第1話 救世の誕生
ここから第1章が始まります
転生ものですが最初から転生するわけではありません。
西王暦624年 ウィクロード王国
王都の城下町の小さな病院で1人の女の子が誕生した。
「は~い、生まれましたよ元気な女の子です。」
生まれたばかりの赤子を手渡されたのは美しいブロンドのハーフエルフ女性であった。
「ふふ、可愛らしい子が生まれたねおめでとう。父親に似て双角と尻尾、私に似て耳がちょっと尖がっているわね。」
その横で女性の手を握っているのは角や尻尾が目立つ悪魔の男である。
「おお、俺と同じ色だな。この子の名前はミクミだ。この1か月ずっと考えていたがなんとかいい名前が浮かばなくて大変だったよ。」
この日、ミクミ・フォルシーが誕生したのである。ミクミは父親である悪魔と、人間とエルフのハーフである母親の間に生まれた人間・エルフ・悪魔のクォーターという特殊な血を受け継いだ。
父親であるフォルネルは悪魔なので見た目が悪いためよく人間から魔族の仲間だと誤認されがちで、蔑まれる存在だが祖国であるデルヴォロア魔国では高級料理店の料理長も任されたこともある一流のシェフで根はいい人である。
母親のアルヴィアはハーフエルフでエルリットイム樹国では問題ないが、人間側からすると人間とエルフのハーフなので世間一般では忌み嫌われているが美しくではっきりと喋る人なので城下町にフォルネルと共に小さな居酒屋を2人で経営してよく客の相談ごとを聞いては適切な答えを返すので人気なお店である。
この世界では平均寿命がとても高い。人間は最高でも150歳程度、貧富の差がなくなってきたことや作物の地道な品種改良によって沢山の作物が取れるようになったため。医療も治癒魔法が発達したこともあるが薬学による医療技術、新陳代謝をあげて体を若返らせる高等魔法も出来たおかげで150というところまで来ているがこれはまだ一部で通常は100歳である。
魔族は元々の誕生秘話としては遠い昔に悪魔と人間のハーフであると言われているが時間が立つにつれ独自の進化を遂げた別種族で髪は赤黒っぽい色が多く、肌は褐色で、最高でも90歳程度。こちらは高貴な貴族などはいいものを食べているので寿命が長いのだが、平民は徴収で残った作物を食べる程度で品種改良もされていないので格差が激しい。
悪魔は地獄からの来訪者で今では地上に国を作っている。見た目は人間とほぼ変わらないのだが悪魔の特徴でもある角や尻尾が生えている。見た目で言えば目つきが悪いのが多いがそれは仕方がないこと。海辺に近いところに魔都があるため漁業が盛んで新鮮な魚介類が取れるところなので平均寿命は200~250歳程度。
エルフは北の土地にある世界樹から生まれたとされる精霊の一種で、実体を持つ唯一の精霊。本来の精霊は霊体のように透けており、精霊魔法を扱えるものだけが見える。エルフは元々が精霊のため寿命の概念がなかったが実体を持ったことに平均で300~500歳まで生きられる長寿。人間とエルフのハーフであるハーフエルフはエルフの血が交っていることもあるので大体200~400歳程度。
世界樹から栄養が送られてできる作物や木の実、キノコ類などは精霊のご飯である世界中どこにでもあるマナを食べることであるが、世界樹から出るマナは空気中に存在するマナより高純度なためこちらをよく好んで食べている。ただ味はないのでエルフ達は高純度マナを含んだ作物で食事をしているので他のどの生命体よりも長く生きられる。
ちなみに父親であるフォルネルの年齢は50歳、母親であるアルヴィアは70歳であるが人間年齢的にはどちらも外見は20代前半ぐらいである。
そして、時は流れ……
西王暦629年
城下町にあるフォルシー居酒屋でお手伝いしている5歳の女の子がいた。
「おきゃくしゃま~、ビール2はいです。」
「おお~、ありがとうミクミちゃん偉いねお店手伝って。」
「はいっ!」
てくてくと歩き覚えたての言葉でお手伝いをするミクミはすぐに人気者になった。
「ミクミ、お手伝いありがとう。もう休んでていいわよ。」
「わかったおかあちゃま。」
ミクミは自宅となっている2階に上がり、自室の机で読み書きの勉強を始める。
それが終わると次は魔法についての知識を勉強し始める。
普通、人間ならば通常魔法という空気中どこにでも存在する魔法を扱うためのエネルギーであるマナを使用するもの。
ただミクミは3種の血を受け継いでいるので人間が扱う通常魔法、悪魔が主に使用する悪魔魔法、エルフ達が精霊を介して魔法を行使する精霊魔法の3つを扱うことができるのだ。
この世界には3種の魔法があり、魔族は人間と一緒で通常魔法と一部の悪魔魔法を扱える。力の順は基本、通常魔法<悪魔魔法<精霊魔法で精霊魔法は各属性(火・水・風・土・光・闇)の精霊に気に入られなかった場合はその属性を扱うことが出来ない。
精霊には下位・中位・上位・最上位の4つの位に分かれており、中位精霊までなら誰でも気に入られる可能性はあるのだが、上位精霊やさらにその上である最上位精霊は知能が高く契約時の魔力も高いので中々懐くことはないというか数が非常に少ない希少な存在である。
上位や最上位精霊は精霊自ら近づいてきて語りかけてこない限り契約は出来ない。エルリットイム樹国の女王でも最上位精霊は6属性中 2属性しかいなくそれ以外は上位か中級である。全属性を最上位精霊で契約するのは不可能とされていた。
各魔法には得意属性があり、通常魔法は火・水・風・土、悪魔魔法は闇、精霊魔法は光で得意属性の場合は威力が鍛錬を積めば最大火力を発揮できるとされている。基本種族ごとに扱える属性が異なっており通常魔法は光闇を扱えず、悪魔魔法は光、精霊魔法は闇の精霊に気に入られることがあれば使えるが基本できない。
だがこのミクミは全ての魔法を扱うことが可能なので史上初めて全属性を扱えるかもしれないと父フォルネルと母アルヴィアはそう願っていた。なので仕事の合間や休業日などの空いた時間に知識と魔法を交互に教え合いながら育てていたのだった。
この小説とは別にSFファンタジーの「夫婦で転生した世界を楽しく暮らしたい」
https://ncode.syosetu.com/n5761es/
というのを出しています。そちらが優先なので投稿頻度は少ないですがご了承ください。