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198話 おかえり

 

 瑠香が入院してから一週間が経ったある日のこと。

 その日、瑠香は退院することになっている。

 

 世界軸の言う通り、骨折や体にできた傷はものの数日で完治してしまった。

 医者は驚いていたが、瑠香も驚いた。

 まさか本当に完治するとは思ってなかったからだ。

 

 しかし、体は前と同じように動く。

 なので、それから数日様子を見た後、退院ということになったのだ。

 

 病室を出ると、充が迎えに来てくれていた。

 

「おはよ、充。お迎えありがとう」

「ああ」

 微笑んで言う瑠香に、特に何も言うことなく頷く充。

 前と変わらない、そんな充に思わず苦笑した後、瑠香は首を傾げた。

 

「あれ、みんなは?」

「家で待機してる。あまり大勢で行っても邪魔になるからって、アレンが俺だけ来させたんだ。凛とかは渋ってたけどな」

 それだけ言うと、充は踵を返す。

 

「行くぞ。ここから家まで少し遠いからな」

「どうやって帰るの?」

「バスに乗る」

 そう言って歩き出す充を瑠香は小走りで追いかけた。

 

 

 病院からバスに乗り、二十分ほどかけて家に到着した瑠香たち。

 

 

「わぁ、ここに帰ってくるの久しぶり」

「そうだな」

 敷地に入りそう言う瑠香に頷く充。

 しかし、そう言いながらも特に感慨もなさそうにスタスタと歩く充に瑠香は頬を膨らませる。

 

「もー、風情がないなぁ」

「必要ないだろ」

 そっけなく言う充に、瑠香は唇を尖らせる。

 

「ほら」

 玄関の扉を開けて瑠香を見る充。

 

「うん」

 瑠香は頷き、扉をくぐる。

 

「ただいまー……」

 そう言う瑠香。

 しかし、迎えは誰もいない。

 それどころか、電気がついておらず、真っ暗だ。

 

 

「あれ?」

 首を傾げ、充を見る瑠香。

 充も不思議そうに首を傾げている。

 

「なんでこんな暗いの?」

「さあ」

 尋ねる瑠香に、首を振って言う充。

 

「みんなー?」

 仲間に呼びかけながら暗い廊下を歩く瑠香。

 リビングの扉の前に立ち、扉を開く。

 

 リビングも電気がついていない。

 

「……あれ?」

 瑠香が再び首を傾げようとした、その時。

 

 いきなり、パッと部屋の電気がついた。

 その瞬間、パンパンッ、と破裂音が鳴る。

 

 そして。

 

「「「「瑠香、退院おめでとう!!」」」」

 そんな歓声と共に仲間たちが飛び出してくる。

 

「え、え?」

 クラッカーから出た紙吹雪に全身を包まれた瑠香は呆然と立ち尽くす。

 

「ほらほら、瑠香ちゃん、こっちこっち!」

 凛が手を引いて、瑠香を椅子に座らせる。

 

「ほい!」

 心が『今日の主役』と書かれたタスキを瑠香に着せる。

 

「ほれ!」

 隼人がパーティー用の派手な帽子を瑠香にかぶせる。

 

「はい!」

 実辰が空のグラスを瑠香に持たせる。

 

「どうぞ」

 その空のグラスに、茉菜が飲み物を注ぐ。

 

「じゃ、瑠香、乾杯の音頭を」

 グラスを手に持ったアレンが瑠香に向かって言う。

 

「え、え、え?」

 未だ状況について行けず、唖然とした顔で周りを見る。

 仲間たちの期待に満ちた顔が見える。

 

 困ったようにリビングの入り口に立つ充の方を見る瑠香。

 瑠香と視線が合った充が、肩を竦めて頷いた。

 

「そ、それじゃ、かんぱーい……」

「「「「「かんぱーい!!」」」」」

 瑠香の情けない音頭に、全力で応える仲間たち。

 

「よーし、食え食え!」

「よっしゃあ、飯飯!」

「うおおおおお!」

 その瞬間、がつがつとテーブルに並んだ料理を食べ始める隼人、心、リー。

 

「あんたたち! 瑠香の分残しときなさいよ!」

「そうだぞ……って聞いてないな」

 そんな三人を呆れたように見る日和と珠輝。

 

「瑠香ちゃん、大丈夫だった?」

「怪我はもう大丈夫なの?」

「痛くなかった?」

 凛、一華、実辰が口々に瑠香に訊いてくる。

 

「まあまあ、皆さん、そんな同時に訊いたら瑠香も困っちゃいますよ」

 それを宥めるスズ。

 

「そうにゃん! 瑠香に今一番必要なのは栄養なのにゃん!」

「ふが」

 そう言い、瑠香の口に肉を突っ込むティア。

 

「ふがふが」

「ティアさん、あんまり突っ込むと瑠香が窒息……」

 慌てて咀嚼する瑠香を見て茉菜が心配そうに言う。

 

「にゃははは!」

「おー、瑠香、食え食え!」

「そうだ! もっと食え!」

 爆笑するティアに、便乗する心と隼人。

 

「いやあ、早く退院できてよかったね、瑠香」

 その輪に近付き、アレンが安心したように言う。

 

「アレンさん、これは一体……」

「最初はみんなのお疲れ+お帰り会にするつもりだったんだけど、盛り上がって君の退院祝いも追加されたんだ」

 飲み物を持って言うアレン。

 

「何かこそこそやってると思ったらこれだったのか」

 呆れたようにため息をついて充が言う。

 

「充も知らなかったの?」

「ああ」

 瑠香の問いに頷く充。

 そして充は、アレンに顔を向ける。

 

「なんで俺に言わなかったんだ」

「だって、君こういうの隠すの苦手じゃん」

 にやっと笑って言うアレンにため息を吐く充。

 

「あのなぁ、俺だってこれくらい……」

「お前に出来るわけねーだろ!」

「せやせや!」

「なんだと!」

 首を振って言いかける充に、心とリーの野次が飛ぶ。

 それに憤慨する充。

 

 それを見て思わず瑠香は笑ってしまった。

 

『瑠香ちゃーん! 寂しかったよー!』

 その時、瑠香にそんな声が掛かる。

 その声の出所を見て驚く瑠香。

 

「アイ!? どうして家の中に!?」

『増設しちゃった!』

 てへっ、とかわいく笑うアイに瑠香は唖然としてしまう。

 

「ボクとしてはあまり喜ばしくないことだよ」

 アイの言葉に顔をしかめてアルマが言う。

 

『へー? この料理は一体だれが用意したと思ってるのー?』

「ふん、量があればいいというものでもないだろう?」

『なんですとー!』

 バチバチと火花を散らすアイとアルマ。

 

「……はいはい、喧嘩しない……」

 それを宥めるレイナ。

 これまたいつもと同じく寝転がっているため、ソファを丸々一つ占領している。

 

 いつもと変わらない騒がしい日常。

 そんな光景に、瑠香は笑みを溢したのだった。



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