第一章その三 『にゃんこ大捜索①』
ジリリリリッ、と昔ながらの音を奏で朝を告げる目覚まし時計のボタンをまだどこか夢の中にいるような感覚のままゆっくりと押す。
「ふぁーもう朝っすか」
現在午前七時半、まだ完全に夢から覚めていないセンスは大きく伸びをしてソファーから降りると気合を入れるため頬を叩く。
初日はソファーではなかなか眠れなかった彼も今は慣れて快眠が可能になった。
「今日の朝飯はなんにっすかな」
なんて呟きながら下着姿から樅木に貰ったつなぎに着替えると眠たい目を擦りつつ台所に向かう。
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「なんじゃ、今日も朝食はパンか、わし、朝は、ご飯派じゃと言ったじゃろ」
ここに泊まるようになってから三日が経ち、樅木の言葉通り家事のほとんどをセンスがやっている。
カコもなんやかんやと手伝ってくれるが、ハクトと樅木は基本的に何もしない。
何もしないくせに朝食のメニューを見るなり口を尖らせて文句をいうハクト
ちなみに今日の朝飯はトーストに、目玉焼き、ウインナーだ。
「嫌なら食べなくていいっす」
「食べんとは言っとらんじゃろ!」
目の前に置いた皿を取り上げようとすると慌てて皿の上のトーストを掴み大きくかぶりつき、ガツガツとすごい勢いで食べ進めた。
「冗談っす、そんな慌てて食べたら喉に詰まらせるっすよ」
その言葉通りハクトはトーストを喉に詰まらせたらしく、苦しそうに胸を叩き出した。あまりにも綺麗すぎた振りの回収にセンスがクスリと笑うと牛乳を入れたコップを差し出す。
「……死ぬかと思ったわ」
センスから奪うように受け取った牛乳を滝のような勢いで飲み干したハクトは、少ししてから力なさげにつぶやいだ。
「文句言うからバチが当たったんだよハクトちゃん――ごめんねセンスくん、僕もいただくね」
「あぁ、どうぞっす」
「ふぁぁ〜おはよう諸君」
少し遅れて、みんなが朝食をほぼ食べ終え、コーヒーの準備をしていると、ボサボサ頭の樅木が眠そうな目を擦りつつ入ってきた。
「おはよっす」
「はよーなのじゃ」
「おはようございます」
部下達からの挨拶を受けながらどこか気怠げに樅木は席に着き、これまた気怠げに
「あ、そういえば今日、昼過ぎに依頼人がくるらしいからシクヨロ」
そう言った後に、いただきますと言ってから手に持つ新聞……ではなく漫画本を開くとトーストをかじり始めた。