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120話 爆弾の場所

 

『全ての爆弾の停止を感知しました。時限爆弾を作動します』


 停止したはずの爆弾から流れ出す声を聞いて瑠香は一瞬絶句する。

 それは、他のみんなも同じだったようで、数秒間沈黙が訪れる。


 そして、一泊遅れて騒ぎ出す。


「時限爆弾……!?」

 顔を真っ青にして凜が叫ぶ。


「ちッ、やはり裏があったか……ッ!」

 顔を歪めて舌打ちをする充。


『な、なあ、これってマズくねえか!?』

『滅茶苦茶マズいわよ!』

 焦ったように言う隼人に叫び返す日和。


『くそッ、俺たちの、せいか!』

 通信機の向こうで悔しそうに呻く心。


「ど、どうすれば……!」

 背後からフェイルの慌てたような声が聞こえる。


『……フェイル。少し、落ち着け』

 ウィスターはさすがと言うべきか、すぐに落ち着きを取り戻しそう言う。


『そうだね、ここで騒いでいても仕方がない』

『ああ』

 アレンのその言葉にカローレが同意する。


『さて、みんな少し落ち着いて僕の話を聞いてほしい』

 アレンが手を叩いて言う。

 その言葉に全員が静かになり、耳を傾けた。


『まず、周囲に爆弾らしきものがないか確認してくれ』

 そう言われ、瑠香たちは周囲を見回した。


『──北塔に異常はありませんでした』

 しばらくしてウィスターの声が聞こえる。


『──西塔も異常なしだ』

 それに続く心の声。


「東塔も同じく、です」

 異常がないことを確認すると、瑠香たちは頷き合い、そう伝えた。


『ふむ……南塔にも異常はなかった』

 各党の報告を聞き思案気に呟くアレン。


『……少し、いいでしょうか』

 その時、ウィスターが静かに声を発する。


『この東西南北の塔に、その時限爆弾は仕掛けられていないのではないですか?』

『……ふむ』

『……なるほど』

 そのウィスターの言葉に、アレンとカローレが納得したような声を発する。


『……ああ、なるほど』

「……あ」

「……そういうことか」

 少し遅れて珠輝、茉菜、充が呟く。


『心』

『ああ!』

 そして声を掛け合うイチヤと心。


「え、ど、どういうこと……!?」

 ウィスターの言葉に納得できず、置いて行かれて焦る瑠香。


『え、え、え……!?』

『あ、もう駄目だ』

 日和の困惑したような声と、隼人の諦め切ったような声が聞こえる。


「なんで今のでわかんのさ……」

 実辰が唖然としたように呟く。


『まず、爆弾を仕掛けるということは、その場を破壊したいということです。ですが、この爆弾にはその意図を感じない。こうして目立つように仕掛けられているのが、その根拠です』

「なるほど……」

 ウィスターの言葉に瑠香は頷く。


 確かに、普通爆弾を仕掛けるなら、もっと見つかりにくく仕掛けるだろう。


『とすると、この爆弾が見つかることは想定内──いや、計画のうちと言っていいかもしれません』

 その言葉に珠輝と茉菜が息を呑むのがわかった。


『爆弾を止めさせ、別の爆弾を起動させる。そういう計画だったってことか。これを考えた人は随分と頭が切れるね。そして性格が悪い』

 アレンが納得したように言う。


「で、でも、どうしてここに爆弾がないって言えるんですか?」

 そこで瑠香は腑に落ちない点を指摘する。


『塔を爆破させたいなら最初から見つからないように設置するはずだ』

 ウィスターのその答えに瑠香は納得する。


『と、するとだ。この塔に爆弾はなくて、どこか別の場所に爆弾が仕掛けられているということになるね』

『ああ。だが、その場所が見当もつかない』

 アレンの言葉に同意し、カローレが呟く。


『時限爆弾、って言ってたね。そして、それはもう作動している。早く見つけなきゃいけない』

『それより、民衆を避難させなくては』

『ですが、爆弾の場所と規模が分からない以上、それは難しいかと……』

 アレン、カローレ、ウィスターが言葉を交わす。


「……私、何か嫌な予感がする」

 凛がぽつりと呟く。


『同感だ』

『ああ』

 心と隼人も凜の言葉に同意する。


 瑠香も感じていた。

 裏で糸を引いている者が、ほくそ笑んでるような感じ。


 とてつもなく、嫌な予感。


「塔の爆弾は囮だった……本当の目標から、目をそらすため、か?」

 充がそう呟く。


 と、その時。


『……まさか』

 世界軸が呟いたのが聞こえる。


『この国を、潰すため……? なら、狙うのは……』

 その呟きを聞き、瑠香はガバッと立ち上がる。


 みんなの驚きの目を無視して、辺りを見渡す。

 そして見つけた。


 部屋に入ってきた扉とは違う、もう一つの扉。

 それに駆け寄り、勢いよく扉を開ける。


 思った通り、それは外に繋がる扉だった。

 そこはバルコニーのような場所だった。


 外に出た瑠香は手すりに駆け寄る。


 高い。

 バベル帝国が良く見渡せる。


 そして、瑠香が探している物は、瑠香の真正面にあった。


「瑠香ちゃん!」

 その時、凛が慌てたように瑠香を追いかけてくる。

 その後ろから充たちも付いてくる。


 フェイルが三つの通信機を抱えているのが見えた。

 恐らく、先程の部屋から持ってきたのだろう。


「どうしたの、瑠香ちゃん!」

 凛が隣に駆け寄って来る。


 だが瑠香は答えずに正面を見ていた。

 その視線を辿り、絶句する凜たち。


「……まさか、皇宮を……?」

 凛が呆然としたように呟く。


 その時。


 ガタガタという音が通信機から聞こえる。

 そちらに目をやる瑠香たち。


『アレン!?』

『マズい!! 皇宮には、皇宮には、エマが!』

『まさか、そんな、叔母上……!』

 驚いたようなカローレの声。

 そして焦りが滲んだアレンの声。

 ウィスターの声も聞こえる。


『おいおいおい、マジかよ!?』

 心たちも慌てたように叫んでいる。


「はやく、はやく行かなきゃ!」

 瑠香は叫び、そして手すりを乗り越えようとする。


「瑠香ちゃん、危ないよ!」

 その瑠香と引き留める凜。


「あそこが、危ない!」

 手すりから乗り出し、叫ぶ瑠香。

 それを引き留めようとする仲間たち。


『マズい! 間に、合わない!!』

 世界軸が焦ったように声を上げる。



 その時。



 耳をつんざくような大きな爆発音と共に、皇宮が巨大な火柱に飲み込まれた。



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