104話 脱出
「あいつら、どこ行ったんだ?」
レディオスと言う男を倒した隼人は、はぐれたリー達を探して通路を走っていた。
その時、隼人は目の前から走ってくる人影を目にする。
その人影の顔を見て、隼人は手を振った。
「おーい、リー! こっちだこっち!」
「おー、隼人か!」
手を振り、駆け寄って来るリー。
「さっき、すげー音したけど、大丈夫だったか?」
「ああ、いきなり襲ってきた魔術騎士団のヤツにぶっ飛ばされてなぁ」
「魔術騎士団? 大丈夫かよ?」
「ぶっ飛ばし返してやったわ。そっちは?」
肩を回し、笑って言うリー。
「ああ、こっちにも来たぜ、魔術騎士団」
「倒したん?」
「あったり前だろ!」
ニヤッと笑い隼人は言った。
その時、隼人は近付いてくる足音を耳にする。
身構える隼人。
しかし、リーは頭の後ろで手を組んでいた。
「大丈夫やで。よく見てみ?」
のんきにそう言うリー。
隼人は言われた通り目を凝らして足音の方を見る。
そしてにやりと笑う。
「よ、大丈夫だったか?」
「大丈夫じゃないわよ! 勝手に行動しないでよね!」
腰に手を当ててそう言うのは日和だった。
「悪い悪い、そう怒るなって」
怒る日和の肩を叩き、隼人は笑う。
「ほんとに反省してんの!?」
「まあまあ」
目を吊り上げる日和をリーが宥める。
そして日和の後ろに目を向けるリー。
「で、レイナさん、敵さんの方は?」
そこには少し眠そうにしているレイナがいる。
「……あらかた倒した」
「じゃ、そろそろ逃げましょ」
レイナの返事を聞き、頷いて言うリー。
その時だった。
ブツッと言う異音が隼人たちの耳に届く。
「ん?」
隼人は首を傾げる。
『──爆弾は四ヵ所に仕掛けた。それぞれバビロニアの東西南北にある塔に仕掛けてある!』
町中の放送機が一斉にそう告げた。
そして唐突にブツリと途切れる放送。
顔を見合わせる隼人たち。
「なんだったんだ?」
「ば、爆弾だって……」
日和が不安そうに顔を曇らせて言う。
「まーたまた、緊急事態かいな」
腕を組み、顔を顰めるリー。
「どないする?」
「んなもん、決まってんだろ!」
首を傾げるリーに、隼人は拳を打ち鳴らし笑う。
「爆弾なんて止めるしかねーだろが!」
「と、止めに行くつもり!?」
隼人の言葉に唖然として日和が叫ぶ。
「当たり前だろ! 爆弾が爆発したらとんでもないことになるぜ」
「で、でも、私たちがやらなくても……」
「日和、違うぜ」
反論しようとする日和に首を振る隼人。
「俺たちがやらなくて、誰がやるんだ?」
「そ、それは……」
口ごもる日和。
「なあ、考えたことねーか」
「──え?」
唐突に言う隼人に怪訝そうな顔をする日和。
「なんで俺たちがこんな力を持ってんのか。なんで人柱なんかになったのか」
「そりゃあ、考えたりするけど……」
「俺も考えた。でも俺、難しいことわかんねーからよ。全然わかんなかったんだ」
そこまで言い、隼人は自分の掌を見る。
その掌をぐっと握り締める隼人。
「でもよ、あるヤツの言葉で気付いたんだ」
「それって……?」
首を傾げる日和。
隼人はニヤッと笑う。
「瑠香だよ。あいつが言った『助ける』って言葉。俺はそれで目が覚めた気がしたんだ」
隼人はそう言い、日和の目を真っ直ぐ見つめる。
「強いヤツが弱いヤツを守る。わかりやすくていいじゃねーか」
その言葉を聞き、リーが噴き出す。
「ははッ、やっぱおもろいわ、キミたち!」
そして隼人の方を見るリー。
「ええで、ボク、そういうの好きや。ボクは付いて行くで」
「おい、そんな笑うなよ」
笑い続けるリーに隼人は口を曲げる。
「日和。お前はどうする?」
隼人は日和の方に目を向けた。
日和は無言で俯いていた。
「おい、日和──」
「あー、もうわかったわよ」
心配になり、隼人は声を掛けようとする。
それを遮って日和が言う。
「私も付いて行くわ。あんたたちだけじゃ大変なことになりそうだもの」
首を振りながら言う日和。
その言葉を聞き、隼人は笑みを浮かべる。
「よっしゃ、決まりだな! そんなら早く行こうぜ!」
「──待って」
しかし、そこで制止の声が一つ。
声を上げたのはレイナだった。
「なんだよ。止めんのか?」
「違う。爆弾を止めるのは私も賛成。でも……」
隼人の言葉に首を振るレイナ。
口を止めるレイナに首を傾げる隼人たち。
「でも、なんだよ?」
「……眠いの」
「は?」
気まずそうに言うレイナに、隼人たちはぽかんと口を開ける。
「何言ってんだよ。こんな時に……」
「ごめん、説明してる暇はない」
呆れて隼人が言うと、首を振るレイナ。
そして隼人たちを見回す。
「私は少し寝てから行く。君たちは先に行って」
「でも……」
レイナの言葉を聞き、日和が不安そうに言う。
「大丈夫。すぐに追いつくから」
それだけ言うとすぐに踵を返してしまうレイナ。
「あ、おい──」
隼人が止めようとする。
しかし、それより早くレイナの姿が掻き消える。
「……行っちゃった」
口を半開きにして日和が言う。
「どないする?」
「……ま、俺たちだけでやるしかねーだろ」
首を傾げるリーに隼人は言う。
「んじゃ、気を取り直して」
「ああ、まずここから脱出するぞ」
「そうね」
頷き合う三人。
そして歩き出そうとする。
その時。
「待ってください!」
『そうだ! 一旦止まろう!』
「うるせー! 俺は止まらないぜ!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
その声を聞き、隼人たちは目を丸くする。
「ねえ、あの声って……」
「あ、日和も? ボクも聞こえるで」
「俺も聞こえるぞ」
顔を見合わせる三人。
「お! こっちから人の気配がするぜ!」
「待ってくださいってば!」
『言うことを聞けよ!』
「やだね!」
騒がしい声はどんどんとこちらに向かってくる。
そして角の向こうから飛び出してきたのは。
「心!」
隼人はその少年の名を呼ぶ。
「あ?」
怪訝そうにこちらを見る心。
「お前ら、どうしてここに──」
「やっと追い付きました! 心、早く充たちと合流しましょう!」
その時、心の後ろから飛び出してくるスズ。
スズは心の腕を掴んで言った後、こちらに目を向ける。
その目がまん丸に見開かれた。
「み、みなさん、どうしてここに──」
「おい、どうした。早く戻るぞ」
しかし、その声は途中で遮られる。
角から顔を覗かせたのは珠輝だった。
珠輝は固まる心たちを見て眉をひそめた後、その視線を辿りこちらに目を向けた。
その目が驚きに彩られる。
「お前ら、どうしてここに……」
「そりゃこっちが訊きてーよ」
溜め息を吐いて隼人は言う。
『心の暴走も、たまには役に立つものだね……』
イチヤがポツリとそう呟いた。




