38話 『魄練』
「瑠香ちゃん、『霊装』の『内側』を」
「はい」
ミシェルに言われ、体の内側に魄を集中させる瑠香。
「次は、『霊装』の『外側』を」
「はい」
次は体の外側に魄を集中させる瑠香。
「よし、これで『霊装』は完成だね」
満足げに頷きながらミシェルは言う。
昨日は一日中この『霊装』の特訓をしていた。
「これからも『霊装』の特訓は怠らないでね」
「わかりました」
頷く瑠香。
「じゃ、次は『魄練』だね」
ミシェルが言う。
「『魄練』を完成させるのは難しいから、気長にやってこ」
「その『魄練』っていうのは何ですか?」
瑠香はミシェルに訊く。
「簡単に言えば『固有の技』かな。例えば充くんの銃を作り出すあれとか。能力者の数と同じだけ種類があるよ」
「あれ?」
ミシェルの言葉に瑠香は首を傾げた。
「どした?」
「あの、ミシェルさん。私、それ使えると思います」
「ええ?」
怪訝そうな顔をするミシェル。
「そんなはずは……だって『心体技』も『霊装』も知らなかったんでしょ?」
「はい」
頷く瑠香。
「それだと『魄練』は出来ないはずなんだけど……」
「でも、出来ますよ?」
そう言い、瑠香は掌に炎や砂、風や光を出現させる。
絶句するミシェル。
「こ、これは……」
「これじゃないんですか?」
「いや、これは間違いなく『魄練』。しかも、相当練度が高い。でもどうして……」
ぶつぶつと呟いてるミシェル。
「ある日、突然使えるようになったんです」
瑠香はそう言う。
その言葉にハッとするミシェル。
「瑠香ちゃん、あなた、まさか……」
そこまで言い、首を振るミシェル。
「ううん、まさかね」
「どうしたんですか?」
「いいや、なんでもないよ。それより能力の名前とかは? もう決めてあるの?」
「はい、ありますよ。〝比類なき贋作〟です」
瑠香の、その言葉を聞いた時。
ミシェルの顔が再び驚愕に彩られる。
「──そんな、それは、『あの人』の……」
「ミシェルさん?」
「……その能力は、もしかして『模倣能力』だったりする?」
ミシェルが瑠香に問う。
頷く瑠香。
世界軸から貰ったこの能力、〝比類なき贋作〟。
それは、他人の能力の『模倣』だ。
条件はいくつか存在する。
まず、能力を直接見ること。
そして、どんな能力か知っていること。
だから瑠香は、仲間である凜たちの能力が使えるのだ。
額に手を当てるミシェル。
「そんな、どうして、あなたが……」
様子のおかしいミシェル。
「ミシェルさん、大丈夫ですか?」
「──瑠香ちゃん」
瑠香の肩を掴むミシェル。
その手に込められた力に瑠香は驚く。
「は、はい」
「〈灰燼旅団〉に気を付けて」
聞き覚えのない言葉に困惑する瑠香。
「あなたがその能力を持っていると知ったら、あの人たちは、あなたを……」
そこで顔を歪めるミシェル。
その顔は、なんだかとても悲しそうだった。
「──あなたを、殺そうとするかもしれない」
その言葉に息を呑む瑠香。
「だから、気を付けて」
有無を言わせぬその声音に、思わず頷く瑠香。
しばらく、瑠香の瞳を見つめるとミシェルは立ち上がった。
「今日の訓練はこれでお終いね」
「は、はい、ありがとうございます」
頭を下げる瑠香。
扉が閉まる音がする。
「ねえ、世界軸?」
ミシェルがいなくなったの確認して瑠香は世界軸に声を掛ける。
だが、世界軸からの返事はない。
「世界軸?」
心配になり、再度呼びかける瑠香。
『──お、悪い、寝てたわ』
そう返事をする世界軸。
「もう、心配したんだからね」
『悪い悪い』
軽い口調で言う世界軸。
「それより、〈灰燼旅団〉って知ってる?」
瑠香は、先ほどミシェルから聞いた言葉を世界軸に訊ねてみる。
しかし、世界軸はすぐには答えなかった。
「世界軸?」
『──知らねえな』
沈黙の後、そう言う世界軸。
「そっか、世界軸でも知らないことがあるんだね」
少し残念になる瑠香。
『……ああ、あるぜ』
「ごめんね、変な事聞いちゃって」
『いや、別にいいさ。俺とお前は『相棒』、だからな』
「そうだね」
そう言うと瑠香は笑った。




