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93話 転移所にて

 

 日和は前を走る隼人たちを追いかけていた。


 その頬は少し赤い。

 先程リーから言われた言葉が原因だろう。


 何が痴話喧嘩だ。

 日和と隼人はそんな関係ではないのに。


(勝手なこと言って……!)


 そう内心で思い、リーの背中を軽く睨みつける日和。


「おお……今なんかゾッとしたで……!」

「大丈夫かよ」

 前を行くリーと隼人が何やら言葉を交わしている。

 その緊張感のない様子に、日和は溜め息を吐く。


 まあ、隼人が魅力的なことは認めよう。

 がさつに見えて、意外と優しいところもある。

 『神獣世界』でも何度も助けてもらった。


 それに頼りになる。

 それはただ単純に強いということだけではない。


 みんなをまとめる力。

 そういうものが隼人にはある。


「ん? なんだよ?」

 その時、日和の視線に気が付いたのか隼人が振り返る。


「なっ、なんでもないわよ……!」

 日和は顔を逸らす。

 その頬はやはり赤い。


 日和は首を振る。

 自分は何を考えているのだ。

 今は革命の真っ最中。

 一時も油断できないのだ。


 そんな時に男の子のことを考えているなんて、まるで──


 まるで、恋する乙女ではないか。


 そこまで考えて日和はハッとする。

 そんなことが、有り得るのだろうか。


 自分が、恋をしているなんて、そんなこと……


「おい、日和。お前、大丈夫かよ。さっきから変だぞ?」

 そんな日和の顔を覗き込む隼人。


 日和は、今度は目を逸らさなかった。


 大きく目を見開いて隼人の顔を見つめる。


「な、なんだよ」

 首を傾げて気まずそうに隼人が言う。


「あ、ごめん……なんでも、ない……」

 そう言い日和は俯く。


 この気持ちは一体何なのだろうか。

 今はまだわからない。


 だが。


 そっと胸に手を当てる日和。

 そこにある心臓の、高鳴る鼓動は確かに本物だった。




 

「見えた」


 広い転移所をしばらく駆け回った日和たち。

 そしてついに目的の場所に辿り着いた。


 声を上げて足を止めるレイナ。

 日和たちもそれに倣う。


 目の前には巨大な水晶玉がある。


「これが転移水晶なんですか?」

「そう」

 日和の言葉に頷くレイナ。


 そしてレイナは転移水晶の方へ歩いていく。


「えっと、どうするんですか……?」

「壊す」

「え」

 日和が訊ねると、剣を抜き放ちながら答えるレイナ。

 そして日和たちが止める間もなく、その剣を勢いよく振り下ろした。


 轟音と共に転移水晶が砕け散る。


「えええっ!?」

 驚愕の声を上げる日和。

 こんなにあっけなく壊れるとは。


「なあ、これ俺たち必要だったか?」

「全くいらんなぁ」

 後ろで隼人とリーが話している。


 その時だった。


 物凄い音でサイレンのようなものが鳴り響く。


「な、何っ!?」

「多分、これが壊れたのがバレた」

 日和が耳を押さえて叫ぶと、足元に転がる転移水晶の残骸を指してレイナが言う。


「きっと、増援が来る。気を付けて」

「それ、壊す前に言ってくださいよ!」

 事もなげに言うレイナに日和は文句を言う。


「な、見つかる前にとんずらせーへん?」

 頭の後ろで手を組んでリーが言う。


「そ、そうだ! 早く逃げよう!」

「そうは、行かないみたい」

 日和が言うと、首を振りある一点を指すレイナ。


 その方向を見ると、こちらに向かって走ってくる一団が見えた。


「いたぞ! 侵入者だッ!」

 こちらを指して一団の先頭の男が言う。


「どうしますか!?」

「追ってこられたら面倒。ここで倒す」

 日和が焦って問うとレイナは言う。


「ええ!?」

「日和、やるしかねーだろ」

 日和が顔を顰めるとその肩を叩く隼人。


「と言う訳で、お先ッ!」

「あ、隼人!」

 そして止める間もなく一団に向かって走り出してしまう隼人。


「いっちょやったるかぁ」

「ちょ、リー!?」

 その後ろを追い掛けるリー。


「私がたくさんいるやつをやるから、残ったやつをお願い」

「レイナさん!?」

 レイナも日和の肩を叩いて、走りだしてしまう。


「ああ、もう! みんな勝手なんだから!」

 残された日和も顔を顰めながらも走り出す。


「いいわ、やればいいんでしょ、やればっ! やってあげるわよ、もう!」



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