煩悩の気配
案内された部屋へ入るとそこは新築のような匂いと温泉特有のいい匂いが中からしてきた。
「ここはこの旅館に三つしかない最高級の部屋のひとつ、檜の部屋です。家族旅行の方々がだいたい半年前から予約しておかねば入れぬ場所です。楽しんでいってください」
3つしかなくて、半年前から予約しないといけないって……なんで今日入れたんだよ。
「三つしかない部屋と同じ設備なだけでここは特別なお客様のために開けている4つ目の部屋ですよ。心配しなくても誰かを追い出したりしたわけじゃないので安心してください」
考えていたことが漏れたようで夏奈さんに追加で説明される。
「では早速お風呂に入りましょう」
そう言って奥の方へ進んでいく。
「私たちはこの奥の所で着替えますので雪奈様はそこで着替えてください」
如月さんもそう言って奥の木の板で見えない所へ行った。
あの奥で着替えているのか……
ドアの音などもしなかったがあの一枚の板しか挟まず大丈夫なのか?
いや、覗かねぇがな?!信頼されすぎてねぇか?
ま、別に支障はない……あるにはあるが大丈夫だろ。
煩悩に頭が支配されても我慢してれば何も無いんだから。
そんなことを考えていると
「着替え終わりましたか〜?私たちは終わりましたので着替え終わったなら来てくださいね〜この奥に温泉がありますから〜」
という夏奈さんの声が聞こえてきた。
変なこと考えてたせいで着替え始めてすらねぇよ……
俺は急いで着替え始める。
見ろ!俺の早着替え術!!
パッ
着替え終わるかそんなスピードで!!
「雪奈くーん。何かありましたか〜?」
遅すぎたようで呼びかけられる。
「はーい、今行きます〜」
そそくさと着替え温泉の方へ向かう。
板を超えた時、視界に入ってきたのはいくつかの種類の温泉だった。
え?ここって家族客とかで来るようなとこだよな。
通常の温泉に熱湯くらいならまだ分かるがサウナに五右衛門風呂まであるとか……そりゃ人気出るわ。
ここに泊まるだけで普通の大浴場とまでは言わなくても色んな種類のものが楽しめるんだから。
あのなんて言うのかは知らないが白く濁った温泉もある。
「雪奈さん。こっちにシャワーなどあるので体洗って入りましょ!」
温泉を見て驚いていると夏奈さんから声がかかる。
ん?姿が見えないなぁ。とキョロキョロしていると
「ここですよー」
手前の石の板の奥から手が見えた。
「体洗っているのでそっち側で洗ってください〜」
そっちって石の板のこちら側にことか?
よく考えてみると水着着ながら体洗えねぇもんな。
ということはあちら側で裸なのガタンッ
「どうしたの?!」
大きな音が聞こえてきたと思った瞬間、夏奈さんの驚く声が聞こえてきた。
「いえ、いやらしいことを考えている気配を感じたもので」
ひっ。まさか俺の煩悩を察知して?!
「雪奈君がってこと?そんなわけないわよ!!謝りなさい!!これで興奮するような人なら学校のプールでも興奮する変態ってことよ!!」
ぐふっ。
「それもそうですね。申し訳ない雪奈様。そちらでゆっくり体を洗って来てください」
それもそうですね……ちょっと信頼が俺の心に来るよ。
はぁ、でも頭がスッキリした。
体洗って温泉入ろっと。




