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182話 アルゼンク

 

 一人市街地を歩く一華。

 その左手には当然のように木刀が携えられている。


 殺傷能力の高い武器の持ち込みは禁止されているので木刀もダメかと思ったが、どうやら許されたようだ。

 まあ、一華が使えばそこらのナイフなどより高い殺傷能力を持つのだが。


 ふとため息を吐いて左右を見回す一華。

 周囲に広がるのは閑静、というか人っ子一人いない住宅街だ。


 ここは恐らく、フィールド西部にある市街地フィールドだろう。

 良くできてる。

 人さえいれば、ここが試験会場だとは誰も思わないだろう。

 しかし、人がいないので若干不気味でもある。


 そこまで考え、一華は自分の腕に着けられたモニターを見る。

 そのモニターは四百という数字を示している。


 これまで一華は三人の他の受験者と遭遇し、その全てを撃破してきた。

 正直、この試験が一華の身になるとは思えない。


 何しろ、他の受験者は弱い。

『心体技』を使えないのでそれも仕方ないのだろうが、それにしても弱い。

 一華の性格的に手を抜くと言うのも気分が悪いので、手も抜いていない。

 なので、勝負にすらならないのだ。


 戦いに面白味など求めてはいけないことはわかっているつもりだ。

 それでも、心の奥底で何かが囁くのだ。


 もっと、戦いを愉しみたい、と。


 そこまで考えた一華は足を止める。

 どこかから視線を感じたからだ。

 木刀の柄に右手をかけて注意深く周囲を観察する。


 その、次の瞬間。

 左手にある民家の塀が吹き飛んだ。

 咄嗟に身を捻って回避行動をとる一華。


 先程まで一華がいたその場所に、いくつも長い刃物らしき物が突き立っていた。

 その長い刃物は、吹き飛んだ塀の向こう側から伸びている。

 その刃物たちはもうもうと立ち込める砂煙の中にスルスルと引っ込んでいく。


 そちらの方を見て、一華は身構えた。

 剣の柄を握り、いつでも抜き放てるようにする。


「君、すごいね。今の避けるなんて」

 やがて、そんな声と共に、砂煙の中から一人の青年が歩み出てきた。

 赤い髪に金色の瞳。

 見たところ、二十代前半くらいだろうか。


 パチパチと拍手して一華を称賛する青年。


「生徒、じゃなさそうですね。何者ですか」

 端的にそう問う一華。


 わかっている。

 生徒ではない者がここにいるはずがない。

 だが、目の前の青年はどう見ても生徒ではない。


 何故なら、その服にベッタリと血の染みがついているからだ。


「え、僕生徒だよ! アルゼンクっていうんだけど、知らない?」

「知りませんね」

 アルゼンクと名乗った青年に、一華はすげなくそう返す。


「嘘をつくなら、その服脱いだらどうですか」

「ああ、これでバレたの? だよね、僕まだ若いし、これがなきゃバレるわけないよね」

 服をつまんでヘラヘラと笑うアルゼンク。


「その血はどこで着けてきたものですか」

「え? 知りたい? さっきそこで会った女の子のものなんだ。いきなり襲ってきたから返り討ちにしちゃったんだけど、ちょっとやり過ぎたかな」

 その言葉に一華は息を詰める。


 さっき、そこで。

 つまり、試験会場内。

 と言うことは、防護服が機能していないということだ。

 それが、その少女だけなのか、一華たちも同様なのかはわからない。

 だが、楽観視はできなそうだ。


 そしてわかったことがもうひとつ。


 この男、異能犯だ。

 事故などではないだろう。

 既に一人を怪我させた、もしくは殺している。


 鋭い目付きになって構える一華。

 それを見て、きょとんとした顔をするアルゼンク。


「え? もしかして僕とやる気? 普通逃げると思うんだけど」

「私は逃げたりしない」

「ふーん、そっか」

 一華の言葉にどうでも良さそうに頷くとアルゼンクは一歩踏み出した。


「逃げないならいいや、殺しやすいし」

 その瞬間、アルゼンクの身体中から先程のような刃物が飛び出し、一華目掛けて放たれた。




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