187話 北区にて
自分に向かって一直線に飛来する鉄骨を、ひらりと飛んで避けるリー。
轟音を立てて地面に突き刺さる鉄の塊。
「ふははッ、逃げるだけか!? 小僧ォ!」
そう叫び腕を振るバルガン。
その動きに合わせて、無数の鉄骨がリーを目掛けて飛んでくる。
「そっちだって、一個も当てれてないやん」
「くくくッ、これは遊びだ! 貴様が疲れ果てるまで続けてやる!」
「趣味悪ぅ」
軽口を叩きながらも連続で飛んでくる鉄骨を跳んで回避するリー。
しかし、敵は空中に浮いている。
リーの脚力ならば、空中を舞う鉄骨やコンテナを足場にバルガンの場所まで行けなくもない。
だが、それはその間に相手が何もしない前提の話。
勿論、接近するリーを見ればバルガンは攻撃してくるだろう。
そして、空中で不自由な足場しかないリーはその格好の的だ。
こちらは攻めきれない。
相手も同様。
しかし、バルガンはまだ手の内を隠しているようだ。
下手に挑発してこちらが劣勢になるようなことは避けたい。
だからこその回避専念。
後ろに飛び退るリー。
直後、その場に突き刺さる鉄骨。
地響きと共に砂煙が舞う。
と、その時。
「おーい、こっちこっち!」
近くの物陰から聞き覚えのある声がする。
砂煙に紛れてその物陰に飛び込むリー。
「ティアやん、どした?」
物陰に身を潜めたリーは小声で声の主に話しかける。
そこにはリーと同じく身を縮めて物陰に隠れるティアの姿があった。
「すんごい地響きと砂煙、あと空中を舞う大量の鉄。何事かと思ってティアちゃん参上ってワケにゃ」
「ま、そりゃそうか。目立つもんな」
ティアの言葉にリーは頷く。
「で、あれ、誰にゃ?」
「知らん人。バルガンって名乗ってた」
「ふぅん。異能犯かにゃ?」
「たぶん」
ティアの問いに頷くリー。
「じゃあ、倒しちゃってもいいってことかにゃあ?」
「ええんやない? ボク襲われたし」
「じゃあ決まりだにゃあ」
物陰で二人が頷き合った、その時。
「出てこい、小僧ォ! かくれんぼは終わりだァ!!」
工場地帯に痺れを切らしたバルガンの咆哮が響き渡る。
「んじゃ、ボク、のこのこと出ていくからあとよろしく」
「了解にゃ! ティアちゃんに任せるにゃ!」
ぐっと親指を立てるティアに頷き、リーは勢いよく物陰から飛び出した。




