第一章その四 『カコナビゲータ⑤』
「それにしても、カコが孤児院育ちだったなんて知らなかったっす」
「ご、ごめんね、別に隠していたわけじゃなかったんだけど」
「いや、別にいいんすけど」
ーーそういえばカコと二人きりになるのは初めてっすね
センスはクロモミ探偵事務所に来てからの数日で自分はよく話題を振る、というよりかはふられた話題に返す、聞き手側であった事を思い出した。
思い出した、と言っても失った記憶がちゃんと戻った訳ではない為断定はできないが、とにかく今のセンスは聞き手側であり、共に過ごした数日でカコも自分と同じタイプだと薄々理解していた。
そのため
ーー何話せば間が持つっすかね?
なんて無駄な心配をし始める。
今まで樅木やハクトとは何度か行動を共にしたことがあったが、二人とも自分の好きなように話すタイプだった。
特に樅木はほっておくと延々と好きなアニメやマンガを熱く語ってくるのだ。
なので今までは会話の内容云々は間に困った事は一度も無かった。
だからこそ何を話せばいいのか悩む。
「ーーどう? クロモミ探偵事務所での仕事はもう慣れた?」
センスのそんな悩みを知ってか知らずか、気を遣ってから遣わずか、カコから質問してきた。
「え? あ、ごめんっす考え事してて聞いてなかった、何っすか?」
「いや、もうクロモミ探偵事務所には慣れたかなぁ〜って」
「あぁ、そういう話っすか、それならもうだいぶ慣れてきたっすから心配無用っす」
「そう? それなら良かったよ」
「みんなが親切にしてくれるおかげ……すよ?」
ーーあれ? 本当にそうっすかね……?
言い終えて、正確には言い終える少し前に自分自身の台詞に疑問を抱く。
親切、確かに記憶をなくしている素性も得体も知れないセンスに衣食住を提供してくれている。
と、ここまで聞けば親切に思えるが、それらは全て、仕事を手伝わせる、家事を押し付けるなどと言った下心からくる物であり、それを本当に親切と聞かれても大半の人はうーんと捻るだろう。いや、捻るどころか捻じ切ってしまう人だっているかもしれない。
ーーあれ……? いや、ちょっと待つっすよ……
センスの疑問は加速を止めず、次はメンバーについて考えていくことにする
まずカコは親切と言って間違いないだろう。入社したばかりのセンスをいつも気遣ってくれるし、センスが押し付けられている家事や雑用も実はほとんどカコに手伝ってもらっている。この数日間でカコはものすごく優しく、心の温かい人物という事をセンスは理解していた。
問題なのは残りの二人である……




