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72話 酔っ払い質問会

 

「ヒック、何かぁ、聞きたいことがあったらぁ、教えてぇ、あげてもぉ、いいれすよぉ?……ヒック!」

「……あの、フェイルさん……?」

「……ぅん? なんれすか?」

 瑠香は呆然として呟く。

 赤い顔をしたフェイルがこちらを向く。

 呂律が回っていない。


 食堂にて夕食をとった瑠香たち。

 夕食は、これまた豪華なものだった。


 大満足して瑠香たちは部屋に戻った。


 それからしばらくしてのことだ。

 いきなり部屋の扉がバンッと開き、フェイルが一人で中に入ってきたのだ。


 フェイルは片手に酒瓶を抱えており、その顔は朱に染まっていた。


 完全に酔っぱらっている。


 部屋に入ってきたフェイルはそのままソファにドカリと座り込み、酒を飲み始めてしまったのであった。

 普段の生真面目なフェイルからは想像できない姿に困惑する瑠香たち。


「……どーするよ?」

「どうしよう……」

 頭を掻くリー。

 困ったように日和が言う。


 瑠香たちは困り果てて顔を見合わせる。


「ウィスターさんを呼んできますか……?」 

 茉菜が小声でそう提案する。

 その名案に瑠香が頷こうとした時。


「……いや、待て」

 隼人が声を上げる。


「いい機会だ。いろいろ教えてもらおうぜ。俺も知りたいことあるし」

 その言葉に顔を見合わせる瑠香たち。


 確かに、いい機会かもしれない。

 だが、本当に良いのだろうか。


「でも、そんな騙すようなこと……」

「いいだろ。本人が教えてくれるって言ってるんだし」

 一華の言葉に肩を竦めてそう返す隼人。

 そしてフェイルの方へ顔を向ける。


「なにをぉ、こしょこしょと話してるんれすかぁ?」

「いや、別に。それより、質問していいか?」

「いーれすよ」

 隼人の言葉に、ケラケラと笑って答えるフェイル。


「あんたが持ってたあの燃える剣、ありゃなんだ?」

「あー、『火炎剣(ファイア・ソード)』のことれすか? あれは『魔道具(まどうぐ)』れす」

 腰に手を伸ばしそう答えるフェイル。

 しかしその手は空振りする。

 フェイルの腰に剣は下げられていない。

 やがてそれを思い出したのか笑い声を漏らすフェイル。


「魔道具? ってなんだよ?」

「はぁ? 何で魔道具も知らないんれすかぁ? 馬鹿なんれすか?」

「異世界から来たからだよ!」

「あはは!」

 口を曲げる隼人に腹を抱えて笑うフェイル。


「魔道具は『魔術』が付与された道具れす。魔術を使えない一般人でも使えます」

 酔っぱらいながらもフェイルはきちんと説明してくれる。


「なあ、この世界に来てから何回も聞いてたが、『魔術』ってなんだ?」

「魔術も知らないんれすか? 本当に馬鹿なんれすね」

「だ、か、ら! 異世界から来たからって言ってんだろ! いちいちムカつくな!」

 舌打ちをして言う隼人を見て、楽しそうに笑うフェイル。


「『魔術』ってのはこの世界の誰でも使える力れすよ。理論上ではなんれもできます」

「へえ、便利なんだなぁ!」

「れすが、発動には魔法陣などの媒介が必要になります。ので、戦闘向きではないれす」

 目を輝かせる隼人にフェイルが言う。


「ウィスターさんたちも魔術を使えるんですか?」

 そこで茉菜が訊ねる。


「はい! ウィスター様は、最高の魔導師なんれすよ! ウィスター様の操る魔導は素晴らしいのれす!」

 ソファの上に立ち上がりフラフラと天に指を突き立てるフェイル。


「ちょい待ち、『魔導』って魔術と何か違うの?」

 リーが立ったままのフェイルに訊く。

 それを聞き、すとんとソファに腰を下ろすフェイル。

 そしてピッと指を立てる。


「いい質問れすね。先程、魔術の発動には媒介が必要になると言いました。れすが、魔導の発動にはそれがいりません」

「え、なら、みんな魔導を使えばええやん」

 フェイルの言葉に眉を吊り上げリーが言う。

 しかし、フェイルは首を横に振る。


「無理れす。魔導を使うためには、理論を完璧に理解して、魔法陣を記憶する必要があります。なので、一般人には扱えません。私もまったく使えません」

「へえ。なら、それを使えるウィスターさんってすごいんやなぁ」

「そうなのれす!」

 感嘆したように言うリーに上気した顔を向けるフェイル。


「しかも、ウィスター様はとてもたくさんの魔導を使えるのれすよ!」

「へえ、すごいんですね」

 日和が驚いたように言う。


「それだけれはありません! ウィスター様はとてもお優しく、とてもお強いのれす!」

 胸の前で手を組みそう言うフェイル。

 その顔が赤いのは、酒のせいだけではないだろう。


「好き、なんですか……?」

 瑠香は目を輝かせるフェイルにそっと問う。


 その言葉にハッとしたような顔をするフェイル。

 そしてぶんぶんと頭を振る。


「そんな、私なんかが……それに、身分が違いすぎます……!」

「でも、人を好きになる気持ちに、身分とか関係ないじゃないですか」

 瑠香の言葉に顔を上げるフェイル。


「そう、かしら……」

「ええ、そうですよ!」

 拳を握り、瑠香は力強く言う。


「好きなら、好きって言わないと! それでだめなら当たって砕けろ、ですよ!」

「瑠香、言ってることむちゃくちゃ……」

 一華が苦笑して言う。


「そう、そうね! あなた、良いこと言いますね! 当たって砕けろ!」

「はい!」

 フェイルと頷き合う瑠香。


 しかし、すぐにガクリと肩を落とすフェイル。


「でも、ウィスター様はあの誰かもよくわからない女を護衛に……私ではご不満なのれすか!?」 

 ドン、とテーブルを叩くフェイル。

 その言葉に首を傾げる瑠香たち。


「その女の人って……?」

「レイナれすよ! あの異世界から来たという得体の知れない女れす!」

 その言葉に納得する瑠香たち。

 段々とウィスターたちの関係がわかってきた。


「どうして、ウィスターさんはレイナさんを護衛に?」

「さあ、分かりません。あの子が強いのは、まあ認めますけど……」

 ブツブツと呟くフェイル。


 瑠香はそこで疑問に思う。


 フェイルやレイナを護衛に付けている用心深さ。

 そして、フェイルの話から伺える身分の高さ。


 ウィスターは一体何者なのだろうか。


「あの、フェイルさん」

 瑠香はフェイルに話しかける。


 一度聞いてみてダメだった質問。

 今なら、聞き出せるかもしれない。


「ウィスターさんは何者なんですか?」

 問いを口にする瑠香。


「言えません」

 しかし、フェイルは首を振る。


「言えば私の首が飛ぶだけでは済みません。場合によってはウィスター様に危険が及ぶ可能性があります」

 きっぱりと言うフェイル。

 そのままフェイルはソファに倒れ込む。

 慌ててその顔を覗き込む瑠香たち。


「……むにゃ」

「寝ちゃったにゃ」

 ぽかんとしてティアが言う。

 顔を見合わせる瑠香たち。


 その時だった。


 ノックの音が響く。


「は、はい!」

 急いで扉を開ける瑠香。


「夜分遅くに失礼する」

 そこにいたのはウィスターだった。


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