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76話 選択

 

 路地から飛び出す充。


 そこは、先程の路地よりも広い通りだった。

 その真ん中あたりで騒ぎは起こっていた。


「おっと!!」

 そこで前を行く心が足を止めた。

 充もその脇で急停止する。


「いきなり走り出すな……!」

 心に向かって強く言う充。

 だが、心はこちらを見ようとしない。

 それを不審に思って心の視線を辿る充。


 心の視線は騒ぎの方へ向けられていた。


「税金を下げろ!」

「この国から出て行け!」

 そこには声を張り上げて叫ぶ一団がいた。


「……あれは、デモか?」

 後から追い付いてきた珠輝が一団を見て目を細める。


『何だか物騒だね……』

 イチヤが一団を見て言う。

 その一団は武装した兵士のような者たちに取り囲まれていた。

 兵士たちに向かって叫び続ける一団。


「出て行け!」

「バベル帝国から、出て行け!!」

「黙れ!!」

 そこで兵士の一人が叫ぶ。


「これ以上反抗すれば罰するぞ!」

「うるせえ!」

「やれるものならやってみろ、クズ共が!」

 だが、一団は叫ぶのを止めない。

 兵士を挑発する者も現れ始める。


「くッ!」

 罵倒を浴びせかけられ怒りに顔を歪める兵士。

 そして口を開く。


「抜剣!」

 その号令にすらりと剣を抜き放つ兵士たち。


「っ……」

 挑発していた者たちも真剣を見て体を震わせる。

 それを見た心が一歩前に出た。


「おい」

 その腕を充は掴む。


「んだよ。離せ」

「問題を起こす気か。大人しくしていろ」

「……ああ?」

 充の方へ顔を向ける心。


「お前は、目の前で人が傷つくのを黙って見てろって言いてーのか?」

「……そうじゃない」

「そういうことだろうが」

 心が充の腕を振り払う。

 そして充を睨み付けた。


『二人とも、今はそんな場合じゃ……!』

「黙ってろ、イチヤ」

 間に入ろうとしたイチヤに心が言う。


「俺たちの目的を忘れたのか。この国に居られなくなったら他の奴と合流出来なくなる」

「んなもん後で考えりゃいい」

「勝手なことを……!」

 心の言葉に顔を顰める充。


「あのな、お前、わかってねーだろ」

「何だと?」

 心が呆れたように言った。

 眉を顰める充。


「仲間と合流する手段ならいくらでもある。でも、人の命は一つしかないんだぜ」

 その言葉に充は顔を歪める。

 そして心に詰め寄る。


「お前に……お前に言われなくても、そんなことは俺が一番よく知っている……!」

「なら、何で動こうとしない? 動かねーのは、お前が他人の命なんざどうでもいいと思ってるからじゃねーのか?」

「お前……!」

 その言葉に激昂する充。

 腕を伸ばし、心に掴みかかろうとする。

 しかし、その腕は途中で止まる。


「お前ら、いい加減にしろ」

 伸ばされた充の腕を珠輝が掴んでいた。


「今は、それどころじゃない」

 そう言い、騒ぎの方へ顔を向ける珠輝。

 我に返りそちらに顔を向ける充と心。


 そこには今にも集団に襲い掛かろうとする兵士たちがいた。 

 それを目にした瞬間、心が走り出す。

 心から目を離していた充がその動きを認識したのは、一瞬遅れてからのことだった。


「おい──」

「“C(キャノン)”ッ!」

 充の制止の声を上げた時、既に地を蹴っている心。

 一気に加速した心は、そのまま一人の兵士に向かって体当たりをする。

 吹き飛び地面を転がる兵士。


「誰だ!」

 一瞬で心に注目が集まる。

 集団に向けていた剣を、今度は心に向ける兵士たち。


「……ちッ!」

 充は舌打ちをし、顔を顰める。

 兵士たちは十数人程度。

 その動きを見る限り、充たちの敵ではない。


 ここで倒すか。

 だが、そうすれば必ず追われることになるだろう。

 そんな状況になれば瑠香たちとの合流は難しくなる。


 ならば、逃げるか。

 その場合、心を連れて行かなければいけない。

 だが、既に心は敵の注意を引き付けてしまっている。


 どうすればいい。


 焦る充の頭の中に、いくつもの考えが駆け巡る。

 それにより、またもや充の反応は一瞬遅れた。


 充の脇を走り抜けるスズと実辰。

 スズが蹴りで、実辰が拳で、それぞれ心に迫る兵士たちを吹き飛ばす。


「お前ら……!」

「充、どうする」

 顔を顰める充に珠輝が訊いてくる。

 充は目を瞑る。


 やるしかない。

 覚悟を決めよう。


「……行くぞ」

「やるの?」

 目を開き、心たちの方へ一歩踏み出す充。

 凛が不安そうに訊ねる。


「ああ、もう手遅れだ。腹を括るぞ」

 充はそう言い、手に銃を出現させると身を屈める。

 そして地を蹴る。


「ぎゃあああッ!」

「な、なんだこいつら、強いぞ!」

 心たちの乱入で一気に混乱に陥った兵士たち。

 その兵士たちを、心たちが蹴散らす。


 充は残っている兵士へ銃を向け、その眉間に向かって発砲する。

 悲鳴さえ上げず吹き飛ぶ兵士。


「こ、殺しちゃったの!?」

 それを見て悲鳴を上げる凜。


「気絶させただけだ。死んじゃいない」

 そっけなく言うと、更に別の兵士を気絶させる充。


「おい、お前ら! 気絶させるだけに止めろよ!」

「わかってる!」

 指示を飛ばす充に、心が振り返らず叫ぶ。

 充は周囲を見回す。

 兵士たちは既にほとんどが地面に倒れてた。


 心が隊長らしき兵士に迫る。

 その時。


 心が立っている場所辺りに、さっと影が差した。


『心ッ!!』

 その瞬間、イチヤが叫ぶ。

 瞬時にその場から飛び退く心。


 次の瞬間。

 何かが轟音と共に空から降ってきた。

 その何かは爆音を立てて地面に衝突する。

 地面が弾け飛び、砂埃が巻き上がる。


「なんだ!?」

『攻撃された! 気を付けるんだ!』

 心が叫ぶと、切迫した声でイチヤが言う。


 充は周囲を見渡す。

 砂埃のせいで視界が悪い。


 このままでは危険だ。

 早くここから逃げるべきだ。

 そう考え、充は他のメンバーに指示を出そうとする。 


 その瞬間だった。


 砂煙の中から、巨大な拳が充の顔面目掛けて迫ってきた。  


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