきた時はちゃんと対応するが、そこから先はほぼ社員に丸投げすることが多く、一人になると大抵漫画かアニメを見てサボっている。
そのくせ毎晩のように大酒を飲み、依頼中珍しく外に行っているなと思いきや半日以上ゲームセンターに入り浸り、欲しいアニメグッズがあれば惜しみなく数万単位で金を消費する。
まさに現代日本の『飲む・打つ・買う』を具現化したような男だとセンスは樅木の事を評価していた。
「ーーはぁっ」
「どうしたのセンスくん?」
「カコは優しくて良いやつだなって再認識しただけっす」
「ほんとにどうしたのさ急に!?」
「いや、よくあの二人の相手を今まで一人でこなしてきたなって思っただけっす」
それだけでカコはセンスの言葉の意図を理解したらしい
「あぁ、そう言うこと、たしかに二人とも癖が強いもんね」
「癖が強いなんてもんじゃないっすよ、存在そのものが癖みたいな二人じゃないっすか」
「ハハッ、なんだいそれ」
「笑い事じゃないっすよ、俺が来る前は家事とかは全部カコが一人でしてたんっすか?」
「ん? いや、センスくんが来る前は僕とハクトちゃんで家事を分担してたんだ」
「へぇ、ハクトも家事をしてたんすか……ってそれ今みたいに鳥達に頼んで買い物とかじゃ無いっすよね?」
「いやいや、ちゃんと料理とか作ってくれてたよ」
「ハクトが料理っすか、想像できないっす」
「結構美味しい料理だったよ、まぁ、あいうえおのどれかが名前に入ってる料理は作ってくれなかったけど」
「あのこだわり料理にも反映されるんっすかーーそれにしてもハクトの作った料理興味あるっすね」
「今度頼んでみれば? きっと作ってくれるよ、なんだかんだで根は優しい子だからね」
「そっすかね? んじゃ今度頼んでみるっかね」
「そうしてみなよ」
「それにしてもハクトが料理するなんてーーあっ、じゃあ樅木さんは? 樅木さんも料理したりしてたんっすか?」
「……あ〜樅木さんねぇ、樅木さんは…………」
センスからの質問に答える前にカコは明らかに目を泳がせた。
「え? なんすかその反応?」
「……樅木さんは一切家事をしてなかったかな」
「えぇ!? あの人俺が入る前からずっとああだったんすか!?」
「いや〜でも樅木さんも良いひ……悪い人じゃないよ、きっと、多分、うん……」
「ハクトと比べだいぶ返答が曖昧になったっすね」
「まっま、良い人かどうかはこの際置いておいてさ、僕は樅木さんには感謝しているんだ」
「感謝……っすか?」
「うん、そう感謝」
そう頷いて、一瞬迷ったのちカコはぽつりと続けた。




