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ハイセンスワールド  作者: 桐生 ライア
五感探偵編
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第一章その三 『にゃんこ大捜索⑥』


 「本当に見つからないっすね」


 「このままじゃー任務は失敗(しっぱー)かもの〜」


 猫の捜索から二日経過したが、まだ依頼主の猫を見つけることはできていない。


 「そうなったら、小須木さん、悲しんじゃうね」


 「お、なんだ?カコ、お前一度会っただけであの子のこと好きになっちまったのか?」


 「な、ちがっ、そんなんじゃないですよ」


 「ははっ、何赤くなってんだよ、ん、メールだ、お、喜べカコ、愛しの小須木さんからだぞ」


 「だ、だからそんなんじゃないですって」


 真っ赤になって否定するカコを無視して、樅木は送られてきたメールを確認する。


 「メールの内容なんだったんすか?」


 「あぁ、なんか猫の写真が、実家で見つかったらしくてな、送信してきたみたいだ」

 

 樅木はみんなに携帯の画面を見せるが、やはり写真の猫と今まで見た猫との見分けがつかない。

 

 「にゃ!?」


 ハクトただ一人を除いて……


 ハクトは携帯の写真を見るなり驚いた様子を見せたのだ。明らかに何を知っていそうなその反応にセンスたちが一斉にハクトの方を向くと


 「にゃ、にゃんでもね〜にゃ〜」


 そう言って両手を使い、誤魔化すように猫のモノマネをした。


 「にゃんでもにゃい訳あるか、吐け、なんか知ってんのか?」


 「………じ、実はの」


 観念したのか、ハクトはポツリポツリと話し始めた。


 「――はぁ!? この猫から好きな猫ができたって恋愛相談を受けただぁ!?」


 「そーじゃったんじゃ、忘れとったし、まさかこやつじゃったとは、()ってもなかったわ」


 「で、その好きな相手ってのはどこの猫かわからないんっすか?」


 「ぬーん、誰じゃったかの?」


 「がんばれハクトちゃん!」

 

 「死ぬ気で思い出せよ、むしろ死んでもいいから思い出せ!」


 「なんつー応援っすか」


 うるさい外野は無視して目を瞑って腕を組みうんうんと難しい顔で唸るハクト

 

 「そーじゃー! ()っだ出したのじゃ!」


 「本当っすか! それで一体どこの猫なんすか?


 「昨日(きのー)そなたも見たじゃろ、ほれ、コロッケを盗んだ」


 「えーと、確か大丸だったすかね」


 「そのとーりじゃ」


 「で、その大丸とやらが好きって聞いてお前はなんて答えたんだよ!?」


 「確か、ぜってー、大丈夫(でーじょーぶ)、やつもそなたが好きじゃって()ってやったのじゃ」


 「それで、猫はなんて返してきたんだよ?」


 「……告白してくるにゃって()ってたよーな」


 「それ猫が出て行ったのほぼお前のせいじゃねーか十中八九その大丸って猫のとこに行ってんだろうが!! ーーいくぞ、まずはその大丸とやらをとっ捕まえる、そして、猫の居場所をハクトに質問させるぞ」


 「……でもどうやって捕まえるんすか?」


 「……俺にいい考えがある」


 樅木は何かを思いついているらしく、ニヤリと笑う。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


  それから一時間後


 「今時本当にこんなんで捕まるんすか?」 


 「ああ、漫画なら大抵こーやって捕まえられる」


 樅木はスーパーで魚を買うと籠を一本の棒で立てて、その下に魚を置いた。もし大丸が魚を取りに来たら離れたところで棒にくくりつけた紐を引っ張り籠を落とすというなんとも古風な罠を作った。


 「樅木さん、前から思ってましたけど漫画と現実は違うんっすよ」


 「バータレイ、漫画こそ我が人生の教科書(ガイドブック)なり」


 「何言ってるんすか」


 そして待つこと数十分


 「ーーおっ来たぞ、なっ言ったろ?」


 本当に樅木の思惑通りセンスのコロッケを盗んだ雄猫、大丸が現れ樅木はドヤ顔を見せ、大丸が魚を取ろうとするその時


 「今だ!!」


 樅木は紐を引っ張ったが、大丸は普通に籠をかわすと魚を咥えたままどこかへと走り去って行った。


 「くそ、第一作戦は失敗か、よし、センス第二作戦だ」


 「ういっす」


 センスは作戦前いやと言うほど魚の匂いを嗅がされていた。

 それはセンスの持つ能力を使用して、五感のうち嗅覚を強化しその匂いを追跡するためであった。


 「いくっすよ」


 センスは目を閉じて、鼻に感覚を集中させると匂いを頼りにもう見えなくなった大丸を捜索する。しばらく走り


 「すぐそこにいるっす」


 森林公園の茂みの奥で匂いは止まっている。樅木はセンスが指さした先の茂みをかき分けた。


 「これは………」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 「きゃー、かわいい!!」


 依頼主の猫ミルクは4匹の子猫を産んでいた。ミルクと話したハクト曰くやはり大丸との子らしい。


 「これで、依頼は完了になります」


 「えぇ、ありがとう、本当にありがとうございました、約束のお金はすぐ支払います」


 「ありがとうございます。それでその子猫たちはどうします?よろしければ里親になっていただける方をお探ししますけど?」


 「いえ、この子達はみんな私が責任を持って飼います」


 「そうですか、それではまた何か困りごとがありましたらぜひクロモミ探偵事務所まで」


 「えぇ、また何かあったらよろしくお願いしますね」


 小須木はそう言うと、樅木とは反対側を向き言う。


 「貴方も一緒に来る?」


 そこには大丸がいた。大丸はじっとミルクと子猫たちを見ると、「にゃー」と小さく鳴くとくるりと背を向け去って行った。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 「いやー依頼完了後に食べるコロッケは美味いな」


 帰り道ハクトの提案で、この間行った肉屋に行ったセンス達は寒空の下白い息を吐きながら熱々のコロッケを買って食べていた。


 「ふふ、あの大丸くんは出産で、体力を使っていたミルクちゃんのために色々食べ物を盗んでいたんだね、これからは彼の被害もなくなるかな」


 「もー盗みはすんなよと言ゆってみたが、どーじゃろな」


 「それにしても」


 「ん、どうしたセンス?」


 「今回樅木さんってなにも……ってあちぃぃぃ」


 ――なんでいきなり熱々のコロッケが口の中に……?


 その疑問はすぐに解けた。なぜならこの手口はつい最近体験していたから。


 「……樅木さん、あんた今時間止めたっすね!?」


 「ハハッ何意味不明なこと言っているんだい」


 肩をすくめて両掌を上に向ける樅木、完全に人を舐め腐り馬鹿にした態度だった。


 「あんた以外にこんな事できる人も、する人もいないっすよ!」


 「まーまー、それよりこれから飯だ、打ち上げいくぞー」


 「さんせーじゃ」


 「ちょっと話はまだ」


 「どーでも良しな話はしめーじゃ、んなことより飯じゃ、飯!!」


 「ったく、なんつー人っすか」


 「ふふ、センスくんもそのうち慣れるっすよ」


 「そうっすかねぇ?」


 大丈夫、大丈夫と項垂れるセンスの肩をカコが優しく叩きながらそう言った。


 「早く来ないと置いてくぞ」


 「わかりやしたっす」


 センスは前を歩くみんなを走って追いかけてゆく。

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