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79話 革命開始

 

「わぁ! すごい!」

 眼下に広がる巨大な街を見て瑠香は歓声を上げる。


 瑠香たちが乗ったバベル帝国行きの飛空艇は三日間飛び続け、遂にバベル帝国の皇都、バビロニアに到着しようとしていた。


 バベル帝国とアルセア共和国の間に横たわる海を越える長旅となったが、それももうそろそろ終わりだ。

 数十分後に着陸すると聞いてほっとした顔をしている日和と一華。


 瑠香は今バビロニアの街並みを眺めていた。


「へえ、あれが噂に聞く『王の灯』かにゃあ。始めて見たのにゃ」

 窓にぺたりと顔をつけてティアが言う。


 その視線の先には町の中心、皇宮の上空に浮かぶ巨大な水晶玉がある。


「あれ、ティアこの世界の出身なんやろ? 見たことあらへんの?」

「ティアちゃん、実はアニマーレ王国から一歩も出たことないのにゃ。箱入り娘ってやつだにゃ」

「ほーん」

 首を傾げるリーに、ティアが肩を竦めて言う。

 さして興味がないという風に頷くリー。


「でも、本当に光ってないね……」

 灰色の水晶を見て瑠香は呟く。


『王の灯』は巨大な魔道具で、王家の人間が玉座に座ると光り輝くらしい。

 バベル帝国は、三千年の歴史の中で一度もその光を絶やしたことが無いとウィスターは言っていた。


 だが、今その輝きは失われている。

 それはまるで、希望が失われたバベル帝国そのものを現しているようだった。


「皆さん、おはようございます」

 そこで瑠香たちに涼やかな声が掛かる。


「あ、おはようございます。フェイルさん」

 ぺこりと頭を下げる瑠香。

 そこに立っていたのはフェイルだった。


 酔っぱらっていた時とは打って変わってキリっとした表情をしている。

 どうやら、本人にはその時の記憶はないらしく、翌朝ウィスターから瑠香たちの革命参加を聞かされた時は目を白黒させていた。


 瑠香たちも、そこで事実を明かすような鬼ではない。

 人には守られるべき尊厳があるのだ。


「な、なんですか?」

 一人でうんうんと頷く瑠香を見て眉を顰めるフェイル。


「いえ、なんでもないです」

 瑠香は首を振って言う。


「それより、これからよろしくお願いします」


 瑠香はフェイルと共にバベル帝国元将軍であるプラタという人物の脱獄を助けることになっている。

 瑠香と共に監獄に向かうのは一華、茉菜、ティアだ。


 それとは別行動で、隼人、日和、リーはレイナと共に転移所に行く予定だ。

 また、ウィスターは叔母であるエメリアという人物を皇宮まで護衛することになっていた。


 瑠香は共に作戦を行うフェイルに頭を下げる。

 それを見てフェイルはパッと敬礼をする。


「はい! あなたたちの身の安全は、このフェイル・フォン・ブラスベルが命を懸けて守ります!」

「そこまで言わなくても……」

 いつも通りのフェイルに苦笑する瑠香。


 その時、フェイルの後ろから歩いてくる人影。

 ウィスターだ。


「あ、ウィスターさん。おはようございます」

 瑠香はウィスターに挨拶をする。


 ウィスターがバベル帝国の皇子だと聞いた瑠香たち。

 一度は態度を改めようとしたが、ウィスターに『そのままでいい』と言われていつも通りにしている。


「ああ、おはよう」

 軽く頷き、挨拶を返してくれるウィスター。


「今、着陸に入った。降りる準備は出来ているか?」

「はい、特に荷物もありませんし」

「そうか」

 瑠香が頷いて言うとウィスターは微かに笑う。


 その瞬間、飛空艇が微かに揺れて止まる。

 そしてゆっくりと降下を始めた。


「わー!」

 どんどんと近付いてくる街を見てティアが歓声を上げる。


 飛空艇はどんどんと地面に近付き、やがて止まる。

 しばらくして静かに飛空艇の外に繋がる扉が開いた。


 その扉が開いたのを見て、ガバッと飛び起きる一華と日和。

 二人は脇目も振らずに出口から外に出て行ってしまう。


「あ」

 その様子を見て目を丸くする瑠香。

 ティアたちと顔を見合わせる。

 そして苦笑を漏らす。


「おし、俺たちも行くか!」

 隼人が腕を突き上げて意気揚々と出口に向かう。


 瑠香たちもそれに続いた。




 飛空艇から降りた瑠香たち。

 飛行場から出ると、ウィスターが水晶指輪を起動させて何やら操作を始めた。

 やがてそれが終わったのか、顔を上げるウィスター。


「何してたんですか?」

 興味が湧いた瑠香はウィスターに訊いてみる。


「ああ、叔母上たちに到着したと連絡を送ったんだ」

「なるほど」

 納得して瑠香は頷く。


「さて、そろそろ行こうか」

「どこに行くんですか?」

 歩き出すウィスターたちを追い掛け、瑠香は訊ねる。


「叔母上と合流する。君たちもついて来てくれ」

 振り返ってウィスターが言う。


「いよいよだな! 革命!」

 大きすぎる声で言い、腕を突き上げる隼人。

 その口を慌ててフェイルが塞ぐ。


「静かに! 誰かに聞かれたらどうするんですか!?」

「あ、そうか」

 幸い、周囲にはあまり人がいない。

 今のが聞かれた心配はなさそうだ。


「今私たちがいるのは皇都の北のはずれだ。叔母上たちがいる南大通りまで行こう」

 そう言い歩き出そうとするウィスター。


 と、その時。

 遠くから爆発音が聞こえてきた。


「な、何!?」

 歩き出そうとしていた瑠香は驚いて足を止める。


「ウィスター様!」

 フェイルがウィスターの方を慌てて見る。

 瑠香もその視線を追い、ウィスターの顔を見て息を呑んだ。 


「どういうことだ……!」

 ウィスターは厳しい顔をして音が聞こえた方を睨んでいた。


「もう革命が始まっているんですか……?」

 瑠香は小さな声でウィスターに囁く。

 その言葉に、ウィスターは首を振る。


「いいや、まだだ。まだ始まっていないはずだ」

「じゃあ、一体……!」

「……ウィスター」

 そこでレイナが声を上げる。

 驚いてそちらを見る瑠香。


 レイナが自分から声を出したのは初めてだ。


「足音と、声がたくさん。町の真ん中に向かっている」

「まさか、暴動か……!」

 顔を顰めるウィスター。


「どういたしますか……?」

 フェイルが顔を曇らせてウィスターに指示を仰ぐ。


 ウィスターはしばらく目を瞑る。

 そして口を開く。


「レイナ、人々はどこへ?」

「みんな、皇宮を目指している」

「まずいな……」

 額に手を当てるウィスター。


「皇宮に民衆が押し寄せたらいよいよ暴動が表面化する。そうなれば、エドランド帝国側の歯止めも効かなくなる……!」

「ど、どういうことだよ?」

 焦ったように隼人が訊く。


「エドランド帝国はきっと暴動を起こした民を処罰する。そうなったら暴動はもっと過激化する。負の連鎖や」

 リーがそこで呟く。


 その時だった。

 ウィスターの指輪が光を放つ。


「なんだ!?」

 驚いたように隼人が叫ぶ。


 ウィスターはゆっくりを手を持ち上げ、光る指輪を見る。

 その眼は、微かに見開かれていた。


「合図……そうか、叔母上は、ご決断を……!」

 何かを呟くと、ウィスターは顔を上げる。


「革命開始の、合図だ」

「今ですか!?」

「ああ」

 瑠香が驚愕すると、ウィスターは頷く。

 そしてぐるりと瑠香たちを見回す。


「私たちはこれから作戦通りに動く。君たちは、どうする?」

 その言葉に顔を見合わせる瑠香たち。

 そして、頷く。


「私たちもやります。手伝わせてください!」

 その言葉を聞き、笑みを浮かべるウィスター。


「ありがとう。助かる」

 そう言いウィスターは顔を上げる。


「既に民衆が暴動を起こしている。民衆がエドランド帝国に罰されるのを防ぐには我々が革命を成功させるしかない」

「要は、先にやっちまえばいいんだな!」

 腕をまくって隼人が言う。


「ああ、必ず成功させよう」

 そう言い背を向けるウィスター。


「これよりこの国を解放する戦いを始める。フェイル、レイナ、彼らを頼んだ」

「はい!」

「うん」

 ウィスターの言葉に頷くフェイルとレイナ。


「どうか、無事で」

 瑠香たちを見てウィスターが言う。


「はい!」

 瑠香たちが頷くのを見て、微かに笑うウィスター。


「それでは、解散!!」

 そう言うと同時に走り出すウィスター。


 瑠香たちも各々の目的地に向かって走り始めた。




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