193話 VSバルガン戦 決着
物陰から飛び出したリーは、空中に浮くバルガン目掛けて走り出す。
「むッ!」
それを発見したバルガンが腕を振る。
それに呼応して鉄骨やコンテナがリー目掛けて飛んでくる。
地面に降り注ぐ鉄の塊たちを、器用にひらりひらりと避けながらリーは走り続ける。
「ふんッ、小賢しいッ!!」
バルガンはそう叫び、両腕を振り下ろす。
すると、その周りにある鉄骨などが一斉に地面に向けて落下を始める。
それらが地面と接触し、轟音と地響きがその場を支配する。
砂埃がもうもうと立ち込め、地面が見えない。
「もう終わりか、小僧ッ!!」
バルガンは鉄骨の上に仁王立ちをしたまま、大声で地面に叫び掛ける。
しかし、それに対する返事はない。
「──死んだか」
目を細めて呟き、バルガンは腕を組む。
それと同時に地面に落ちた鉄製の物が浮き上がり、バルガンの周りに戻ってくる。
「あの小僧、随分と強かったな。成績上位者か……? もうあれ以上の人材はいないだろうな」
「そら、どうも」
バルガンのその呟きに、返事がある。
その声に目を見開くバルガン。
次の瞬間、咄嗟にバルガンが上げた左腕にリーの硬質化した拳が衝突する。
「ぐッ!?」
背後に吹き飛ばされるバルガン。
しかしすぐに体勢を立て直すと、背後にあった車の上に着地する。
「──生きてたか。しかし、どうやって」
「どうやって上って来たかって? そら簡単や、あんたが地面から戻した鉄の塊の裏に張り付いとったんや」
「そうか。だが、どうやってあの攻撃を防いだ? 逃げ場はなかったはずだが」
「それも簡単や」
バルガンのその問いに両腕を交差させ、その腕を鉄に変えるリー。
それに目を見開き、喉の奥で笑うバルガン。
「なるほど、俺の攻撃など避けるまでもなかったというわけか。まんまと騙されたわけだ」
「そゆこと。んで、こっちも質問なんやけど」
そう言い、バルガンを見下ろしてリーは言う。
「さっきの咄嗟の防御、あれ霊装やろ。なんで使えるんや? 誰に教わった?」
「教えない、と言ったら?」
「さっきから簡単なことばっか訊くな、あんた」
「何?」
リーの言葉に片眉を吊り上げるバルガン。
「そんなん、ぶっ飛ばして聞くに決まっとるやろ」
そう言い、鉄骨の上を駆け出すリー。
「くくッ、威勢のいい小僧だ。だがッ!」
叫ぶバルガン。
その瞬間、リーの視界がガクッと傾く。
「お前が立っているその鉄骨は俺が浮かしているものだッ! お前に足場を与えたままでいると、思っているのかァッ!?」
そう叫び、高笑いをするバルガン。
「あんた単純やな。楽しそうでええわ」
それにそう返し、リーは身を縮め跳び上がる。
空中を舞うリーにバルガンは目を見開く。
リーはそのまま頭上にあったコンテナの裏側に足をつく。
そして再び足を曲げ、跳んだ。
今度は、バルガンに向かって。
「くッ!」
それを見たバルガンは腕を振る。
その背後から鉄パイプが飛び出し、リーに向かって飛んでいく。
しかし、それを鉄化した拳で弾き飛ばすリー。
「ちッ、こうなったらッ!!」
目の前に迫ったリーに向けて手を広げるバルガン。
「何を──」
「一か八かだァッ!!」
広げた手で空中を握るような仕草をするバルガン。
その瞬間。
「何や!?」
ガクッとリーの体が止まる。
驚愕の声を漏らすリー。
「くくくッ、ハハハハハッ!!」
空中で止まったリーを見て肩を揺らしながらバルガンが笑う。
「俺の能力は磁力を操ること。磁力で鉄を引き付けたり、引き離したりできるというわけだ。そしてどうやら──」
そう言いリーを見るバルガン。
「お前の鉄も、対象内のようだな?」
「くッ、動けないやと……ッ!?」
身をよじりながら焦ったように声を上げるリー。
「ふんッ、ここまでだな」
呟き、リーの近くまで車の上を歩くバルガン。
「落ちろ、小僧」
そう言い拳を振り上げるバルガン。
その拳が振り下ろされようとした、その瞬間。
「なーんつって」
ペロッと舌を出して意地悪くリーが笑う。
そして瞬時に腕の硬質化を解くと、その自由になった腕でバルガンの胸元を掴む。
「何ッ!?」
リーに引き摺り下ろされるように車の上から落ちるバルガン。
「この、離せッ!!」
そう叫び、バルガンは霊装を纏った拳でリーの頬を殴りつける。
しかし、その拳は硬質的な音と共に阻まれる。
リーが頬の皮膚を鉄化させたのだ。
「あんた、やっぱ単純やな。鉄化解けば動けるに決まっとるやろ」
「くッ、だが!!」
リーと共に落下しながらバルガンは腕を振り上げる。
しかし。
「ッ!?」
「気付いたみたいやな。この距離で瞬時に鉄動かすのは無理やで」
リーと共に落下する途中で、バルガンが空中に集めた鉄の塊とは距離が開いてしまっている。
「くッ!」
「これでチェックメイト、やなッ!」
その言葉と共にリーはバルガンの腹を蹴りつける。
「ぐはッ!?」
背後に吹き飛ばされるバルガン。
だが。
「ッは!!」
吹き飛ばされる中、バルガンはまだ意識を保っていた。
咄嗟に腹に霊装を纏い、リーの蹴りを防御したのだ。
早く着地しなければ。
そして鉄を集めて、あの小僧より先手を。
バルガンがそこまで考えた、その時。
さっとバルガンの頭上に影が差す。
「実はもう一人、いたんですにゃあ」
そんな声と共に脳天に強い衝撃を受け、バルガンは完全に意識を失った。
「ティア、ナイスな蹴りやったで」
「リーのパスのおかげにゃん!」
地面に叩き付けられ大の字で気絶しているバルガンの横で、ティアに親指を立てるリー。
それに対し、同じように親指を立てて言うティア。
「それにしてもなんで霊装使えたんやろなあ?」
「あれ、聞きそびれたのにゃ?」
「訊く前に倒してもうたな」
そう言い、同時にバルガンを見て、顔を見合わせるリーとティア。
そして同時にニッと笑うと、これまた同時に言った。
「「ま、いっか!」」




