85話 交錯、そして別行動
爆発音。
破壊音。
大勢の人間の叫び声。
それらが入り混じって聞こえる。
そんな中、充たちは詰所を目指して街中を疾走していた。
東大通りの皇宮付近を走り抜ける充たち。
「なあ! これ、何が起こってると思う!?」
走りながら声を上げる心。
『わからない。緊急事態ってことはわかるけど』
イチヤが答える。
「この前見たデモ騒ぎと似ているな。……規模はそれの比じゃないが」
珠輝が周囲を見て呟く。
「お前は、これが民衆によるものだと思うのか?」
充は隣を走る珠輝に訊く。
「ああ。一斉に起こった割に、あまり統率が取れてない」
頷き答える珠輝。
「恐らく、どこかで暴動が過激化し、それに触発されて一斉蜂起したんだろう」
「参ったな……」
珠輝の推測に充は顔を顰める。
この国の情勢が傾いているのは、既に分かっていたことだった。
だが、まさか充たちが滞在している間にこんな事態になるとは想像もしていなかった。
しかし、今この国を出るわけにもいかない。
なにせ、この国は瑠香たちと合流できる頼みの綱なのだ。
どうするべきか。
仲間を危険に晒す訳にはいかない。
だが、この国が崩壊すれば瑠香たちとの合流は難しくなる。
そこまで考え、充は歯噛みする。
まず、異世界で分断されたことが、状況の複雑化を招いた。
全員で転移できていれば、こんなことにはなっていなかったのだ。
『ソル』。
あの男だ。
正体不明のあの男に従ったのが間違いだった。
そこまで考え、充はふと疑問に思う。
なぜだ。
なぜ自分は、あの時あの男を警戒しなかったのだ?
正体不明。
それだけで警戒すべきだった。
だが、なぜかあの時は警戒心など微塵も湧かなかった。
恐ろしい。
こんなことは一度もなかった。
充がおかしいのではない。
あの男が、異質なのだ。
その時だった。
背後で爆発音が響く。
近い。
背後である西大通りの方を振り返る充。
思考に耽ってたせいだろうか。
突然のことに、一瞬だけ呆然としてしまった。
その一瞬の隙に、音の発生源を目指して心が走り出す。
「あ、心!」
それに一早く気付いたスズも駆け出す。
「ちッ!」
充は軽く舌打ちをしてその後を追おうとする。
だが、その時。
東大通りをこちらに向かって爆走する、車のようなものが充の目に留まる。
なぜだかその時、その車に目が吸い寄せられた。
車に乗っている人を見て充は驚愕する。
そしてその名前を呼んだ。
「瑠香!?」
「うそ!?」
充の叫びを聞き、凛が目を見開く。
車は充たちの横を爆速で通り過ぎ、東大通りを駆け抜けていった。
「充、どうする」
走り出してしまった心とスズを見て珠輝が充に問い掛ける。
「見間違いの可能性もある。だが、確かめる価値はある」
走る心の背と、走り去ってしまった車を交互に見て充は言う。
「珠輝、お前は心たちを追い、連れ戻してくれ。俺はあの車を追う」
「わかった」
珠輝は頷き、背を向ける。
「凜、実辰。お前らはこっちだ」
「わかった」
「りょーかい」
頷く凛と実辰。
「何かあったら連絡しろ」
「ああ」
短く言葉を交わす充と珠輝。
「──行くぞ!」
その号令を聞き、地を蹴る珠輝たち。
充も走り去った車を追って走り出した。




