102話 放送
「はッ!」
アレンは魄でできた剣を振るう。
それを紙一重で躱すカローレ。
斬撃を避けたカローレはアレンに向けて掌を向ける。
その手から炎が噴き出す。
「あちちッ!?」
炎を回避したアレンだったが、その熱の余波に驚く。
(驚いたなぁ。僕相手にここまでやるなんて、相当強いぞ?)
アレンはカローレの攻撃を捌きながらそう考える。
カローレの掌底がアレンの腹に迫る。
それを、剣を持っていない左手で受け止めるアレン。
そして後ろに飛び、その衝撃を殺す。
「君、強いね。すごいよ」
「お褒めに預かり光栄だ。──そちらはまだ、全力ではないようだがな」
少し顔を顰めてカローレはそう答える。
「あはは、バレた? でも、君だって本気じゃないだろ?」
「……まあな」
アレンが笑って言うと、カローレは軽く頷く。
それを見て苦笑するアレン。
そして剣を構える。
「さて、お喋りはこれくらいにして」
「ああ、続きと行こうか」
頷き合い、身を屈める二人。
そのまま地を蹴ろうとして。
アレンはふとその動きを止める。
小さな異音を耳にしたからだ。
ブツッと言うその音は、微かながらも町中に響いた。
カローレも動きを止め、耳をそばだてている。
次の瞬間。
『──爆弾は四ヵ所に仕掛けた。それぞれバビロニアの東西南北にある塔に仕掛けてある!』
そんな声が放送機から流れ出る。
そしてブツッと言う音と共に放送は途切れた。
「──なんだ?」
アレンは首を傾げる。
「今のはデラジス高等弁務官の声……これは一体……」
カローレがそう呟く。
「へえ、今のが……」
カローレの言葉で、アレンは放送の声がデラジスだと知る。
そして思考を回転させる。
一体誰だ?
誰が、何のためにあれを放送した?
そして、ある人物に行き付く。
エマだ。
恐らく、エマはデラジスの下に辿り着いた。
そこで先程の言葉を聞いたのだろう。
しかし、エマはデラジスの下から動けない事情があるのだろう。
だから、あれを放送した。
エマは天才魔導師だ。
一瞬だけ町中の放送機を乗っ取ることくらい、朝飯前だろう。
そこまで考え、アレンは〝練器〟を解除する。
「……何の真似だ?」
それを見たカローレが訝し気に顔を顰める。
「状況が変わった。君との遊びはここまでだ。僕は先を急がせてもらう」
「待て、どこに行く!」
踵を返すアレンに詰問するカローレ。
「どこって……」
その問いを聞き、アレンは顔を上げた。
アレンの視線の先には四つの塔の一つである南塔があった。
ここから一番近いのはあの塔だ。
「君も聞いたろ? どうやらあそこに爆弾が仕掛けられているらしい。僕はそれを止めに行く」
それだけ言い、アレンは歩き出そうとする。
「……待て」
しかし、カローレの言葉に足を止める。
そして振り返る。
「なんだよ? 急がなくちゃいけないのに。遊びなら全部終わってから付き合って──」
「そうじゃない」
アレンの言葉を遮り、カローレは首を振る。
そして真っ直ぐにアレンの目を見る。
「私にも手伝わせてくれ」
その言葉に驚くアレン。
「いいのかい?」
「ああ、私の使命は民衆を守ることだ。爆弾を止めるなら手伝いたい。それに……」
「?」
言葉を切るカローレに首を傾げるアレン。
「お前はまだ不審者だ。そんな怪しい人物を野放しには出来ない」
その言葉を反芻するアレン。
そして、にやりと笑う。
「いいね、君。さすが魔術騎士団、バベルが好きそうだ」
その言葉を聞き訝し気に眉を顰めるカローレ。
「おい、今のは──?」
「話はあと! 急ぐよ!」
そう言い、アレンは走り出す。
慌ててそれを追うカローレ。
二人は南塔に向かって走り出した。




