59話 不幸
というわけで優勝しました。
最近毎日大声を出しているのでのどが枯れた。のど飴舐めたい。
「あ゛ー。ご、ごえ゛が・・・。」
龍〇散のパッケージと家紋が頭の中にふわふわと浮かんできた。実に懐かしい。
布団を除けてベッドから起き上がると、うがいをしに洗面所に向かった。
そして蛇口を捻ると、いつぶっ壊れたのかぶっしゃーと水が勢いよく出てきた。
蛇口には印が刻まれており、蛇口を捻ると対象者の魔力を消費して水が出てくる――という仕組みだ。これなら魔法を使えないちびっ子でも水をだせるっていうわけだ。
だからこんなに出てくることなんてありえないはずなのだが・・・。
まあ、いいや食堂行こ!
俺は気分をコロッと変え、着替えを済ませてから食堂へ向かった。
★★★★★★
「ごめんねぇ~。今日はもうクロワッサン売り切れちゃったのよ~。」
申し訳なさそうに口をへの字にして謝る食堂のおばちゃん。
「じゃ、じゃあメロンパン!」
「あら、メロンパンも売り切れなのよ~。」
慌て気味で言う俺に即答するおばちゃん。お、おかしい・・・。
結局俺はパンの耳を揚げた奴を食べる羽目になった。これは揚げすぎでイマイチ美味しくなかった。
★★★★★★
それからタンスの角に小指をぶつけたり、黒猫の群れを窓から見つけたり、仕舞いには靴ひもがブチっと切れていた。ふ、不幸だ・・・。
こ、これはまさか!俺に大きな不幸が降りかかってくる前兆なのでは!?
ま、そんな漫画みたいなことないかー。
なんてことを思ったのがいけなかったのか。王都全体に放送の魔法でサイレンが鳴り響く。
そのサイレンは絶望の象徴――魔王軍。
★★★★★★
めでたい祭りのはずなのに魔王軍が来て王都中は大混乱。
しかも今回は幹部2体の襲来&敵の総数延べ10000体のダブルパンチ。
ベルゲンドはあんなに弱かったから割と楽勝に勝てると思ったが、ベルゲンドは幹部の中でも弱い方だったらしい。捨て駒っていう奴だろうか。
そんなこと考えている暇もなく、魔王軍は襲ってきた。空は赤く染まり、悲鳴と恐怖が響き渡る。
なんだか王都を上から眺めたい気分になったので、風魔法で空を飛んでみた。周りにいたゴブリンたちは瞬殺されていた。
スキル『飛翔』を手に入れたので飛翔を使う。武道会の会場からはみんなで逃げておしくらまんじゅう状態。そして、会場に向かうものを視認したので躊躇いなく叩き落とす。
叩き落とされた影を追い、着地した。
すると、そいつは一言でいえば美少年。背中を45度にまげて気だるげな印象。人間に近いような見た目をしているが、きっと魔王軍だろう。
「なんだよ~。いきなり人をはたき落としやがって~。だから俺は働きたくないんだよ~。」
なんだこいつ。やる気ないな。
「ええと、俺の名前はテル=ハングルっていうんだけど・・・。お前は?」
「僕?僕はルミングだよ。【怠惰】のルミング。一応魔王軍幹部やってるよ。よろしく・・・。」
おお、マジか・・・。
その言葉に俺は戦闘のポーズを構えるのだった。




