183話 バルガン
フィールド北部に広がる工場地帯。
その一角で今、ひとつの勝負の決着がつこうとしていた。
「“剛拳”ッ!」
その声と共に拳を振るうリー。
リーと対峙した受験者は大きく吹き飛ばされ、背後の壁に叩きつけられる。
「ぐッ!?」
苦悶の声と共に崩れ落ちる受験者。
それと同時にその体が光を放ち、消える。
「さーて、これで七百ポイントやな」
右手をブラブラと振りながらそう呟くリー。
その腕に装着されたモニターは、リーの言う通り七百という数字を示していた。
つまり、六人倒した計算になる。
と、その時。
「──なんや?」
ふと違和感を感じたリーはモニターから目を離す。
リーが周囲を見回したその瞬間、地響きのような音がリーの耳に届く。
音と共に微かに鳴動する地面。
身構えるリー。
その頭上にさっと影が射す。
「──上か」
そう呟き、頭上を見上げたリーの目に異様な光景が飛び込む。
工場地帯に配置されたコンテナや鉄パイプ、トラックやタンクなどが宙に浮いていた。
大きなものがいち早く目に留まるが、よく見てみるとネジや工具などの小さいものも浮いている。
それらは空中で渦巻き、巨大な黒い竜巻を形成していた。
「──なんやあれ?」
リーが首を傾げてそう呟いたその瞬間。
渦の中から巨大なコンテナが飛び出し、リー目掛けて一直線に飛んできた。
「おっと」
それを背後に跳び、難なく回避するリー。
そのコンテナが地面に叩き付けられると轟音と共に地面が揺れ、砂埃が舞う。
「あっぶなぁ」
地面にめり込んだコンテナを見てそう呟くリー。
その時。
「よく避けたな、貴様ッ!」
空中からそんな野太い声が聞こえてくる。
声につられてリーがそちらを見ると、そこには空中に浮く鉄筋の上に仁王立ちした大男がいた。
「誰や?」
男を見たリーは首を傾げる。
「よくぞ訊いてくれた! 俺様はバルガン! 最強の男だッ!」
「へー、最強」
それを聞いて興味なさそうに頷くリー。
「貴様は幸運だぞ! 最強の俺様に殺されるのだからな!」
そんなリーに向かって指を突きつけるバルガン。
「あの、盛り上がってるところ申し訳ないんやけど、今試験中なんよ。部外者は出てってもらえへんかな?」
耳をほじりながらそう言うリー。
それを聞いて、バルガンは残忍に笑った。
「生温い試験など終わりだ! 本気の殺し合いを始めるぞッ!」
そう叫び、手を振るバルガン。
その瞬間、バルガンの周りに浮いていた鉄筋が、リーに向かって一斉に放たれた。




