200話 守ったもの
「そうだ。お前ら、この後暇か?」
話が一段落着いた後、シルトが瑠香と充に問う。
それを聞いて顔を見合わせる二人。
「特に予定はないですけど……」
「俺もだ」
そう言う二人に破顔するシルト。
「そうか、実は俺の嫁さんがお前たちに会いたいみたいでよ。もしよかったら俺の家に来てくれないか?」
「私はいいですよ」
頷く瑠香。
そして隣の充を見る。
「いや、俺は……」
しかし、充は首を振って断ろうとする。
そんな充に頬を膨らませて瑠香はその腕をつかむ。
「もー、一緒に行くよ!」
「いや、だが──」
「行くの!」
それでも渋る充の腕を引っ張って瑠香は言う。
その強引さに諦めたようにため息を吐く充。
「……わかったよ」
「よし」
しぶしぶそう言う充に、ぞんざいに頷く瑠香。
その二人を見て、少し眩しそうな目をするシルト。
「若いっていいなぁ」
「おじさん臭いですよ」
「まあ、実際おじさんだしな」
瑠香の言葉に頭を掻きながらシルトは踵を返す。
「んじゃま、付いてきてくれ」
そのまま歩き出すシルトの後を追う瑠香と充。
シルトの家はショッピングモールからさほど離れていない場所に建っていた。
立ち並ぶ家々の中にあるごく普通の家。
その家の玄関を開け、瑠香達を手招きするシルト。
瑠香達はそれに従う。
シルトが扉を開けた瞬間、廊下の向こうから、とてとてとてという足音と共に小さな女の子が姿を現す。
「ぱぱ、おかえりー!」
元気よく駆けて来たその女の子は、シルトの後ろに瑠香達を見つけると一瞬硬直する。
その後、綺麗に回れ右して元来た道を駆けていく。
「ままー! しらないひとがいるー!」
「あらあら」
少女の後から姿を現した綺麗な女性がその体を抱き上げる。
「シルト君、お帰り。その子たちが……?」
「おう、連れて来てたぞ」
女性が首を傾げて瑠香達を見る。
瑠香と充を前に押し出して言うシルト。
「こんにちは」
ぺこりと頭を下げる瑠香。
それを見てにっこりと笑う女性。
「こんにちは。私はリーナ。よろしくね」
「あ、私たちは──」
「知ってるわよ。瑠香ちゃんと充君でしょ? うちの旦那がお世話になっています」
慌てて名乗ろうとする瑠香を遮ってリーナと名乗った女性は言う。
「君たち、すごく強かったんだってね。こんなに小さいのにすごいわねぇ」
瑠香達を見ておっとりと微笑むリーナにシルトが呆れたように言う。
「なあ、立ち話もなんだし……」
「あら、ごめんなさい。すぐお茶入れるわね。どうぞ上がって行って!」
そう言ってパタパタとスリッパを鳴らして行ってしまうリーナ。
「お、お邪魔しまーす」
シルトが用意してくれたスリッパを履いて家に上がる瑠香と充。
「おう、自分の家だと思ってゆっくりしていけ」
笑ってシルトがそう言った。
「へえ、そんなことが……」
リーナが用意してくれたお茶を飲みながら瑠香達の話を聞くシルト夫妻。
「お前たち、異世界から来たのかよ。言ってくれてもいいのに」
「訊かれなかったので」
ぼやくシルトにそう返す瑠香。
シルトの隣でくすくすと笑うリーナ。
と、その時。
瑠香の袖がくいくいと引っ張られる。
「ん?」
それにつられて自分の足元を見る瑠香。
そこには、人形を胸に抱いたニーファがいた。
「……おねえちゃん、あそぼ?」
「こら、ニーファ。無理言っちゃダメでしょ」
無邪気にそう言うニーファにリーナが言う。
それに首を振って瑠香は言った。
「大丈夫ですよ! 小さい子の相手は慣れているので!」
そう言い瑠香はニーファに目線を合わせて言う。
「ニーファちゃん、何して遊ぼっか?」
そう言う瑠香にパッと顔を輝かせるニーファ。
「じゃあ、おままごとしよ!」
「うん! そうしよっか!」
笑って言うニーファに満面の笑みで答える瑠香。
「……あ、あの……」
そこで瑠香の陰から顔を覗かせてニーファは充を見た。
「お、おにいちゃんも、いっしょに……」
「え」
戸惑ったような声を上げた充の腕を掴んで瑠香は笑う。
「うん、お兄ちゃんも一緒だよ!」
「ちょ、瑠香!?」
驚いたように言う充に瑠香は顔を近付ける。
「合せて……!」
そう言う瑠香に諦めたように頷く充。
「うーん?」
そんな二人を見て首を傾げた後ニーファはにっこりと笑う。
「おねえちゃんとおにいちゃん、なかよしさんだね!」
「うん、そうだよー! お姉ちゃんたちは仲良しだよ!」
そう言う瑠香に更ににっこりと笑うニーファ。
「じゃあ、おねえちゃんがママ役で、おにいちゃんがパパ役ね!」
「「え」」
その言葉に同時に硬直する瑠香と充。
それを見たシルトとリーナは、何かを察したようなしたり顔で笑い合うのだった。
この話で第四章は完結となります。
続く第五章もよろしくお願いいたします。




