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191話 VSドミラス戦 決着


 地面に叩き付けられたドミラスの拳を背後に飛ぶことで避ける実辰。

 そのあまりの威力に、周囲のビルがいくつか崩落を始める。

 

「これまさか、霊装!」

 地面に巨大なクレーターを作り出したドミラスに、実辰は少なからず驚く。

 

「今頃気付いたか。どうやらお前も使えるようだな!」

 濛々と立ち込める砂煙の向こう側でドミラスの巨体が揺らぐ。

 

 その瞬間、実辰は再び背後に大きく飛ぶ。

 直後、再度振るわれたドミラスの拳が実辰が立っていた地面を叩き割る。

 

「ふーん、やるじゃん」

 背後の地面に着地した実辰はそう呟く。

 

 余裕そうに見えるが、実はかなり不味いことになっている。

 霊装の使えない、ただの巨体ならばいくらでも相手できる。

 

 だが、相手は霊装を使える。

 つまり、相手と実辰の条件は同じ。

 

 それに加えてあの巨体。

 超パワーに霊装が加算されて、とんでもない破壊力を出している。

 また、霊装を使えるため、スピードも馬鹿にならない。

 

「んじゃまあ、使うしかないよね」

 実辰がそう呟いた瞬間、周囲の温度が少し下がる。

 

「──“氷柱槍(つららやり)”」

 地面に手をつける実辰。

 すると、その場に鋭い氷の槍が生成される。

 

 そして、実辰が手を振るうと、それは地面から猛スピードでドミラス目掛けて射出される。

 

「むッ!?」

 それを見たドミラスは驚いたように目を見開き、両腕を眼前で交差させる。

 その腕を覆う霊装。

 

 そこに実辰が放った氷の槍が衝突する。

 轟音と共に破砕する氷槍。

 

「く、くくくッ! どうした、こんなものか!?」

「さあね」

 笑い声をあげて拳を叩き付けるドミラス。

 それをひらりと避ける実辰。

 

 それに向かって追撃を放とうと、ドミラスが再び拳を振り上げた、その時。

 

「──“雷撃(ライトニング)”っ!!」

 空気を切り裂くような鋭い叫び声と共に、一筋の雷光が飛来する。

 

「ッ!?」

 側面からのその攻撃に対し、咄嗟に振り上げた腕を構えることで防御態勢に入るドミラス。

 その霊装を纏った腕に、雷撃が衝突する。

 激しい音と共に火花が爆ぜり、雷撃が消滅する。

 その場に立ち込める黒煙。

 

 その瞬間。

 

「まだだァ!!」

 その叫びと共に、その黒煙を突き破り、一人の少年が飛び出してくる。

 

「なにッ!?」

「──“風撃(インバット)”ォッ!!」

 そんな声と共に、ドミラスの腕にその少年の拳が叩き付けられる。

 その衝撃にドミラスの巨体が揺らぎ、背後に倒れる。

 

 目の前のその光景に目を丸くする実辰。

 そんな実辰の元へ駆け寄ってくる影が一つ。

 

「実辰!」

「日和!」

 その顔を見て思わず叫ぶ実辰。

 

「大丈夫だった?」

 駆け寄って来た日和が心配そうに実辰の体をペタペタと触る。

 

「うん、大丈夫だよ。今の日和が?」

「うん、そうだよ。間に合ってよかった」

 実辰の様子に安心したように、ほっと息を吐く日和。

 そして振り返ると大きく手を振る。

 

 そちらの方を見て実辰は驚く。

 そこにはこちらに向かって飛んでくる隼人の姿があった。

 

「よ、実辰! 大丈夫だったか!」

 ひらりと実辰たちの前に降り立つとニッと笑って隼人は言う。

 

「まさか、今あいつを吹き飛ばしたのって」

「ああ、オレオレ。すげーだろ」

 実辰の言葉に自慢げに笑う隼人。

 

「で、あいつ、誰なんだ?」

「え、知らないで攻撃したの!?」

「「うん」」

 隼人のあっけらかんとしたその問いに驚く実辰。

 頷く隼人と日和に実辰はため息を吐く。

 

「あれ、異能犯だよ。今フィールドで防護服が機能してないのもあいつらのせい、だと思う」

「防護服? 何のこと?」

「え、そこから!?」

 首を傾げる日和に、実辰は再びため息を吐く。

 

「多分今、防護服は機能してない。ダメージは受けるし、気絶してもそのまま」

「え、そんなの危ないじゃん!」

「そういうこと」

 驚く日和に頷く実辰。

 

「ま、今はそりゃどうでもいいな」

 そこでそう呟く隼人。

 

「まずはあいつをどうするかだ」

 その言葉にドミラスのことを思い出す実辰。

 

「そうだ、あいつは!」

 慌ててドミラスを探す実辰。

 ドミラスはビルの瓦礫の中から立ち上がろうとしていた。

 

「あいつ使えんだろ、霊装」

 そういう隼人に、日和が驚いたような顔をする。

 

「うん、使えるみたい」

 それを一旦放置して、実辰は頷く。

 

「うっしゃ、楽しくなってきたな!」

「ま、待ってよ! 霊装を使える相手なんて、どうすれば──」

 笑って拳を打ち合わせる隼人に、慌てたように日和が言う。

 

「俺を援護しろ! できるだけあいつの霊装を削れ!」

 そう叫ぶと立ち上がりかけたドミラスに向かって飛び立つ隼人。

 

「あ、行っちゃった」

「ほんと、勝手なんだから……」

 呆れたように呟く日和。

 実辰は肩を竦めてドミラスに向かい合う。

 

「くくくッ! 援軍か! いいだろう、いくらでも相手をしてやる!」

 そう叫び、飛んでくる隼人に向かって拳を振り上げるドミラス。

 

「“風撃(インバット)”ッ!」

 隼人も負けじとその叩き付けられる拳に自身の拳をぶつける。

 

 轟音と主に弾かれる両者の拳。

 ドミラスの巨体相手に全く引けを取らないその力に実辰は目を丸くする。

 

「実辰、私たちも!」

 日和のその叫びに我に返った実辰は走り出した。

 

「“雷撃(ライトニング)”っ!」

 走りながら指先から雷撃を放つ日和。

 

 実辰も疾走しながら地面に手を伸ばす。

 実辰の手が近づいた場所から霜が発生する。

 

 そして腕を振り叫ぶ実辰。

 

「“氷牙(ひょうが)”っ!」

 その瞬間、地面から巨大な氷が生成され、ドミラスに迫る。

 

「ふんッ、小賢しいッ!!」

 霊装を纏った両腕を振って、雷撃を打ち落とし、氷の波を叩き割るドミラス。

 そのがら空きになった顔面に隼人が猛スピードで迫る。

 

「“突風撃(ヘルム)”ッ!」

 少し離れた場所から、ドミラスの顔面を目掛けて拳を振る隼人。

 突風が吹き荒れ、隼人の拳が風となってドミラスの眉間に激突する。

 

「ぐッ!!」

 ドミラスは咄嗟に霊装で防いだようだが、完全には防ぎきれなかったのか、苦悶の声を上げて後ろによろめく。

 

「今だ、畳み掛けろッ!!」

 その隼人の号令を聞き、駆け出す実辰と日和。

 

 地面に触れ、氷の槍を作り出し、それを思い切り放つ実辰。

 雷のような速度でドミラスの下まで駆け寄ると、飛び上がって拳を振るう日和。

 

「“氷柱槍(つららやり)”っ!!」

「“打雷(だらい)”っ!!」

 二人の叫ぶ声が重なり、日和の拳と実辰の放った槍がドミラスの腹に迫る。

 

 しかし。

 

「小賢しいと、言っているッ!!」

 そう叫ぶドミラスの全身が、霊装で覆われる。

 その霊装に衝突した日和と実辰の一撃は弾かれてしまう。

 

「全身に霊装を纏えば、どんな攻撃にも対応できるッ!! 貴様らの攻撃はもう効かないッ!!」

 そう叫ぶドミラス。

 

 だが、その瞬間だった。

 

 ドミラスの巨体がドクンッと脈打つと、一気に縮み始める。

 

「な、なにッ!?」

 空中に放り出されたドミラスは驚愕の声を上げる。

 そのドミラスに隼人が迫る。

 

「くッ!? お前ら、俺に一体何をしたッ!」

 状況についていけず、叫ぶドミラス。

 

 そんなドミラスの眼前で不敵に笑う隼人。

 

「何も、しちゃいねーよ。俺たちはな」

「ッ!?」

 目を見開くドミラスの前で隼人は拳を振り上げる。

 

「てめーの能力が強制終了した理由は、てめーが霊装を『使いすぎた』から」

「ま、まさかッ!」

「でけェものに霊装を纏わせるには、それなりの魄を使う。てめーの巨体全体を覆うような霊装は、消費が激しいんだよ。それで、魄を使いすぎたてめーは能力が維持できなくなって強制的に能力が切れたってワケ」

「くッ!」

 悔しそうに呻くドミラス。

 しかし、すぐに不敵に笑うと、その両腕に霊装を纏う。

 

「能力は使えんが、霊装はまだ使えるッ! 貴様を叩き落としてしまえば終いだッ!!」

 そう叫び、両腕を隼人目掛けて振り下ろすドミラス。

 

 その腕が隼人に当たる寸前。

 隼人の姿が風とともに消える。

 

「俺は風だぜ? 風が、叩き落とされたりするかよ」

 頭上から聞こえるその声にドミラスは目を見開く。

 

 その瞬間。

 

「“風撃(インバット)”ッ!!」

 その声と共に激しい衝撃が後頭部に走り、ドミラスの意識は闇に包まれた。

 

 

 

 

 

「ありがとよ! お前らの援護のおかげで勝てた!」

 地面に叩き付けられたドミラスの横で隼人が実辰たちに礼を言う。

 

「あんたにしては、珍しく賢い戦い方だったわね」

「あ? 俺はいつでも賢いだろうがよ!」

「賢い人はそんなこと言わないわ」

「んだと!」

 言い合う隼人と日和の横で実辰は苦笑しながら肩を竦めた。



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