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105話 やるべきこと

 

「にゃふふふーん」

 尻尾を揺らしながらティアが下手くそな鼻歌を歌っている。


「にゃんにゃんにゃーん」

 音痴だ。


「ふんふんにゃーん」

「ねえ、ティア」

「んにゃ?」

 気持ちよさそうに歌っているので止め辛かったのだが、我慢の限界だ。

 一華はティアに声を掛けた。


 鼻歌を中止してティアがこちらを振り返る。


「その鼻歌、ちょっとやめてよ。集中できない」

 それらしい理由をつけて一華は言う。


 今一華たちが歩いているのは監獄の地下通路だ。

 いつ敵が飛び出してくるかわからない。


 なので、ちゃんとした理由になってるはずだ。


「え、大丈夫だよ。この監獄、ほとんど敵いないし」

 しかし、そこで反論の声を上げる凜。


「え、そ、そう……」

 一華は口ごもりながら顔を顰める。

 そしてじとっとした目で凜を睨む。


 何てことしてくれたのだ。

 せっかく鼻歌を止めようとしたのに。

 止められる理由がなくなってしまった。


「あと、ティア、歌下手っぴだね」

「にゃんですとぉ!?」

 さりげなく言う凜に目を剥くティア。

 一華はそれを見て溜め息をついた。


 その時、いくつかの足音が一華たちの耳に届く。

 そちらの方を見て、身構える一華たち。


 しかし、その構えをすぐに解く。

 そこにいたのは茉菜とフェイルだった。


「茉菜、フェイルさん。良かった、無事で」

 二人を見て一華は言う。


「私は無事とは言い難いですけどね……」

 フェイルは頭を押さえて言った。

 そこには包帯が巻かれている。


「大丈夫にゃん?」

「ええ、幸いにも」

 ティアの言葉に頷くフェイル。


「茉菜、久しぶり!」

「凜、久しぶりです」

 一華たちの横では凛と茉菜が再会を喜んでいた。


「ええと、こちらの方は……」

 凜を見て怪訝そうな顔をしているフェイル。

 一華は凜を紹介しようと口を開く。

 しかしそれより前に。


「私たちの仲間ですよ」

 フェイルの後ろからそう声が聞こえた。

 声の主はひょこりとフェイルたちの後ろから顔を覗かせる。


 その顔を見て一華は驚く。


「実辰!」

「久しぶり。一華、ティア」

 小さく手を振って実辰が言う。


「ひ、さ、し、ぶ、り!」

「うわぁ!?」

 実辰の姿を見たティアが実辰に向かって突進する。

 突っ込んできたティアに押し倒される実辰。


「茉菜、どうやって実辰と合流したの?」

 一華は茉菜に問う。


「私たちが襲われていたところを、碓氷さんが助けてくれたんです……」

 そこまで言い、茉菜はティアに押し潰されている実辰の方を見る。

 実辰は茉菜の方を見て片目を瞑っていた。


 それを見た茉菜はそれっきり口を噤んでしまう。


 一華はそれを見て首を傾げる。

 一体何があったのだろうか。


「えっと、これからどうする?」

「取り敢えず、外に出ようよ」

 人が増えて一気に騒がしくなった一行を見て、困ったように凜が言う。

 ティアの下敷きになっている実辰が言う。


 その言葉に全員が頷いた。





「やっとついたぁ……」

 凛が疲れたように溜め息を吐いて言った。


「にゃあん……」

「はぁ……」

「ふう……」

 ティア、茉菜、実辰も同様に疲れたような顔をして、地面にへたり込んでいる。


 一華たちは今監獄の入り口にいる。


 監獄の地下通路は複雑に入り組んでおり、とてつもなく迷い易かった。

 そのせいで散々通路を歩き回された一華たち。

 しかし、幸いと言うべきか、一度も敵には出会わなかった。


 久しぶりに見る空を仰いで一華は溜め息をつく。


 その時。


 ブツッと言う異音を耳にする一華。

 周りを見回すと、全員が怪訝そうに首を傾げている。


 皆にも今の音が聞こえたようだ。


 そして。


『──爆弾は四ヵ所に仕掛けた。それぞれバビロニアの東西南北にある塔に仕掛けてある!』

 そんな濁った声が町中に響き渡る。


 そして放送は始まった時と同様に唐突に途切れる。

 顔を見合わせる一華たち。


「フェイルさん、今のは……」

「今の声、聞き覚えがあります。デラジス高等弁務官の声です。しかし、爆弾とは……」

 一華の問いにフィエルが答える。

 その顔からは混乱がありありと見て取れた。


 そこでティアが立ち上がる。

 それに続く、実辰、凛、茉菜。

 一華も立ち上がる。


「フェイルさん。考えるのは後にしましょう」

「……それは、どういう──」

「やるべきことが、あるじゃないですか」

 一華はそう言い、視線を彼方に向ける。


 その先には東塔がそびえ立っている。


「そう、ですね。まだ、やるべきことがありました」

 フェイルはそう呟き立ち上がる。


「行きましょう。爆弾を止めに」


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