第一章その四 『カコナビゲータ③』
「それは……もし警察に捜索を頼めば虐待を疑われるかもしれないじゃないですか、それに仲良くすると言うのが第一条件で引き取ったんです。それが引き取って数日で家出したなんて話が孤児院の方までいったらもう一緒に暮らせなくなるかもしれないじゃないですか」
「なるほど……わかりました。それではすぐに捜索を始めさせていただきます。ただし、ひとつだけ約束させてください。もし今日、明日に見つける事ができなかった場合は警察に届けさせてもらいますからね」
「……わかりました」
「あっそうだ!一つお聞きしたいんですけど、お子さん……清太くんの匂いが染み付いているものってありますか?」
「匂い……ですか?そんな物どうするんですか?」
「それは企業秘密ってやつなんで」
どうやら樅木は本気で昨日言っていたセンスを警察犬代わりにして匂いで迷子の追跡をするという作戦を行おうとしているらしい。
「そうですか………しかし、困りましたね……あの子の匂いが染み込んでいるものなんて特に無いですね……」
「服とかでいいんですけど」
「それが、あの子の服は今着ているものが全てなんで手元にないんです……今日か明日に孤児院で着ていた服を受け取りに行こうとしていたんですよ」
「それは困りましたね」
「――孤児院って“微笑みの里”ですか?」
「え、えぇ……って、あれ?貴方カコくん?」
カコはコーヒーを持ってきて話に混ざり、女性に質問をすると、カコの事を知っているような様子を見せ、名前を聞く。
「そうですけど……えっと……すいませんが、ど、どちら………あ、あぁ!まさか、本目さん?本目瑠衣子さん!?」
カコは少し女性の顔を見るとそう言った。どうやらこの女性の事を知っているらしい。
「やっぱりカコくんだ! 久しぶり、二年ぶりくらいかしら? ーーちなみに今は結婚して佐賀瑠衣子です」
「……そう……だったんですか……それはおめでとうございます!」
カコは俯いたかと思うと、すぐに顔を上げてとびきりの笑顔で言う。
「ありがとう!」
「――なんだ? カコ、この方と知り合いなのか?」
「えぇ、瑠衣子さんは僕が“微笑みの里”にいた時に何度もボランティアに来てくれていたんですよ」
「へぇ、そうだったのか」
今明かされるカコの衝撃的な過去
そう、カコは孤児院出身だったのだ。センスは驚くが他の二人はどうやら知っていたらしい。
その後、懐かしみながらも、依頼内容の話を終えると本目という女性は頭を深々と下げて帰った。