家族とお出かけ
その後、転入のための書類を受け取って俺は家に帰ることにした。
帰り道はもちろん河野さんに送ってもらった。つまりお嬢様と一緒だったのだが。
「あら、先程ぶりですね。あ、家に帰るのですか。河野。この方を家まで送り届けなさい」
「はい、お嬢様」
という茶番があったことだけは言っておこう。河野さんの表情は真顔だったが目が笑っていた。
いつまでこの猫被り続けるんだろ……あっちの方がギャップもあって可愛いんだけどなぁ。
「ただいま〜」
家に帰ると母さんと父さんが神妙な顔をしてゲンドウポーズ、顔の前で手を組み睨み合っていた。
「ど、どうしたの?」
なにか言い合いでもしていたのだろうか。
気になって聞いてみると母さんがグリンッとこちらを振り向いてきて
「聞いてよ。雪奈ぁ。久しぶりの家族のお出かけ、車でどこか遠出して遊びに行かない?って言ったらお父さんが福袋買いに行くかアウトレット行きたいって言ってくるのよどう思う?!」
「今のうちに行かなきゃ福袋買えないかもしれないだろ!!既に売り切れてる福袋だってあるのに」
……とりあえず深刻そうな事じゃなくてよかった。
たださ、ひとつ言いたいのは普通逆じゃね?
「ちょっと遠目の観光名所の近くのアウトレットとか探せば?アウトレットで買いたいもの買って観光名所ちょっと見て。俺も別に明日の学校間に合えばいいから深夜に帰ることになっても車で寝ればいいし。それじゃだめなの?」
「「それだ!!」」
2人はスマホを取り出して探し始める。
何で妥協しようとしないんだろ。たまに母さん達こんなことあるんだけどだいたい俺が折衷案出して終わるんだよね。
ちなみに俺が折衷案出さなかった時は父さんが折れる。
「神戸はどう?高速乗れば1時間くらいで着くし夜観光するとなれば温泉とかあるからちょうど良さそう」
「温泉!!行きたいわ!確か神戸の温泉って冷え性とかに効くって聞くし良いわね。じゃあ行きましょうか。20分後に出発。各自用意してきなさい」
とまぁ、こんな風に行き当たりばったりでお出かけ先が決まってすぐに外に出ることになる。まぁ、いつも通りだけども。
20分後。
「用意出来たか〜?」
父さんが玄関で母さんと俺に聞いてくる。
俺は特に用意するものなんてないので出来ているのだが……
「待ってよ〜まだ化粧してるの〜荷物も出来てないからあと20分くらい待って〜」
母さんはいつも通りまだだ。
自分で20分後って言ったんだから準備してくれよなほんと……なんで倍に伸ばそうとするんだよ。
「母さん荷物は準備してあるから化粧終わらせて早く車に乗ってね〜雪奈はもう終わってるだろうし車乗って」
さすが父さん。事前に終わらないこと見越して母さんの準備も終わらしてる。
5分ほどして母さんが化粧を終わらして車に乗り込んできた。
そして、父さんが車を発進させようとすると
キキィィィィーーーーー
皐月家の車が結構なスピードで家へ来て急ブレーキで止まる。
中から如月さんが出てきて俺たちの車の窓、俺のいる左後ろの窓をコンコンとノックしてくる。
「今からどちらに?」
「神戸の方のアウトレット行って温泉行こうって話になってて.......何か用事ありましたか?」
「いえ、特には。お嬢様が」「如月!!」
「いえ、特には。いってらっしゃいませ」
お嬢様が……?
まぁ、聞かなかったことにしておこう。
さぁ!!久しぶりの水入らずの家族のお出かけだ!!