123話 お説教
皇宮前に到着した瑠香たち。
皇宮前では押し掛けた民衆によりちょっとした騒ぎが起きていた。
「すごいね……」
騒ぎを見て瑠香は呟く。
お祭り騒ぎだった。
きっとみんな嬉しいのだろう。
この国は解放された。
みんな自由なのだ。
「おーい! お前ら!」
その時、そんな声が瑠香たちの耳届く。
そちらを振り返ると心たちが駆け寄って来るのが見えた。
「みんな!」
瑠香は元気そうな皆の姿を見て笑顔を浮かべる。
〈白の解放団〉が全員集合したことで一気に周囲が騒がしくなる。
「実辰!」
「日和!」
駆け寄って抱き合う日和と実辰。
「よ、充。久しぶり」
「ああ」
片手を上げて言う隼人に頷き返す充。
「なな、聞いてや。ボク、一人で魔術騎士団倒したんやで!」
瑠香たちにそう自慢してくるリー。
「一人で!? すごいね」
「せやろ?」
素直に称賛する瑠香。
それを聞き、リーは嬉しそうに鼻の下を擦る。
「……私たちだって倒したし」
「……一華」
口を曲げて言う一華に凜が呆れたような顔をする。
「な、ティア、そっちはどやったん?」
「にゃ!? てぃ、ティアちゃんだって魔術騎士団くらい倒したし? 苦戦とか、してないしぃ?」
「……苦戦したんや?」
「ぐ! しかたないのにゃ! 相性が悪かったのにゃん!」
必死で弁明するティア。
「魔術騎士団なら俺も倒したぜ!」
隼人が腕をまくりニヤッと笑って言った。
「マジかよ! いいなぁ! 俺も戦いたかった!」
それを聞き、心が心底悔しそうに言う。
「それに、ボクはあの〈黒の使徒〉まで倒したんやで!」
「ええ! ホント!?」
リーの言葉に瑠香は驚く。
「ほんまほんま」
「嘘だぞ、瑠香。リー、お前も嘘をつくな」
「あいた!」
ゴスッと言う音がしてリーの頭に珠輝の手刀が入る。
「そうだぞ、リー! 〈黒の使徒〉を倒したのは俺だ!」
決めポーズをとって心が叫ぶ。
「ちげーよ! 俺だって!」
負けじと隼人も決めポーズをとる。
「みなさん……」
それを見て困ったような笑いを浮かべているスズ。
「え、結局誰が倒したの……?」
瑠香は首を傾げて心たちを見る。
その真っ直ぐな視線にスッと顔を逸らす心たち。
その視線の先にはレイナがいた。
「……ああ、なるほど」
瑠香は納得した。
〈黒の使徒〉を倒したのはレイナだろう。
そのレイナはフェイルと話していた。
「その包帯……」
「その……少し、油断してしまいまして……」
レイナが目ざとくフェイルの頭に巻かれた包帯に目を止める。
少し気まずそうにフェイルは頭を撫でていた。
「大丈夫……?」
小首を傾げて言うレイナにフィイルは驚いたような顔をする。
「し、心配してくれているのですか……!?」
「……別に」
フェイルの言葉に顔を逸らして呟くレイナ。
素直じゃないレイナに瑠香は苦笑する。
その時。
「よかった。全員、大きな怪我はなさそうだな」
そう言って歩み寄ってくるウィスターの姿を瑠香は目に留める。
「ウィスターさん!」
瑠香はウィスターの元へ駆け寄る。
「よかったですね。みんな、嬉しそうです」
「……ああ」
瑠香の言葉に頷くウィスター。
「君たちの、お陰だ。……ありがとう」
そう言い頭を下げるウィスターに瑠香は慌てる。
「そ、そんな、私たちは大したことしてないですよ。この国が救われたのはウィスターさんたちのお陰です」
「私たちの……?」
その言葉に首を傾げるウィスター。
「そうですよ。ウィスターさんたちの、この国を救いたいっていう気持ちに感化されて私たちも戦ったんです。この国を救ったのは、ウィスターさんたちのその気持ちですよ」
そう言う瑠香にウィスターは目を見開く。
そして微かに笑った。
その目は、眩しそうに細められている。
「君は、優しいな。瑠香」
「……そ、そんな……」
照れて頭を掻く瑠香。
「ちょ、ちょっと、瑠香ちゃん!?」
その時、瑠香はグイッと袖を引っ張られる。
瑠香の袖を引っ張ったのは凜だった。
ぐいぐいと瑠香を引き摺ってその場から少し離れる。
そしてガシッと瑠香の肩を掴む。
「瑠香ちゃん! だ、誰あのイケメン!」
そう叫ぶ凜に瑠香は眉を顰める。
そしてその視線を辿り納得する。
凛の視線の先にはウィスターがいた。
「ん? ウィスターさんのこと?」
「うぃ、ウィスターさんっていうのね……」
首を傾げる瑠香の言葉を聞いて凜が微かに頬を染める。
「すてきなお名前だわ……」
両手を頬に当て、凜はうっとりと呟く。
「ウィスターさんはこの国の皇族なんだよ」
「こ、皇族!? っていうことは、まさか、王子様ってこと!?」
瑠香の言葉にカッと目を見開く凜。
「う、うん……」
凛の迫力に少し後退る瑠香。
「なんてこと……だから、高貴なオーラを纏っていらっしゃるのね……キラキラ輝いて見えるわ……」
何やらぶつぶつ呟いている凜から瑠香は少し距離を取る。
なんだか、今の凜は少し怖い。
完全に自分の世界に入ってしまっている凜を置いて、瑠香は再び仲間たちに目を向ける。
「実辰、大丈夫だった? 心に何かされなかった……?」
日和が実辰の体を触りながら心配そうに言う。
「うん、大丈夫だよ。面倒ごとに首を突っ込んでたけどね」
それに対し苦笑しながら答える実辰。
「おい、俺を何だと思ってるんだよ?」
二人の会話を聞いて憮然として言う心。
「は? 問題児に決まってるでしょ」
「ああ? 誰が問題児だって?」
『ちょ、心……』
睨み合う日和と心を仲裁しようとするイチヤ。
「……お前は間違いなく問題児だぞ」
その時、横から充が口を挟む。
「んだと!?」
それにより、更にその場が騒がしくなる。
と、その時。
「やあ、みんな元気そうで何より」
そう言いながらアレンが姿を現す。
その背後に控えている銀髪の男がカローレだろうか。
「──さて、皆」
アレンが全員を見回して口を開く。
「取り敢えず、ここに整列」
笑顔でそう言うアレン。
だが、何故だろう。
周囲の空気の温度が少し下がった気がする。
アレンの言葉を聞き、〈白の解放団〉全員がビシッと一列に並ぶ。
その一糸乱れぬ動きに目を丸くするウィスターたち。
「──さて」
一列に並んだ瑠香たちの前を、靴音を響かせながらアレンが行ったり来たりする。
これから先は尋問の時間だ。
「……どうして君たちがここにいるのかな」
一人一人の顔を覗き込んでアレンが言う。
その顔はあくまで柔和なままだ。
身に纏う雰囲気は鬼のようだが。
誰も何も答えないのを見てアレンは顔を動かす。
「充」
「心と隼人の考案だ」
名前を呼ばれた充は即座に答える。
「……なッ!」
「……いッ!?」
それを聞き、声を上げる心と隼人。
しかし、アレンの視線が向けられると慌てたように口を閉じる。
「まあ、ぶっちゃけ、君たちの尾行には気付いていた。でも、大丈夫だろうと思って放置してたんだけど……まさかこうなるとはね」
嘆息してアレンが言う。
その言葉に瑠香たちは驚く。
心たちの尾行はバレていたのだ。
「それで? 充。なんで君はここに来ることを許可したんだい?」
次は充に向かってそう問いかけるアレン。
「俺が止めたら、こいつらは勝手に行きかねないと思った。だから、全員で行くことを条件に提案を呑んだ」
「なるほどね……確かにそれは理にかなっている。ただ完璧じゃない」
そう言い指を立てるアレン。
「心たちが行こうとしていることを知ったその時、君はジャストか僕に連絡するべきだった。そうすれば止めることができたんじゃないか?」
その言葉に息を呑む充。
そして微かに項垂れる。
「悪い、アレン。俺の落ち度だ……」
「ま、反省して次に繋げてくれよ」
充の肩を叩いてアレンは朗らかに言う。
「で、だ。今回の君たちの行動だけどね」
そう言い瑠香たちを見回すアレン。
「勝手な判断での行動。これは完全に問題行動だ。それに〈黒の使徒〉と戦うなんて危険すぎる。僕たちが君たちを保護した意味を今一度よく考えてほしい。……だけど」
厳しい顔をして言った後、アレンは少し顔を和らげる。
「今回、君たちのお陰で助かったことも多い。だから頭ごなしに叱るつもりはない」
首を振って言うアレン。
その言葉に顔を見合わせる瑠香たち。
「それに、この国の人々を救ってくれたことに関して、僕はお礼を言わなきゃいけないくらいだ。ありがとう」
そう言いアレンは瑠香たちに頭を下げる。
「いや、それほどでもねーよ!」
「照れるなぁ!」
そう言われてすぐに調子に乗る心と隼人。
「た、だ、し!」
しかし、大声でそう言い指を立てるアレンに心たちは口を噤む。
「とは言っても、危険行為を見逃すことは出来ない。なので、それなりの処罰は覚悟しておくように」
「「「「はぁい」」」」
その言葉に生返事をする瑠香たち。
「──じゃ、お説教も終わったことだし行こうか」
「えっと、どこへですか?」
そう言い踵を返すアレンに瑠香は訊ねる。
「皇宮の中」
そう言い、アレンは皇宮を指した。




