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90話 転移所へ

 

 隼人は前を走るレイナを追い掛けていた。


 瑠香たちと別れた後、真っ直ぐと転移所を目指す隼人たち。

 普段寝てばかりいるレイナが猛スピードで走っている。


 速い。

 隼人たちのために速度を落としているようだが、もっと速く走ることもできるだろう。


 一体何者なのだろうか。


「なあ、レイナ!」

 隼人はそのレイナの横に並び、問い掛ける。


「……なに?」

「お前、一体何者なんだよ?」

「知らない」

「は?」

 隼人の問いにそっけなく答えるレイナ。

 その返答に隼人はぽかんとする。


「私は、私がわからない」

 少し憂いが籠った声で呟くレイナ。


「そりゃ、記憶喪失とかかよ?」

「……そう」

 隼人の言葉にレイナは頷く。


「なんでそんなことに?」

「わからない。……でも覚えてることもある」

 レイナは首を振りながら言う。


「何を覚えているんだよ?」

「……お兄ちゃん」

「ん?」

 レイナの呟きに首を傾げる隼人。


「お兄ちゃんが、いたこと」

「そいつの名前は?」

「……わからない」

 再び首を振るレイナ。


「ちょっと隼人! あんまり聞いたら失礼でしょ!」

「あ、ああ、そうだな。悪かった」

 そこで日和に言われて、隼人は反省する。

 確かに少し不躾すぎたかもしれない。


「……いいの。私が好きで話したことだし。……それに」

「それに?」

 言葉を切ったレイナにリーが首を傾げる。


「あの子。……瑠香って言ったけ。あの子が他人には思えなくて」

 しばらく逡巡した後に口を開くレイナ。


「瑠香が?」

「うん」

 驚く隼人にレイナは頷く。


「あの子、何者なの?」

「何者って聞かれてもな……俺たちの、仲間だよ」

 レイナに問われ、隼人は首を傾げる。


「昔は、何していた?」

「昔のことは知らないけど……俺たちは小っちゃいころから同じ学校だったぜ?」

「……そう……」

 それを聞いて顔を伏せる。


「……でも、似てる……」

「ん?」

「……何でもない」

 首を傾げる隼人に首を振って言うレイナ。

 そして前方を指差す。


「それより、見えた。あれが転移所」

 レイナが指差す先には大きな建物があった。


「あれか!」

 それを見て足を速める隼人。




 転移所の入り口付近に辿り着いた隼人たちは、一度物陰で足を止める。


「封鎖されてんのか、これ」

 入り口を塞ぐバリケードと軍服の集団。


「……まあ、重要な場所だし、予想はしてた」

 レイナは頷くと一人で歩き出す。


「お、おい、どーすんだよ」

「破る」

「は?」

 レイナは一言呟くと腰に下げた剣を引き抜く。

 ぽかんとする隼人。


「何者だ!」

「そこで止まれ!」

 レイナの姿を見た兵士たちも抜刀する。


 その瞬間、一歩踏み出したレイナの姿が消える。


 次の瞬間。


 爆音と共に兵士とバリケードが宙を舞う。

 少し遅れて兵士たちが悲鳴を上げる。


 兵士とバリケードで固められていた場所に穴が開き、その中心に剣を携えたレイナが立っていた。


「──来て」

 その声に我に返る隼人たち。


 こちらを振り返っているレイナ。


「や、やべーな……」

「……う、うん……」

 隼人の呟きに、日和が頷く。


「はやく」

 こちらを見ているレイナ。


「ほら、兵士さんたちが立て直さないうちにはよ行こうや」

 リーが一歩踏み出して言う。

 隼人たちはその言葉に従う。


 レイナの後に続いて転移所の入り口をくぐる隼人たち。


「……で、これからどうするんだ?」

 そこで足を止め、隼人は言う。

 その言葉に日和が呆れた顔をする。


「あんた、聞いてなかったの? この国とエドランド帝国を繋ぐ転移水晶を占拠するのよ」

「そうか、聞いてなかった」

 隼人は頭を掻く。

 そんな隼人に溜め息をつく日和。


「……あんた、そういうところあるわよね……」

「だって、話難しいからよ」

 顔を顰める隼人。


「またそんなこと言って……ちょっとは頭を回転させないと──」

「はいはーい、お二人さん。痴話喧嘩はそこまでや」

 隼人と日和の間にリーが割って入る。


「な! ち、痴話喧嘩なんかじゃ──」

「ちゃうの? 楽しそうやったけど」

「リー!」

 顔を赤くする日和をリーがからかう。

 日和が叫ぶ。

 その顔は真っ赤だ。


「はいはい。取り敢えず、先を急ご」

「──わかったわよ」

 顔を顰めながらも日和が頷く。

 そして走り出す日和。


 隼人もそれに続く。


「──なあ、日和」

「……」

「なあ!」

「なに!」

 こちらを見ずに叫び返す日和。


「──『ちわげんか』って、なんだ?」

「うるさい!」


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