35話 『技』
「なんや、二人とも『技』使えてるやん」
珠輝と実辰を見て、リーがつまらなそう言う。
「その、『技』っていうのは?」
実辰がリーに訊く。
「『心体技』の最後の段階のこと。その名も『魄練』や」
「『魄練』って言うのはなんだ?」
「『心』と『体』を極めた先に使える技のことや。習得難易度はかなり高くて、天才でも優に数年はかかるらしいで」
珠輝の問いに、指を立てて答えるリー。
「で、その習得が一番面白いってのに。──なんで二人とも使えるんや。つまんなぁ」
遂に本音が漏れるリー。
「しかも、ティアに至っては『心体技』、ぜーんぶ習得済み。なんやねん」
溜め息を吐くリー。
「んにゃ? 呼んだかにゃ?」
猫のように丸まっていたティアが、目を擦りながら起き上がる。
「そういや、キミの『魄練』なんなの? 見てみたいんやけど」
「ダーメ。必要な時まで取っとくのにゃん」
「なんや、ケチやなぁ」
この二人、案外仲がいい。
今も、息の合った掛け合いをしている。
珠輝と実辰は今、『心体技』の特訓中だ。
教えてくれているのはリーだ。
『心』と『体』を早々に習得した二人だが、最後の『技』の習得で衝撃の事実が発覚したのだ。
珠輝の『砂』や、実辰の『氷』が既に『技』だったのだ。
『技』を極めることによって得られる『魄練』という技は、習得にとても時間が掛かるらしい。
恐らく、珠輝が『魄練』を習得出来ていたのは『人柱』であるからだろう。
だが、何故実辰も使えるのかはわからない。
「もう、『心体技』全部終わったし……あとは実戦訓練のみやなぁ」
頭を掻くリー。
「そういや、タマキ。最初に会った時のこと覚えてる?」
唐突に珠輝に訊くリー。
「殴り合ったことか? 覚えてるぞ」
「え、そんなことしてたの……?」
少し引いたように言う実辰。
「男の友情ってやつだにゃあ」
そこで口を挟むティア。
「そうそう、それで最後の、あの体を砂にしたの、どうやったん?」
興味津々という感じで訊いてくるリー。
「あれは、自分の体が砂になるイメージをしたんだ」
「今、できる?」
「やってみる」
そう言うと珠輝は目を閉じる。
あの時の感覚を思い出す。
自分の体が崩れていく感覚。
「おお……」
「え、すごい」
「にゃんだぁ?」
三人の感嘆の声を聞き、目を開ける珠輝。
「どうだ?」
「すごいで! あの時は一部だったけど、今は結構な範囲が砂になっとる!」
そこで珠輝は砂化を切る。
今の短時間でかなり体力を消耗した。
「それで、これがどうかしたのか?」
リーに訊ねる珠輝。
「“自然体”、だにゃあ」
しかし、それに答えたのはティアだった。
「それはなんだ?」
「自然を作り出し、自然を操る。そして更に、自身の体を自然に作り変える。なかなかお目に掛かれない珍しい能力なんだにゃ」
「それに、強いんや。普通の攻撃はなんも効かんからな」
リーがその後を引き継いで言った。
「ま、ボクもミトキも自然を操る能力やから、出来なくないはずなんやけど……習得がむずいんよ」
肩を竦めるリー。
「それが珍しいって言われる由縁なんだろうけどにゃ」
そう締めくくるティア。
「わたしもこれを……」
珠輝を尊敬の目で見る実辰。
「さ、ちゅうことで早速やろうや」
リーは立ち上がり伸びをすると言った。
「えっと、何を?」
怪訝そうな顔をする実辰。
「実戦訓練。『霊装』も『幽眼』も『魄練』も、ちゃんと実戦で使えるものにしとかんと」
そう言い、珠輝たちを急かすリー。
「ほら、ティアにも手伝ってもらうで」
「は~い、分かったにゃん」
そう言い立ち上がるティア。
珠輝と実辰も立ち上がってリーの後に続いた。




