75話 一方その頃
充は目を開く。
すぐに辺りを注意深く見渡す。
周囲は少し薄暗い。
どうやら、ここは路地らしい。
充は左右の建物を見る。
見たことのない建物だ。
どうやら、転移は成功したらしい。
確認が終わった充は仲間たちの方を見る。
そこで眉を顰める充。
凛。
珠輝。
心。
実辰。
スズ。
そこにいるのは、それだけだった。
「おい、あいつらどこ行った?」
心がすぐに他のメンバーがいないことに気付き声を上げる。
「あ、あれ、みんなは……」
それを聞き不安そうに周囲を見渡す凜。
「……まさか、はぐれたのか?」
顔を顰める珠輝。
「そ、そんな……」
「どうしましょう……」
実辰とスズが不安そうに顔を見合わせる。
「……取り敢えず、状況を整理しよう」
充は仲間たちを見回して言う。
「ここにいないのは?」
「瑠香、一華、隼人、日和、茉菜、リー、ティアだな」
充の問いに珠輝が答える。
それを聞き、充は頷く。
「約半数がここにいないってことか」
「……どうする」
こちらを見てそう訊いてくる珠輝。
充は顎に手を当てる。
瑠香たちがここにいない。
当然探すべきだ。
だが、どこにいるか見当もつかない。
むやみに探し回っても、見つかるとは思えない。
ならば、まずするべきことはなんだ。
「……ここは、どこだ?」
充は疑問を口にする。
「ここがどこかわからなければ、どうすることもできない」
「──それに関しちゃ、大丈夫そうだぜ」
心がそう言う。
そして路地に落ちていた新聞を拾い上げる心。
『そうか、新聞を見れば……』
そこでイチヤが気付いたように言う。
「ああ、どこにいるかくらいは分かるだろ」
心が新聞を開く。
それを覗き込む充たち。
「──バビロニア新聞?」
「昨今、皇都にてデモが多発……?」
新聞を読み顔を見合わせる凛と実辰。
「皆さん、ここ見てください!」
その時、スズが一点を指す。
「バベル帝国、とあります! 私たちの、目的地ですよね?」
その言葉に驚く充たち。
そしてその一点を見る。
そこには、確かに『バベル帝国』と書かれていた。
「さて、ここから読み取れたことを整理しようか」
新聞を見やり、充は言う。
「まず、ここが『皇都バビロニア』と言う場所だとわかった」
充の言葉に頷く珠輝。
「あとは、その街がバベル帝国の首都みたいな場所だってことも」
実辰も新聞を見て言う。
「つまり、俺たちは今バベル帝国にいるってことか?」
『そうだろうね』
首を傾げる心に同意するイチヤ。
「一先ず、俺たちがどこにいるかは分かった。重要なのはこの後どうするかだ」
珠輝が顎に手を当てて言う。
「あいつらを探そうぜ!」
そこで心が声を上げる。
その言葉に実辰とスズも頷く。
「……いや」
だが、充は首を振る。
「今は動くべきじゃない」
「どうしてだよ?」
怪訝そうな顔をする心。
「動き回れば余計に見つかりにくくなるはずだ」
『確かにそうだね。でも、どうするつもりだい?』
イチヤが問い掛けてくる。
「幸いなことに、ここは俺たちの目的地であるバベル帝国だ。ここであいつらが来るのを待つ」
「……確かに、それが一番理にかなっているな」
充の言葉に珠輝が頷く。
「でもよ、あいつらが来る確証でもあるのかよ」
顔を顰めて心が言う。
「大丈夫だ。全員、バベル帝国が目的地だと知っている。あいつらがバラバラにせよ、まとまっているにせよ、いつか合流出来るはずだ」
『心、充の言っていることが正しいよ。大人しく従おう』
「……そうだな」
イチヤに諭され心は素直に頷いた。
「よし、今後の方針は決まったな」
充は頷くとメンバーの顔を見回す。
「さて、次にどうするかだが……」
「出来る限り情報を集めよう。ここは異世界だ。何が起きるかもわからない」
充が言うと、珠輝が声を上げる。
その言葉に頷く充。
そして口を開こうとする。
その時だった。
路地の入口の方から怒号が聞こえてくる。
「なんだ!?」
即座に走り出す心。
「おい、待て!」
充は止めようとするが、心は止まらない。
「ちッ、行くぞ!」
軽く舌打ちをした後、心を追うために充は走り出した。




