41話 優しくしてあげて
「瑠香が、魄練を?」
ミシェルから瑠香の様子を聞いていた充は、思わず聞き返す。
「うん、使えるみたい。知ってた?」
「いいや」
首を振る充。
この前の一件以来、ミシェルとの間には気まずい空気が漂っていた。
今も、微かな緊張感がその場に存在している。
「そっか……ねぇ、充くん?」
「……なんだ」
「もしかして、瑠香ちゃんは『人柱』なの?」
「っ!?」
充はミシェルの言葉に息を呑む。
その反応を見て、顔を伏せるミシェル。
「そう、あの子も、なのね……」
「なぜ、お前がそれを──」
「ね、充くん」
問い質そうとする充を遮ってミシェルは言う。
「あの子に、優しくしてあげて」
「……なんだと?」
眉を顰める充。
「裏切らないであげて。利用しないであげて。──あなただけは、優しくしてあげて」
「なぜ、お前にそんなことを──」
言われなくてはならないんだ。
そう続けようとした充は思わず言葉を止めた。
「私は『人柱』の末路を知っている。裏切られ、利用され、そして──死ぬ」
そう言うミシェルの目が、あまりにも悲痛だったからだ。
「誰も、逃げられないわ。あの子の、あなたの敵は、あなたが思う以上に強大よ」
「──お前に、何がわかる」
「わかるわ。見てきたもの」
そう言い、俯くミシェル。
「だから、大切にしてあげて。あの子が、せめて最期まで笑顔でいられるように」
「何を言って──」
「約束して」
充の言葉を遮り、ミシェルは充を見据える。
「お願い。約束、して?」
まるで懇願するかのように。
ミシェルは充に言う。
それに息を詰まらせる充。
「──わかった」
顔を背け、そう言う充。
それを聞いたミシェルは、少し悲しそうに微笑んだ。




