48話 帰還
『緊急事態発生。危険を察知しました。直ちに『強制帰還装置』を起動します。装着者は転移に備えてください。繰り返します──』
突如として起動した『強制帰還装置』。
実辰は慌てて辺りを見渡した。
だが、危険が迫っている気配はない。
珠輝の指輪も同じ音声を発している。
今、実辰たち四人は近くの町に向かって歩いていたところだ。
その途中、いきなり『強制帰還装置』が作動したのだ。
実辰と珠輝の体が光に包まれる。
「珠輝、これって!」
「ああ、帰れるみたいだ」
実辰に頷き掛ける珠輝。
そして、リーとティアの方に向き直る。
「お前たちはどうするんだ?」
「え? 一緒に行くけど?」
珠輝の腕を掴むリー。
「私も私も!」
それと同時に、ティアが実辰に抱きつく。
「どうするつもりだ?」
訝し気に問う珠輝。
「知らんの? 転移者の体に掴まると一緒に移動できるんやで」
「え、そうなの?」
リーの言葉に驚く実辰。
初耳だ。
「そ。だからこうして掴まってるのにゃ」
実辰の体にぐりぐりと顔を押し付けながらティアは言う。
「ちょ、くすぐったい!」
実辰は悲鳴を上げる。
それを見て呆れたような顔をする珠輝。
「転移した後、どうなるかわからない。気を引き締めていくぞ」
「はいよ」
「うん」
「わかったにゃ!」
頷く実辰たち。
そして、光が一際大きく輝くと。
目の前が真っ暗になった。
実辰は反射的に目を瞑る。
そして、目を開く。
隣を見ると、目を瞬かせたティアと目が合う。
辺りを見渡すと、珠輝とリーもいた。
「みんな、一緒に転移できたみたいだね……」
「ああ」
実辰の言葉に頷く珠輝。
「それにしても、ここどこだにゃ?」
辺りを見渡すティア。
実辰も辺りを見渡す。
恐らく、『異能世界』だろう。
しかし、少し暗い。
上を見上げて実辰は納得した。
天井がある。
「ここは、地下街、か?」
珠輝も上を見上げて言う。
「取り敢えず、外に出る道を探そうや」
「待て、リー」
歩き出そうとするリーを珠輝が止める。
「なんや?」
「……人が、誰もいない」
辺りを見渡す珠輝。
確かに人の姿は見えない。
いくら地下街とは言え、これはおかしい。
「人がいないのがそんなに変かにゃ?」
「見ろ、明かりがついてる」
電灯を指差す珠輝。
言われてみればそうだ。
人がいないのに、明かりだけついてる。
とても不気味だ。
と、その時。
静かな地下街の中に、複数の足音が響く。
どんどんと近付いてくる足音。
目を凝らして道の先を見る実辰。
すると、何人かの人がこちらに向かってきているのが見えた。
「よかったやん。人いるで」
「──いや、様子がおかしい」
リーが言うと、珠輝が首を振る。
相手も実辰たちを見つけたのか、片手を上げる。
その手に握られていたものを見て、実辰は息を呑む。
ナイフだ。
「マズい、逃げるぞ!」
踵を返して逃げ出そうとする実辰たち。
だが。
「ちッ!」
珠輝は舌打ちをする。
後ろからも、別の一団が迫っていたのだ。
逃げ道が塞がれた。
「どーする?」
小声で珠輝に訊くリー。
「意思疎通ができるか試してみる」
珠輝はそう言うと近付く一団に向かって声を張り上げる。
「おい、あんたたち! 何が目的だ!?」
それを聞き、足を止める一団。
「お前ら、ヒーローの試験受けただろ?」
一団の先頭に立った男がそう言う。
「ああ、受けたが、それがどうした?」
珠輝は怪訝そうな顔をする。
「そうか。なら、問題ねえよ。──ぶっ殺せ!」
叫ぶ男。
それが合図となり、雄叫びを上げ走り出す一団。
前後から迫る一団。
「ちッ! やるぞ!」
顔を顰め、叫ぶ珠輝。
実辰たちも即座に戦闘態勢に移る。
「前の奴らは俺とリーが! 実辰、ティア、後ろは頼んだ!」
「りょーかい!」
「わかった!」
「合点だにゃ!」
珠輝の横に並び立つリー。
二人の背後に、背中合わせになるように立つ実辰とティア。
「〝砂塵の悪魔〟!」
珠輝が叫び、地面に手を突く。
「“波砂”!」
地面がうねり、砂の波となって一団を飲み込む。
「ミトキ!」
「うん!」
ティアと頷き合う実辰。
「〝絶対零度〟!」
そう叫び、迫る一団に掌を向ける実辰。
「“氷牙”!」
地面から氷が生え、向かってくる一団を襲う。
氷の向こう側で悲鳴が聞こえる。
だが。
氷に罅が入り、砕け散る。
体が硬質化した者。
腕がドリルのようになっている者。
手が巨大化した者。
異能を宿した者たちが、氷を突き破ってくる。
そうだった。
もしここが『異能世界』であるならば。
当然、敵も異能を持っている。
しかも、全員が戦い慣れしている。
試験で相手をした者たちとは違う。
ユナイテッドの規則を無視し、異能を使った戦いを経験している者たち。
恐らく、この一団は異能犯罪者たちだ。
「にゃあっ!」
ティアが走り出し、霊装を纏った拳や足で異能犯たちを薙ぎ倒す。
実辰は幽眼を使い、襲撃者たちを見る。
霊装は纏っていない。
魄の使い方もお粗末だ。
ならば、やり様はある。
実辰も走り出し、拳に霊装を纏った。




