176話 珠輝VSゲーゼル
前を進むゲーゼルについて森の中を歩く珠輝。
「なあ」
ある程度歩いたところで珠輝はゲーゼルの背に向かって声をかける。
「ああ? んだよ、眼鏡」
振り返らずに進み続けるゲーゼル。
「お前らのリーダー格はあの少女だろう? お前は何故従っている?」
「従ってる? そりゃてめーの勘違いだ。俺は面白そうだから付き合ってるだけだ」
問いかける珠輝に対して吐き捨てるように言うゲーゼル。
「面白そうだと?」
「そうだよ。信じてた奴に裏切られる、そんな最高のショー見逃すわけねーだろ」
「下衆が」
目を細めて呟く珠輝に肩を揺らして笑うゲーゼル。
「下衆でも何でもいいぜ。こっちはいい情報を得られた」
「いい情報……?」
ゲーゼルの言葉に眉をひそめる珠輝。
「ああ、さっきまでは確証がなかったが……これで確信した。てめーら転入生十三人は繋がっている。そうだろ?」
「……」
「この学校は実力至上主義だからな。入れ替わりが激しい。だが、それにしても十三人一斉にってのは出来すぎている」
答えない珠輝にゲーゼルは続ける。
「それが事実だとして、お前に何の得がある」
「知ってるぜ。てめーらがこそこそと何か調べていること。調査内容は……そうだな、例の失踪事件についてってところか?」
ゲーゼルのその言葉に顔をしかめる珠輝。
その男、想像以上に頭が回る。
「それを知って、お前に何か利益があるか?」
「あるさ。邪魔して楽しむ」
意地悪く笑ってゲーゼルは言う。
「なぜ邪魔をする? お前が失踪事件の犯人なのか?」
「答えねェよ、馬ァ鹿」
そう問う珠輝を嘲笑って答えるゲーゼル。
「そうか。なら、消えろ」
その瞬間、珠輝は地面に手をつく。
刹那、珠輝の周囲の地面が蠢き砂に変わる。
「おッせーんだよッ!」
しかし、珠輝がその砂を放つ前に、ゲーゼルは地面を蹴っていた。
一気に加速し、眼前まで迫るゲーゼルに珠輝は目を見開く。
瞬間、横に飛ぶことでゲーゼルの攻撃を回避する珠輝。
そして、すぐに手を振り自分の周囲を砂の殻で覆う。
その砂の防壁に凄まじい衝突音と共にゲーゼルの拳が突き刺さる。
「いつまで耐えられるか見物だなァ、眼鏡ッ!」
砂の向こう側からゲーゼルの声が聞こえる。
次の瞬間、全方位から衝撃音が鳴り響く。
しかし、それを意に介さず、珠輝は目を閉じる。
集中する。
攻撃の間隔、方向、威力。
感覚を研ぎ澄ませてそれらを計算する。
そして目を開けた珠輝は拳を振り上げて、思い切り目の前に叩きつけた。
次の瞬間、砂の殻に罅が入り、砕け散る。
飛び散る砂の破片の中で獰猛に笑うゲーゼルの顔が見える。
しかし、その顔はすぐに驚愕に彩られる。
破砕した砂の欠片の中から、珠輝の拳が迫っていたからだ。
その拳は吸い込まれるようにゲーゼルの顔面に向かい、そして──
衝撃。
顔面に拳を食らったゲーゼルは後方に大きく吹き飛ばされる。
そのまま、背後の木に叩き付けられるゲーゼル。
それを見て周りの砂の防壁を解く珠輝。
「な、ぜ──」
「なぜお前が来る方向がわかったか、か?」
崩れ落ちるゲーゼルの呟きに珠輝はそう返す。
「防壁を一部、意図的に薄くしておいた。勘のいいお前ならそれに気付くだろうと思ってな。後はその場所にタイミングを合わせて攻撃しただけだ」
珠輝がそう言った瞬間、ゲーゼルの体が光に包まれる。
「お前の敗因は頭の回転が早かったことと、それが弱点になり得ると思い至らなかったことだ」
光りながら消えるゲーゼルに珠輝はそう言った。




