第一章その三 『にゃんこ大捜索④』
「なかなか、見つからんのー」
「そうっすねぇ」
猫探しを始めて三十分ほど経つが、目的のミルクちゃんどころか他の野良猫もまだ一匹も見つけれていない。
「わし、もー疲れたのじゃ」
「まだ三十分くらいしか歩いてないっすよ、先輩の活躍を見せてくれるんじゃなかったんすか?」
「先輩でも疲れるものは疲れるのじゃーーそして腹も減ったのじゃ」
うなだれながら面倒くさそうに歩き続けていたハクトだったが、一瞬感じた匂いに周りを見渡し
「ーーそこじゃ!」
とどこかへ向かって急に走り出した。
「なんか見つかったっんすか?」
なんだろうと後をついていくと、ハクトは肉屋さんでコロッケを買っていた。
「……え? 何やってるっすか?」
「ここのコロッケは美味なんじゃ、ほれ、そなたのぶんじゃ食うが良し」
ハクトは肉屋の店主から両手に受け取ったコロッケのうち一つをセンスにに渡す。
「お、ありがとうっす」
何してんだこいつと思いつつも一応お礼を言って受け取った後、それを口にしようとしたその瞬間
「うわっ!?」
突然大きな図体をした猫が現れ、センスの手にあったコロッケを奪うと、一瞥する事なく去って行った。
「な、なんすか?」
センスは追いかけることもせず……というよりはあまりの驚きに何が起こったのかしばらく分からず呆然として、去ってゆく猫の後ろ姿をただ見つめていた。
「ガウル、ガウ!」
何もできずに立ち尽くすセンスと違ってケルベロスは猫を追いかける。
「ケルベロス戻ってくるのじゃ、って、やっぱ速じゃなケルベロスは、まっ、ちゃんと帰ってくるじゃろ」
「ーー災難だったね、お兄ちゃん」
店の中で一部始終を見ていたおばちゃんが話しかけてきた。
「あいつは大丸ってゆう昔からここら辺に住み着いている野良猫でね、以前はまだおとなしかったんだが何故か最近になってよくああやって売り物や、人が食べているものをうばっていくのよ」
困ったもんさとおばちゃんは苦笑いしながら店の奥へと入っていった。
「そうなんすか」
奥へ入っていったおばちゃんの背中を見つつ呟くと、ふと腕をハクトにつつかれる。
「ん、なんすか?」
「ほれ、次は気をつけるのじゃよ」
そういうとハクトは持っていたコロッケを半分にして手渡してきた。
「ありがとっす」
再度お礼を言って周りに注意をしてコロッケをかじる。寒い日に外で食べるコロッケは格別だった。
「うまいっすね」
「そーじゃろ、そーじゃろ」
ハクトは嬉しそうに微笑む。きっと先輩らしい事がしたかったのだろう。
コロッケを食べ終えた後に肉屋のおばさんにここらに猫が多くいる場所を知らないか話を聞いたが知らないとのことだったので二人は猫の捜索を再開する。
「なあ」
「ん、なんじゃ?」
捜索を再開してしばらくたってから話すことが無くなってしまったので話さないくらいならと聞いてみたかった事を質問する事にした。