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77話 強者

 

「っ!?」

 自身に迫る巨大な拳を見て目を見開く充。

 しかし、瞬時に思考を切り替え、地面を転がることで拳を避ける。


 少し離れた場所で充は体勢を立て直す。

 砂埃の中で影が揺らぎ、視界が晴れた。


 そこには途轍もなく巨大な男が立っていた。

 身長は充の二倍ほどだ。


 スキンヘッドの巨漢は腕を振り、残った土煙を払う。


「なんだこれ、岩!?」

 その時、心の驚愕したような声が聞こえた。

 そちらを見ると、心の目の前に巨大な岩が落ちていた。

 先程落ちてきたのはこれだろう。


「ちぇ、外したかぁ」


 そこでそんな声が聞こえる。

 その声は上の方から聞こえてきた。

 声の主を探して上を見上げる充。


 見つけた。

 近くの建物の屋根の上。


 そこに誰かいる。


「次は当てるよ!」

 まだ声変わりしていない少年のような声。

 フードを被っていて顔は見えない。

 その声の主は大きく腕を振り被る。


 そして腕が振られる。


 投擲されたのは、小さな石ころ。


 充は眉を顰める。

 一体、何の意味があって石ころを投げるのだろうか。


 充がそう考えたその時。

 少年が口を開く。


「いくよ! “巨大化(ビックサイズ)”!」

 その瞬間だった。


 投げられた小石が一気に巨大な岩に変化する。

 その向かう先は心だ。


「マズい、避けろ!」

 充は心に向かって叫ぶ。

 だが、心は動かない。


 心は不敵に笑うと迫る巨岩を見据える。


「そっちがデカいので来るなら、こっちだってデカくなってやるぜ」

 そう言い心は拳を引く。


「“G(ギガント)”ッ!!」

 そう叫ぶと、心の拳の周りを半透明の魄が包む。

 それはどんどんと巨大化していく。

 魄でできたその巨大な拳を、心は岩に叩き付ける。


 爆音と共に砕け散る岩。


「うっそぉ! 砕かれた!?」

 石を投げた者が驚愕の声を上げる。

 充も唖然としてそれを見ていた。


 その時だった。


 心に迫る巨大な人影。

 先程、充に殴り掛かったスキンヘッドの巨漢だ。.

 巨漢は腕を振り上げ、拳を心に振り下ろす。


 まだ、心は腕を振り抜いた姿勢のままだ。

 横目で自身に迫る拳を捉え、目を見開く心。

 すぐに心は拳を防ごうとする。


 しかし、巨漢の動きは早い。

 このままでは間に合わない。


 だが、その時。


「はッ!」

 巨漢の腕が弾かれる。

 スズが心と巨漢の間にとんでもない速度で割り込み、巨漢の腕を蹴り上げのだ。


 一瞬目を見開く巨漢。

 しかし、すぐに表情を切り替え、即座に次の攻撃に移る。

 うなりを上げ巨大な拳がスズに迫る。


 強い。

 かなり戦い慣れしている。


「させねえ、よッ!!」

 その時、スズの後ろから飛び出た心が巨漢に蹴りを放とうとする。

 腕を上げて蹴りを防ごうとする巨漢。


「──ぐッ!?」

 だが、それよりも早く、心の足が巨漢の腹部にめり込む。

 苦悶の声を上げて巨漢は後ろに吹き飛ぶ。

 そのまま背後の建物に激突し、壁をぶち抜いて飛んでいく巨漢。


「くっそ!」

 その時、屋根の上から声が聞こえる。

 そちらの方を向くと、再度腕を振り被っている。

 しかし、次の瞬間、ずるっとバランスを崩した。


「あ、あれ!?」

 転げ落ちてくる人影。

 そのまま地面に衝突するかと思いきや、どすっと鈍いと音を立てて地面に落ちる。

 落ちた先は砂のようになっていた。


 地面に着地した瞬間、被っていたフードが外れる。

 それは黒髪の少年だった。

 充たちと同い年くらいだろうか。 


「な、なんだこれ、砂!?」

 驚きの声を上げる少年。

 落ちた先の砂が蠢き、少年を捕らえる。 


「……珠輝、お前か?」

 後ろの珠輝を見る充。

 そこには、地面に手をついている珠輝がいた。


「悪い。遠いせいであいつの足場を崩すのが遅くなった」

「いいや、助かった」

 立ち上がりながら珠輝が言う。

 充は首を振ると礼を言う。


 そして砂に埋まる少年の方を見た。 


「くそ、離せよ!」

 暴れて砂の拘束を解こうとする少年。

 しかし、暴れれば暴れるほど砂に沈んでいく。


「二人捕まえられたか」

 充は巨漢が吹き飛んだ方向を見て呟く。


「誰だったんだ、こいつら? 全然手応えなかったぜ!」

 心が首を振りながら大声で言う。


 その時だった。


「──そうか。ならば、私たちが相手になろう」

 知らない声がそう言う。

 バッとそちらを見る心。


 充も即座に気を引き締め、声がした方へ振り返る。

 そこには、銀髪を持つ長身の男と金髪の女が並んで立っていた。


 充たちが二人に目を奪われていた、その瞬間。


 爆音と共に、建物に空いた穴から飛び出してくる巨大な影。

 飛び出してきた巨漢は、物凄いスピードで近くにいた珠輝に突進する。


「──くっ!?」

 驚きに目を見開く珠輝。

 だが、すぐに腕を交差させることで突進を防ごうとする。


 しかし、巨漢は珠輝の腹を目掛けて低い位置から拳を振る。


「ぐ、はッ!?」

 巨漢の拳は珠輝の腹にめり込み、その体を吹き飛ばす。

 宙を舞い、建物に激突する珠輝。


「珠輝!」

 充は慌てて珠輝の名を呼ぶ。

 しかし、建物に突っ込んだ珠輝から返事はない。


「珠輝!?」

 凛が真っ青になってそちらに向かおうとする。

 しかし、その前に立ちはだかる一つの影。

 そこには、いつの間にか先程の金髪の女が立っていた。


 向かってくる凜に向かって手を伸ばす女性。


「どいてっ!!」

 凜は伸ばされた手を避けると、足に霊装を纏い女性に思い切り叩き付ける。

 衝撃音が響き渡る。


 しかし、女性は吹き飛ばない。


 片手の掌で平然と凜の蹴りを受け止めている。

 驚愕したような表情を浮かべる凜。

 しかし、すぐに表情を変え、第二撃を放とうとする。


 だが、女性はその隙すら与えない。


 掴んだ凛の足を持ち上げると、両手で投げ飛ばす。


「きゃっ!?」

 悲鳴を上げて凜が石畳に叩き付けられる。

 次の瞬間、女性は瞬時に身を翻し、背後に蹴りを放つ。


「──うッ!?」

 女性の背後に忍び寄り、その後頭部を狙って拳を振り上げていた実辰は、先に腹を蹴られ吹き飛ばされる。


「くそッ……!」

 充は小さく毒づく。


 敵の全員が強い。

 今の充たちでは敵わない。


 逃げなければ。

 だが、どうやって逃げる。


 敵は手練れだ。

 逃がしてくれるとは思えない。


 どうする。


 充がそんなことを考えていた、その時。


「“C(キャノン)”ッ!」

 心が叫び、戦いを静観していた銀髪の男に突進する。


「“A(アストロ)”ッ!!」

 心は高く跳躍し、空中から男に殴り掛かる。


「なるほど、確かに『速く』、そして『強い』」

 男が迫る心を見据えて言う。

 心の拳が男に激突し、爆音と共に土煙が立つ。


「──だが、それだけだ」

 土煙の中から男の平然とした声が聞こえる。


 やがて土煙が晴れ、何が起きたのか充は理解する。

 男は、心の片腕と頭を掴んで地面に押さえ付けていた。


「心!」

 スズが悲鳴を上げて、駆け寄ろうとする。

 その前に立ちはだかるスキンヘッドの巨漢。


「くっ……」

 悔しそうに唇を噛むスズ。


「離せ!」

「そういう訳にもいかない」

 暴れる心を、銀髪の男は容易く拘束する。


「さて、そちらの君。君は物分かりが良さそうだ。素直に投降してくれるか」 

 心を拘束している男は、充の方を見て言う。


 周りを見る充。


 珠輝。

 凛。

 実辰。

 スズ。


 全員が既に動けない。


 そして、心まで捕まった。

 こちらで動けるのは充だけだ。


 充は目を瞑り、両手を上げる。


「──降参だ」

「おい、充!」

 そこで心が声を上げる。


「まだ、負けてねーだろうが! 戦えよ!」

「無理だ」

 心の言葉に充は首を振る。


「どうしてだよ!?」

「……お前たちが人質に取られている」

「ッ!?」

 そこで心は驚愕したように目を見開く。


「くそ!」

 悔しそうに顔を歪める心。


「思った通りだ。物分かりが良くて助かるよ」

 銀髪の男は、心の腕を縄で縛ると立ち上がる。


「き、貴殿は、まさか……!」

 そこで、無事だった兵士の隊長らしき人物が銀髪の男を見て声を上げる。


「い、『凍てつく炎』、カローレ……ッ!!」

「お役目ご苦労様です」

 カローレと呼ばれた銀髪の男は敬礼をして隊長へ向かって言う。


「この者たちは能力者です。我々魔術騎士団にお任せください」

「りょ、了解した!」

 隊長は敬礼を返すと頷く。


「さて、一緒に来てもらおうか」

 充たちの方へ向き直るカローレ。


「誰が付いて行くかよ!」

「心、大人しく従え」

「ちッ」

 叫ぶ心に充が言うと、心は軽く舌打ちをして顔を歪める。


「こっちだ」

 カローレは背を向けるとさっさと歩き出してしまう。

 充たちは大人しくそれに続いた。




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