2話 滅亡する村
勿論、ノリで書いてるので、誤字脱字あると思います。
ご指摘くださいませ
いつか魔法で成長か!?……という淡い期待の中、俺が15歳になろうというとき、村に疫病が蔓延した。
最初は幼馴染メリーアの家、そしてデゴルルの家。
数日の間にあっという村中に広まった。症状は身体がだるいという症状から始まり、それから身体中に内出血したような斑点が現れ、人によっては魔法が使えなくなるという恐ろしい病。
皆で治癒魔法をかけたり、効くであろうと薬草を煎じて飲ませたりしたが、思うように回復する様子はなかった。
俺も恐怖に慄き、日々を過ごした。衛生設備という面からは程遠い村で、俺も感染するのではないかと。悪いが俺には前世でもそういった知識がない。風邪を引いたら薬局で店員に聞いて、薬を買うぐらいのレベル。
ある人は“井戸の水かもしれない”と言いだし、村の井戸を使用禁止にしたり、ある人は狩った獣の肝臓を良く火を通すようにして食べさせたりと、皆でどうにかしようと努力した。
しかし、これといった治癒方法が見つからなかった。感染は気にしながらも、しばらく経つと、“すぐに死ぬ訳では無い”と村長の説得で、皆で助け合った。健康な者は狩りや畑を耕し、介護を続けた。
数ヶ月が経ち、感染していないのは俺を含めて魔法の鍛錬をしていた者が多かったので、何かしら魔力に関係する病ではないのか?と村中に囁かれるようになった。
そんなある日の夜、健康な村人全員は集められて村長の家に集まった。
「皆に聞いて欲しい……これは呪いだ」
村長はそう皆を見回して呟く。集まった村人は50人もいない。
「呪い!?どういう事だ、村長」
バケログテさんが大きな声で聞き返す。
「祖先バーシツト卿の教えは知ってるな?」
なぜか皆が俺を一瞬見てから一様に頷く。そして村長は俺を見ながら皆に聞こえるように話し始めた。
「これはワシと一部の人だけに伝わってきた話だ……」
俺も何がなんだか分からないが、静かに彼の話を聞く。
そして村長の話は絶望する内容だった。
我々の祖先バーシツト卿は、ロアン人との戦いの中、数名の部下と共に、この森に結界で閉じ込められた。その結界は何百年も経った今も日々、我々を閉じ込めているがそれも限りがある。いずれ結界は時間と共に消滅するだろう。だがもし長くに渡り結界が消えず、集落に魔力の関係する病が流行るとすれば、結界の外より呪術が行われた証。
我々を弱らせてから、残酷なロアン人の軍が我々を殺しにくるだろう。
この疫病はその前触れ……そう、祖先は予言として残したという。
「なぜ今になってそんな重要なことを言うもっと早く知らせるべきだっただろう!」
「だからってこの疫病がそうだとは限らないだろうが!」
「おい!なぜそう分かってるなら戦う準備をしなかったんだ!!」
「そうだ!病気だか呪いだが知らんが、知らせるべきだったはずだ!」
口々に集まった皆が、村長に溜まった気持ちを怒号として浴びせる。
「我々の祖先、魔王のバーシツト卿は何万の兵に囲まれたという伝えは知っておろう。言い伝えによれば、数十万の兵に追い立てられたとある。外の世界は分からんが、女子供を抱えている百人程度の村に何かできる訳がないだろう、じゃから今まで黙っておった……それにまだバーシツト卿は……」
村長は沈黙し、皆が顔を俯き俺を見る。
ん?子供の俺を心配してくれているのだろうか。
長い沈黙の後、そして、誰かが言った。
「じゃ!どうするんだ!どうするんだよ!村長!」
「バーシツト卿が残した……魔法を使う。結界が消滅したとき、使えるはずじゃ、こちらへ……」
村長が床板を上げると、その先に細い石の階段が見えた。大人一人が通れる幅の細い階段を皆が、興味を持って下がって行くと、“こんな場所あったのか?”という広い地下室に出た。床には幾何学模様の魔方陣が描いてある。
「1回しか発動できないようになっておると伝わっている……伝えによれば、グランダールという安全な場所に移動できるという事しか……分からない」
村長は申し訳ないように言う。つまりこれは……転移させる魔方陣だという。
「村長!何を言ってるのだ!呪いかけられて、残忍なロアン人が殺しにくるという状況で、どこか分からない場所へ転移魔法で逃げろというのか!」
「それに、この……魔方陣、全員は乗れないだろう!」
バケログテさんが村長の襟首を捕まえて怒鳴る。
「そうじゃ……全員は行けない」
村長は力無く言う。
その夜は集まった者で話し合った。
村人が治癒魔法で治らない“異常な病気”に感染しているのは事実だし、もしロアン人が攻めてくるなら、どうにかして逃げなければならないという現実。皆それぞれ思う気持ちがあるのだろうが、最終的には村長の判断に従う事になった。
翌日、健康な者は、地下室の転移魔方陣へ広い通路を造り、村人からギリギリ魔方陣に乗れる42名を選んだ。何かあった時のために、選ばれた者は極力、魔方陣の上で寝泊りし、簡易宿舎のような状態になった。俺も土魔法で通路を広げたり、残忍なロアン人が来たとき備え、森に罠を仕掛けたりと翌日から動いた。
行き先は判らないが、安全な場所へ転移して逃げられるのは42人なのだ。また魔方陣は誰かが残って魔力を込めて発動しなければならないという事も明らかにされる。魔方陣の必要な魔力の量も分からないので、村で魔力が多い12名が残ることになった。魔法を教えてくれたベデンさんや数名がその要員になった。
そして俺も残る一人だ。
呪いとロアン人の襲来、選ばれて転移できる人と残る人、この事実が分かったとき、村は混沌として“俺達も連れて行ってくれ”と家族を抱いて懇願する者や森に逃げる者まで出た。それを横目に俺達魔力を込める役の12名は残された文献を見て魔力の込め方と転移魔法について可能な限り学んでいく。
村長が皆に事実を伝えた5日後の朝、森で見回りしていた村人が慌てるように、村に帰ってきて叫ぶ。
_____西の結界が消えた!ロアン人の兵が来た___と。
魔力を込める役割の俺達は急いで、地下の魔方陣へ向う。
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「父さん……俺は上手く逃げて会いにいくからさ」
俺は魔方陣の上にいる父と母に声をかける。
「本当に……すまない、バデール……」
「ごめんね……本当にゴメンね……まだ子供なのに……バデール」
父は目に涙を溜める。母は後ろを向いて顔に両手を当てて身体を揺らして嗚咽している。
「大丈夫だよ!俺は魔法が上手いし狩りも上手い!上手く逃げて、会いにいくよ!あ、グランダールって場所も分からないけど、きっと見つけ出せるさ!」
俺は父を母に声を張り上げて言う。
幼馴染のメリーアとデゴルル、それとベデースも両親に抱きついてこちらの心配そうに魔方陣の中から俺を見ている。
「無事に逃げてね!私待ってるから!」
「お前逃げ足は速いからな!いつものように逃げろよ!」
「残酷なロアン人なんか魔法をバンバン打ち込めよ!」
「ああ、大丈夫だって」
そう、俺は返事をする。
「バデール!始めるぞ!」
ベデンさんの掛け声で俺達は魔方陣の端で手をついて、魔力を込め始める。正直、魔力を込める俺達も、これが成功するのかも分からない。だが信じるしかない……と。夢中で手に魔力を込める。
次第に魔方陣が光を帯びて1刻もしない間に、冷たい風が魔方陣から吹き、木の割れるような音と共に、魔方陣と新天地に向う42名は消えた。