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26話 危機一髪

 

「食エ」


 大量の食べ物を前に、隼人は困り果てていた。

 どうしてこうなったのだろか。


 ユナイテッドの試験に合格した後、転移が出来る水晶玉に触れた隼人。

 しかし、転移した先はユナイテッドの本部などではなかったのだ。


 見渡す限りの密林。

 天を衝くかのような峰々。

 そして時折響く、不気味な鳴き声。


 『秘境』と呼びたくなるこの世界は、恐らくユナイテッドと同じ世界ではない。


「じゃあ、異世界ってことなのかなぁ」

 なんだかよくわからない生物の丸焼きを頬張りながら隼人は呟く。

 この食事を用意してくれたのは、蛮族のような恰好をした者たちだ。


 どうやら、転移の衝撃で気絶した隼人をテントに運び、介抱してくれたようだ。

 目が覚めた隼人を待っていたのは熱烈な歓迎だった。


 次々を運ばれてくる食べ物。

 だが、どれも料理と呼べるようなものではない。


 得体の知れない肉は焼いただけ。

 これまた正体不明の野菜らしき物に至っては生のままだ。


 この世界の文明はそれほど進んでいないのかもしれない。


「モット、食エ」

 たどたどしく言う部族の男。


 どんどんと増えていく食べ物たち。

 正直、もう食べれない。


「あー、俺もういいや。お前らも食えよ」

 土で作られた容器を押しやり、身振り手振りを交え隼人は言った。


 そのジェスチャーの意味を理解したのか、食べ物が下げられていく。

「ユックリ、シテロ」

 そう言ってテントを出ていく男。


 テントに一人取り残される隼人。


「さて、これからどうするかな」

 隼人は軽く伸びをする。


 まずやるべきことは、この世界からユナイテッドに帰還する方法を探すことだ。

 だが、現地の人間とまともにコミュニケーションが取れない以上、聞き込みは出来ない。


 更に言ってしまえば、この世界の文化レベルは低い。

 転移結晶など、あるかもわからない。

 なかなか、厄介なところに来てしまったものだ。


「……ちょっと眠ぃな」


 満腹になったからか、急激な眠気に襲われる。

 部族の男もゆっくりしていいと言っていたので、少し眠ることにしよう。


 横になり、目を閉じる隼人。

 そうして隼人は意識を手放した。





 パチパチという音が聞こえる。

 焦げ臭い。


 隼人は目を開く。

 周囲は暗くなっている。


 目の前で大きな火が燃えている。

 煙が目に沁みる。

 瞼を擦ろうとする隼人。

 そこで隼人は気が付く。


 ──手が動かない。

 体を見ると縄のようなものでぐるぐる巻きにされていた。

 更に両手両足も縛られている。

 そして柱のようなものに結び付けられているようだ。


 下を見ると足元に木の枝が積み上げられている。


「なんだこれ?」


 その時、暗闇に仮面が浮かび上がる。

 さらに、体が見えてくる。

 その恰好は先ほどの蛮族たちのものだ。


 それを皮切りに周囲の暗闇から人影が歩み出る。

 皆、仮面をつけている。


 蛮族たちは隼人と焚き火の周りを囲むと、ぐるぐるを回りながら何かを唱え始める。

 とてつもなく不気味だ。


「──ひょっとして、ヤバいか?」


 隼人は身をよじり、縄から抜け出そうとする。

 だが、固く結ばれていてびくともしない。


 そうしている内に、一人の蛮族が輪の中に入ってくる。

 その者は焚き火に向かうと手に持った棒に火を移した。

 そして、今度は隼人の方に歩てくる。


 その手に握られた松明を見て嫌な予感がする隼人。


 早く逃げなくては。


 だが、縄は固い。

 食べ物に何か仕込まれたのか、体に力が入らない。


 どうすれば。

 そこで、隼人は思いつく。


 一か八かだが、やるしかない。


 更に、近付いてく来る蛮族。


 隼人は足の裏に意識を向ける。



 松明の火が届きそうになったその時。


「噴射!!」


 隼人の足の裏から風が噴出される。

 隼人を括り付けている柱が、スポッと地面から抜けた。

 柱ごと吹き飛んで行く隼人。


 縄で縛られたまま、芋虫のような状態で空を飛ぶ。

 下から蛮族たちの怒りの叫び声が聞こえた。


「うお、マジで危なかったぜ。まさに、間一髪だ」


 風を噴射し続けながら隼人は溜め息を吐く。



「取り敢えず、このまま遠くまで行って、安全なところで降り……」


 そこで隼人は重大なことに気が付く。



「──やっべ! これ! どうやって着地すりゃいいんだ!?」



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