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101話 爆弾発言

 

「はぁ、はぁ!」

 エマはマーリンと共に長い廊下を疾走していた。


 先程、金髪の男と遭遇し、戦闘になったエマたち。

 しかし、そこに現れたプラタが金髪の男の相手をしてくれている。


 アレンに続き、プラタまでも残してきてしまった。


(どうか、無事でいて……!)

 唇を噛み締めながらもエマは走る。


 この国に足りないのは、『希望』だ。

 『王の灯』が再び輝けば、民衆に希望が戻る。


 そう信じて、走るしかない。

 それが、今エマでできる、唯一のことだから。


「エマ!」

 その時、黙り込んでいたマーリンが叫ぶ。

 マーリンは魔術で周囲を探っていたようだ。


「王座の間はこの先だ! いるぞ!」

 叫ぶマーリン。


 その意味を、エマはすぐに理解した。


 今走っている長い廊下の突き当り。

 そこにある大きな扉が、玉座の間の入り口だ。


 そして、そこにいるのだ。


 デラジス高等弁務官。

 排除するべき、この国の腫瘍。


「行きましょう!」

「ああ!」

 エマの叫びにマーリンが頷く。


 近付く扉。

 二人は足を速める。


 そして。


 その勢いのまま、扉を蹴破った。


 轟音が響く。

 皇宮全体が揺れる。


「ひ、ひぃ!?」

 そして聞こえる情けない悲鳴。


「き、貴様ら、何者だ!? な、何故ここに!」

 そんな喚き声を上げている醜い男が一人。


 あれが、デラジス。

 エマは目を細める。


 一歩前に出るエマ。

 だが、それを押し止めるマーリン。


「くそッ、メシウスめ! 威勢のいいことを言っておいて!」

 地団太を踏み、誰かを罵るデラジス。


「くそ、くそッ! もういい! やってしまえ!」

 そう叫ぶデラジス。


 すると、玉座の間に繋がる扉が一斉に開き、大勢の兵士たちがなだれ込んでくる。


「なるほど、道理で皇宮内の警備が薄いと感じたわけだ。ここに集中させていたわけか。臆病者め」

 口を歪めてマーリンが言う。


「ぐ、ぐふふッ! 侵入者! 貴様らが何者かは知らんが、この量の兵士相手は無理だろう! 私はここで高みの見物とさせてもらうぞ!」

 階上からエマたちを見下ろし、デラジスは高笑いを上げる。

 その顔は余裕に満ちている。


 だが次の瞬間。


「“爆発(エクスプロージョン)”っ!」

 エマが叫ぶと同時に爆発が巻き起こり、兵士たちが吹き飛ぶ。

 それを見たデラジスは顔を真っ青にする。


「と、捕らえろッ!」

 そう命令するデラジス。


 しかし、兵士たちは警戒しているのか、遠巻きにエマたちを見ているだけで攻撃してこない。


「な、何をしている! さっさと捕らえんか!」

 喚き散らすデラジス。

 それをゆっくりと見上げるエマ。


「あなたは何もわかっていない」

 そして、エマは静かに言う。


「人の苦しみも、人の悲しみも、何もわかっていない」

 兵士たちを見て、エマは言った。

 その視線に、たじろぐ兵士たち。


「だから虐げられる。だから、苦しめることができる」

 デラジスに向けて指を突き付けるエマ。


「もうこれ以上この国の人々を苦しめないで! この国から、出て行きなさい!」

 その叫びが、玉座の間にこだまする。


 沈黙がその場を支配する。


 しばらくして、乾いた笑い声が聞こえた。

 笑っているのは、デラジスだった。


「ぐ、ぐふふ、ぐふふふふ!」

 どんどんと大きくなる笑い声。

 笑うデラジスを訝しげに見るエマたち。


「ぐふふ! こうなることも予想して、準備しておいてよかったわい!」

 そして手を掲げるデラジス。

 それを見たマーリンが魔術を発動させようとする。


「おっと! よいのか? 攻撃しても?」

 その言葉を聞き、マーリンは攻撃を中止する。


 デラジスの手に握られていたのは小さなスイッチだった。


「それは……」

「これは爆弾の起動スイッチだ!」

 にたにたと笑いながらデラジスは言う。


 それを聞いたエマは、顔が真っ青になる。


 爆弾を仕掛けられた。


 一体どこに?

 どれくらいの規模だろうか?


 ……爆発した時の被害は? 


 それを考え、唇を噛むエマ。


 マズい。

 主導権は完全に敵の手に渡った。


 どうにかして状況をひっくり返さなければ。

 そこまで考え、エマはある判断をする。


 正直言って、これは賭けだ。

 しかも、成功する確率の方が低い。


 だが。

 成功すれば、被害はゼロで済む。


 それに、賭けるしかない。


 エマはこっそりととある魔術を発動させる。

 それに気付かず、話し続けるデラジス。


「爆弾は四ヵ所に仕掛けた。それぞれバビロニアの東西南北にある塔に仕掛けてある!」

 それを聞き顔を顰めるエマ。


 バビロニアには、中心の皇宮から東西南北に走る大通りがある。

 その大通りの中間地点に、巨大な塔が立っている。

 『王の灯』に次ぐ、この国の観光名物だ。


 それが崩れるとなれば、被害は想像もできない。


「ぐふふ! 今すぐ止めに行きたいか? いいぞ? だが、その素振りを見せた瞬間にこのスイッチを押すがな!」

 スイッチを振りかざし、にやにやと笑うデラジス。


「まあ、貴様らが抵抗しなければ、これは押さないでやる」

 デラジスはエマたちを見て言う。

 それを聞き、エマは抵抗を諦める。


「おい、そいつらを縛れ」

 兵士にそう命令するデラジス。


 エマとマーリンは大人しく手を差し出す。

 その手に掛けられる縄。


 隣のマーリンを見ると、悔しそうな顔をしている。


(ごめんなさい、マーリン。少しだけ、耐えて……)

 エマは心の中でマーリンに謝る。


 やれることはすべてやった。


 あとは、賭けに勝つだけだ。


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