始業式の挨拶は聞いてないんだが?!
こっわ、え、怖すぎんか??
「どうしましたか雪奈君。早く席に行きましょうよ。父様からの話では私の隣になるように……って……」
俺が青ざめていたのを心配して声をかけてくれた。
だが、席まで案内しようとしてほかの人たちがそこから退くと俺の席が見えてきたのか絶句する。
「なんで雪奈君の席がこんな安っぽくてボロボロなんですか!!」
まぁ、周りと比べるとそうかもしれないけど……
「私こんな椅子座ったことないですよ。おしり痛くなりませんか?」
そんな長時間座らない限りならねぇよ!!ってか、パイプ椅子座ったことない人なんているんだな……
ガララララララ
すると教室の前のドアが開き、先生が入ってくる。
姫野先生だ。
「皆さんあけましておめでと」
「姫野先生!!これはどういうことですか?!」
先生の年始の挨拶を止め、夏奈さんが突っ込む。
「これとはなんですか皐月さん」
「分かっているでしょう!!桜城君の席のことです。何で私たちと同じものを用意しなかったんですか?浮いてしまうじゃありませんか」
いや、ここに男がいるってだけで浮くとは思う……
だが、そんなこと言える雰囲気でもなく
「あ、あぁ、それはですね……急遽用意することが出来なくてですね……それに関しては桜城君も了承して頂きましたので大丈夫ですよ」
まぁいっかとは思ったが了承したっけな。
「桜城君。そうなんですか?」
夏奈さんが俺の方を見てくる。先生はうんと言ってくれとそう願っている……ような気がする。すごい汗かいてるし当主さんに伝えられれば面倒なんだろうなと思い俺は
「そうですよ。夏奈さん。今年度はこれで来年度からは同じ椅子を用意するという話になりました」
とりあえずそう言っておく。別にわざわざ先生から恨みを買うことは無いだろ。
「そうなんですか……」
夏奈さんは少し考えるように自分の席に座る。俺もその奥の自分の席に座らせてもらうと、先生が話始める。
「では、この後ホールへと移ってもらいます。そこで始業式を行い、配布物を配れば今日は終わりです」
今日は始業式だけなのか。楽だなぁ。
そう思っていると
「桜城さんは少し残ってください。他の方はホールへ向かい始めてください」
え、俺だけ残るの?
「雪奈君。教室の前で待ってますので」
夏奈さんも教室から出ていく。俺と先生が二人きりで先生が口を開き、そこから出てきた言葉は
「ごめんなさい!!」
……え?
「この後の始業式で転校生挨拶があるの!なんの理由もなく転入すると保護者に文句言われちゃうから今回2年生にも男の子を入れてみるための試しとしてってことになってて。それの特別生徒として挨拶してもらわなきゃなんだけど……考えてたりする?」
こじつけだなぁ……俺以外に男が転学してくることなんてないだろうに。まぁ、理由が必要なのはわかるけども……って、挨拶?!そんなの聞いてないんだけど?
「でしょうね……連絡なんて行ってないだろうし……本当はこのクラスの担任の先生から昨日連絡ついでに挨拶に行くって話だったのよ。だけどね。あの先生まだ帰っていてないからね.......」
まじかよおい。まさかだけどさ。
「即興でお願いしてもいい?」
マジで?陰キャオタクにそんな事頼んじゃう……?