3話 ロアン帝国
説明話なので、面等な人は読まなくてもOKですよ
バデールの村に疫病が蔓延する数ヶ月前。森から遠く離れたロアン帝国の王城の一室で、円卓を囲い10名程が議論を続けている。
「しかし何故!今、国家予算を削いで、魔族を討伐する必要があろうか!封印されているならそれで……」
「ラターベ大臣よ、では問うが、その封印はいつまで続くのだ?」
「ですから毎年、魔導師達により結界を強化してるではありませんか!?」
「あの豊かな森を得ずして、国家予算とは片腹痛いですな」
「なんですと!?失礼な!私が言っているのは、その費用に見合う危険を差しているのだぞ!」
「ラターベ大臣は臆病風に吹かれているようですな!さては銭勘定しすぎて、ロアン人の誇りを忘れたようですかな。ふはっはは!」
「ベデルト軍務大臣!!予算あっての国家!その財なしに軍を動かせば」
「よい!」
円卓の中央に座る豊かな髭を蓄えた男性が言うと、一同が沈黙する。男性は顎の髭を暫し摩ると、大きな声を発する。
「直ぐに兵を率いて、魔族討伐に当れ。魔法省の魔導師を総動員しろ!魔族を1匹も逃すなよ!」
髭を蓄えた男性は椅子から立ちあがり、羽織っていたビロード布を翻して奥の扉から出ていく。
帝国暦348年、ロアン帝国は25万の兵を投じて東の森にいる魔族を討伐する事になった。
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ロアン帝国、ロアン人が統治するその国は、350年程前に魔王バーシツトを封印して国家が成立されたとされる。魔王の力は強大で数万の兵が一瞬にして灰になったとされる。ガリーダ山脈の先、グランダール平原に城を構える魔族と人族と争いになり、侵攻してきた魔王をロアン人の“英雄デバール”が森に封印してから、建国されたという。
その戦いより以前、各種族の国は表立って魔族と争うような事は控えていた。魔族は種族全員が魔法を使えると共に固体の強さがあった上に、国としては成立しておらず、敢えて争うこともなかった。むしろ各種族と良好な関係を保っていたと言われる。
なぜ魔族と人族の争いが始まったのかは分からないが、結果、人族のいくつかの国が魔族相手に戦いを始めた。それは魔法に関する知識の利権だったとも、魔族の野蛮な行動だったとも言われるが、今となってはその真意は分からない。
確かな事はロアン帝国の唯一の教えを伝える“太陽教団”では、魔族が“悪”ということ。そして当時、ロアン人をはじめとした多くの人族の国は魔王バーシツトを封印した事を歓喜した。しかし世界は当時から変わらない。大陸の地には魔力を含み恐ろしい魑魅魍魎の魔物が今も歩いている。魔族が狩っていた分の魔物も増えて。そして、人族同士の争いも無くならない。
太陽教団は今日も教会で“教え”を説く。