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3/15

僧院ヒナ1

 大学に入ってからの何度目かの同窓会。その会場の最寄り駅のホームに降りた奏介とヒナ。

「んー! 楽しみだなー。皆でご飯て久々だよね?」

「ああ、前回はプールで」

「その件は記憶から抹消でよろしく」

 奏介は苦笑を浮かべる。

「だよな」

「あ、そうだ。今日はボクと奏介くんが付き合い始めたってことは内緒ね。後で個別にカミングアウトするから」

「良いけど、面倒臭くないか?」

「今日言ったらみんなに全力でいじられるもん。わかばとしおちゃんは絶対だし、モモや水果ちゃん、針ヶ谷君もナチュラルに冷やかしてくるに決まってるよ」

 ヒナはむうっと唇を尖らせる。

「あいつらなら、ありそうだな」

「せっかく皆で集まるのにボク達の話題だけになっちゃいそうだし」

「ああ、そういうことか」

「皆との関係が変わるわけじゃないけど、高校生の時みたいにお喋りしたいしね」

 ヒナはうんうんと頷く。

「……単純に、恥ずかしいのもあるんだろ?」

「うっ」

 図星らしい。みるみる顔が赤くなる。

「と、とにかく、内緒ね!」

 そんなやり取りをしていると、

「あ、奏ちゃん、ひーちゃん」

 駅を出ると、買い物袋を持った詩音が手を振りながら歩み寄ってくる。

「二人とも早いねー。お店の予約、後一時間後だよ?」

「お前もだろ。なんかおばさんが朝早く出て行ったって言ってたけど」

「ちょっと買い物。今回のお店、完全個室だからさ、余興をね?」

 何をさせられるのだろうか。少し不安になる。

「大丈夫、あみだくじだから」

「何が大丈夫なんだ。あ、そうだ」

 奏介ははっとしたように、

「今度またうちにあいみちゃんが来るんだ。その時はしおも来る?」

「あ、行く行くー」

 そんな会話をしていると、後ろから服の裾を掴まれた。

 振り返る。

 ヒナがこちらを見上げていた。

「ヒナ?」

 ヒナは恥ずかしそうに視線をそらす。

「ボク、お餅焼いちゃおかなぁ」

 奏介は首を傾げようとして、すぐにその意味に気づいた。

 ちらりと見ると、詩音はそのまま歩いていってしまっている。こちらに気づいていないようだ。

 奏介は小声で、

「一応確認しておくけど、俺の彼女はヒナだけだよ」

「!」

 ヒナは目を見開いて、慌てて服の裾を離した。

「そ、そういうことじゃないんだけどな」

 それでも嬉しそうだ。

「なるほど、お付き合い一週間てところだね?」

 奏介とヒナは同時に横を向いた。いつの間にか詩音が会話に加わっていた。

 腕組みをする。

「まったく、決まったその日にうちへ挨拶に来てくれてもいいじゃん。水臭いなぁ」

「いや、お前、俺のなんなんだよ」

「幼馴染みだね! 幼馴染みにお付き合いの挨拶は基本だよ!」

「相変わらずわけのわからないことを」

 奏介が呆れていると、ヒナも苦笑を浮かべる。 

「なんか、しおちゃんは変わらないね。別に奏介くんとしおちゃんが話してるのが嫌とかじゃないんだ。ただ、ちょっと、やっぱり仲良さそうだから、なんていうか」

 ヒナ、もじもじ。

「うんうん。分かるよ」

 と、詩音のスマホが鳴った。

「あ、ちょっと待ってて」

 着信らしく、少し離れたところへ。

「はぁ。即効でバレた」

「ああ、ごめん、俺が」

「ううん。完全にボクの自業自得だからね。ま、切り替えて行こ」

 ヒナは片目を閉じてみせた。

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― 新着の感想 ―
[一言] ヒナの…っ…嫉妬だ…と…っ?! ( ゜∀゜):∵グハッ!! やっぱ俺のこの作品のラブコメへの情熱の原点である奏ヒナ√は至高ですね…(゜ー゜)(。_。)ウンウン この続編のやつって、書き…
[一言] ヒナちゃんが可愛すぎるんだが?ヤキモチ焼きなの可愛いなぁ。
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